”どこまでも上を目指せ”『スカイスクレイパー』


『スカイスクレイパー』本予告映像

 ロック様映画!

 高さ1000mを超える地上最大のビル、「ザ・パール」が完成した。元FBIだったが、事故により片脚を失ったウィルは、経営するセキュリティ会社の業務の一環として、家族とともにそのビルに住むことに。入念なチェックを終えて安全宣言を出したウィル。だが、何者かの陰謀が忍び寄り……。

 相変わらず売れっ子だなあ、というドウェイン・ジョンソンが、今度は高いところに登るというお話。これも中国資本で舞台は香港。元FBIだったが、爆弾によって片足を失ったロック様、今はセキュリティチェックの会社を経営中。FBI時代の仲間の誘いで、超高層ハイテクビルのチェックという大きな仕事を任され、家族を連れて香港に滞在中。
 かつて爆弾に吹っ飛ばされた時の担当医が今の妻である、という、どんだけモテるんだって設定は今作でも健在。妻役はネーヴ・キャンベルさん。おお……『スクリーム4』以来じゃないか? 医者なんだけど元軍医ということもあって喧嘩も強い、というキャラがいいですね。この人は頭も切れるし生き物として強い感があって、中年になって余計にタフそうになっているな。

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 もともと強いロック様がちょうどいいハンデぐらいの感じで義足をつけているが、もうすっかり馴染んでて、別に歯がゆさを感じているような描写はなし。元マッチョのアイデンティティの揺らぎなんて微塵もなく、単にテクニカルなハンディキャップでしかない印象。実は裏切っている元同僚など、ちょいちょい過去のトラウマに絡みそうなところもあるんだが、あまり掘り下げない。

 正直、敵もあまり強そうじゃないので、やっぱり最大の難関は高いビルということになる。『ダイ・ハード』と言うよりも、雪山なんかの災害もの、ロック様だと『カリフォルニア・ダウン』的な定番芸という感じね。
 今作は普通のスクリーンで観たのだが、とにかく高いところが恐ろしい! 問題のビルに飛び移るために隣のクレーンをよじ登る。火事になってる中層階より上に行かなければならないために、たまたまそこより高いクレーンがあって良かった……という超御都合主義。しかし高さは本物で、ケツの穴が縮み上がるぜ! 誤解を受けて香港の警察に追われてるせいで、背後から追跡もくるし、大慌てでジャンプしなければならない。
 その後も義足使ってビルの壁面に張り付いたり、たっぷり高さは堪能できます。中に入ったら入ったでバカみたいな吹き抜けがあってまた高い!

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 クライマックスは最上階のペントハウスで、悪者と大決戦。冒頭にカッコよさげな映像ユニットを見せてたが、それを鏡がわりにして『燃えよドラゴン』のパロディをやるような映像。これは何でも映せる感があって、イマイチ面白くなかったな……。
 香港が舞台で、アジア系のど金持ちが建てたビルということで、これもまた『クレイジー・リッチ・アジアンズ』的な話なんだが、これだけ高いところで苦労したにも関わらず「また建てるよ」で締めるラストは、まあ金持ちならさもありなんと思いつつも、その懲りなさには感覚的に違和感も覚えましたね。ここは「早く地面に降りたい」「もう高いところはこりごりよ」的な台詞でワッハッハと締めるべきかと思ったが……。

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『アタック・オブ・ザ・キラートマト』BD

 トマトが大暴れ! 伝説のカルト映画がついにBD化!


『リターン・オブ・ザ・キラートマト』BD

 まさかの10年後の続編は、ジョージ・クルーニー黒歴史! 多幸感溢れるラストは必見!


“バリアーに乗れ”『ザ・プレデター』


映画『ザ・プレデター』予告 究極のプレデター降臨編

 プレデターシリーズ最新作!

 ローリー少年が起動させた父親からの贈り物……それはプレデターの通信装置だった? 傭兵である父のクインは、戦地でプレデターと遭遇。ヘルメットや装備を手に入れていたのだ。だが、通信装置の起動により、新たなプレデターが地球に飛来する……。

 これもわざわざ次世代レーザーIMAXで見てしまった案件。かの『エイリアン・コヴェナント』でさえIMAXではやらなかったのに、格落ちと思っていたこれはIMAXになるのは、単に番組編成による巡り合わせか。

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 プレデターの操縦する宇宙船が大気圏に突入してきて、居合わせた特殊部隊と地上で一戦交える下りから幕開け。ここで出てくるのは普通のプレデター。おなじみの光学迷彩で透明化……してない! 透明になっているシーンでも丸見えになっている! これは観客だけにこう見えているのか、それとも特殊部隊もこういう風に見えてるのか、後者なら結構きついものがあるな……。後半のバリヤーの上に乗っちゃったりするあたりはむしろ笑えるので、まあこういうテイストなのだろう。

 世界設定は、過去のプレデター襲来事件を踏まえて、ある程度研究が進んでいる状態。捕まえたプレデターで実験する一方で、実際に遭遇した兵士は病気扱いにして隔離しようとしている。主人公のボイド・ホルブルックさんもそんな一人。冒頭で仲間を失って、手に入れたプレデターのヘルメットを元妻の私書箱に送って隠そうとしたが、金がなくて解約されてたので家に届けられ、息子の手に渡ってしまう。
 ADHDっぽいが天才的頭脳を持つ息子役は、『ルーム』『ワンダー』のジェイコブ・トレンブレイ君。さすがは天才子役だ、といいたいところだが、監督のシェーン・ブラックは子役の演技指導なんてまったく興味がなかったようで、後半は別に普通の子供と変わらんがな、という感じになっている。

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 それよりも描きたかったのは、主人公を始めとするPTSDや精神病と診断されてお払い箱になる寸前の兵士たちの連帯と再起なのだな。かつてトム・ベレンジャー主演の『野獣教師』という映画が90年代にあって、教師になった主人公のために退役軍人仲間が集結し、学校をマフィアから守って戦うという話だった。その中にメンタルを病んでる兵士も混じってたがそれに似てるな……。
 いい歳したオッさんが部活ノリで集まってるのだが、映画自体は80年代からタイムスリップしてきたような話なのに、麻酔で寝てたオリヴィア・マンが目覚めるシーンでまったくセクハラしないところが現代映画だな。『五福星』を思い出すシーンでもあるのだが。

 パワーアップした新プレデターは、サイズが大型化しているあたりのインフレ感があまり面白さに結びついていないかな、という気がする。やっぱりエイリアンと同じくプレデターというクリーチャー自体の頭打ち感がある中で、大きくなったり硬くなったりしてもそれで強い、価値があるというわけじゃないんだ、ということを言っていきたいな……何の話をしてるんだ。

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 公開時の感想。
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 公開時の感想。
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”オレを食ってみろ!”『MEG ザ・モンスター』


『MEG ザ・モンスター』本編映像

 ジェイソン・ステイサム主演作!

 マリアナ海溝のさらに下、高い水温を保つ未知の領域が発見される。しかし、侵入した探査船が何者かに襲われ、身動きが取れなくなる事態が起きる。探査船に乗った元妻を救うために呼び出されたのは深海救助活動のプロ、テイラー。だが、彼の脳裏をかつての苦い記憶が過ぎる……。

 わざわざIMAX3Dでサメ映画なんか見ちゃった、というぐらいの、何だか高い金払ってしまったなあ感があったのだが、さすがは中華資本、あからさまなB級企画にも関わらずめちゃくちゃ金がかかっている。舞台は中国沖だし、ヒロインはリーの方のビンビンさん。クライマックスも中国の海水浴場で、ほぼ中華映画。

 割と理屈っぽく、古代生物の生存を語る序盤から、メガロドン登場の中盤、復活とどんでん返しと最後の決戦まで、割とそつなく、わかりやすすぎるぐらいにわかりやすい三幕構成になっている。

 過去の因縁を背負ってブツブツ言うもののあっさり助けに来てくれるステイサム、ツンデレリー・ビンビン、反目するも非を認めてすぐ謝る脇役など、キャラもわかりやすい上に、基本的に誰も憎めない。一応、まったく金持ちに見えない大金持ちレイン・ウィルソンが黒幕的な存在なのだが、こちらも対して悪人ではないし、海に飛び込むステイサムに対して思わず「カッコいい」と呟いてしまう観客の気持ちを代弁するくだりがあるので、むしろ共感させられてしまうというか。

 そもそもG指定になるぐらいなので『ピラニア』みたいな殺戮シーンがないのも分かりきっているし、サイズ的に普通のサメより人間を食べるシーンが面白くなるか、というとそれも微妙なのだよな。

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 しかしつまらないかと言うとそうではなく、『ナショナル・トレジャー』という炭酸の抜けた『ダヴィンチ・コード』みたいな映画を撮ったジョン・タートルトーブの、分かりやすく当たり障りなくショーン・ビーンさえ殺さずに誰も嫌な気分にならないようにまとめ切る力は最大限に発揮されていて、見ている間はまあまあ楽しい。
 実際に水泳選手でもあったというステイサムの飛び込む姿は美しく、水中でメガロドンとタイマンという設定にもそれなりの説得力を与え……与え……与えてるかは個人の判断に任せたい。この人のえらぶって見えない個性は、流石にスターだな、という気がしたものであるが……。

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 公開時の感想。
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”テニスの話をしよう”『ボルグ/マッケンロー』


【公式】 『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』 8.31公開/本予告

 今年2本目のテニス映画!

 1980年ウィンブルドン。20歳から実に4連覇を達成した若き王者ビヨン・ボルグは、絶大なプレッシャーの中で5連覇を狙っていた。だが、アメリカから来た天才プレーヤー、ジョン・マッケンローがそれを阻まんと立ちはだかる。対照的な立ち居振る舞いで氷と炎と称される二人のスター、世紀の激突が始まる……。

 『バトル・オブ・セクシーズ』に続いての2本目。まあ『跡部vs手塚』もOVAの特別上映やってたけどな。

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 ウィンブルドン五連覇を狙う北欧の伝説的プレーヤー、ビヨン・ボルグと、台頭するアメリカの悪童ジョン・マッケンローの宿命の対決を描いた映画。割合は7割ボルグ3割マッケンローぐらいのバランス。
 この二人が試合した、ぐらいのことは知っていて、最終的にはマッケンローがランキング1位になったこともわかっていたのだが、今作の舞台となるウィンブルドンでどっちが勝ったのかは知らずに見た。
 わけがわからないぐらいの人気で、うかつに街も歩けないボルグさん。毎日プレッシャーに悩まされていて、コーチのステラン・スカルスガルドにも「五連覇しなきゃ忘れられる!ゴミだ!」と言うのだが、たぶんこの調子だと、二連覇目以降、毎年ずーっと言ってるんだろうね……。しかし今回、特にプレッシャーがきついのは、連覇を阻まんとする相手の存在もある。氷の皇帝ボルグに迫る、歯に絹着せぬ言動と激しいプレースタイルで知られる、炎の男、ジョン・マッケンロー……。

 決勝で当たるだろう、と予想しつつもウィンブルドンは長丁場。一回戦から苦戦を強いられながら、ボルグは己とも戦い続ける。毎晩、全ラケットのガットの張りを踏んで確かめ、同じテニス選手の婚約者にカバンを寸分たがわず詰めてもらい、同じ車で会場に通い、シートが変わっているとイライラ……。ここまで来ると、もはやメンタルが強いのか弱いのかよくわからなくなってくる。

 テレビに出ているマッケンローは悪口ばかり話題にされ、テニス自体のことが一向に話題にされないとこちらもイライラ。「テニスの話をしろ!」本人はボルグを倒す気満々だが、あまりに雑音が大きい。試合でも初戦からずーっと審判や観客に吠えまくり。
 しかし、その映像を見るボルグ。恋人の「マッケンローは集中できてない」との評に「……いや、違う……」と否定。天才は天才を知ると言うが、逆に驚異的な集中力を嗅ぎとる。
 一方のマッケンローも、共通の知人を通じてボルグが「冷静な男と言われてるが氷山の中身は活火山」と評されるのを聞いて、なんだかシンパシーが止まらなくなる。

 炎と氷、と対照的なキャラクターとして認知された二人だが、実は多分に似た要素があり、凄まじい集中力と勝負への執念はもとより、内に秘めた怒りのコントロールなどメンタル面でもどっちも「炎」なんじゃね?という熱さを持っている。さらにトップ選手としてのプレッシャーや、先行し続けたイメージと自分自身のギャップにも悩まされているところも共通……。
 テニスに限らず、全てのスポーツにおけるトップアスリートが抱える普遍的な問題だろうが、お互い段々と共感しかなくなってくる。

 準々決勝で、マッケンローはダブルスのパートナーでもあったピーター・フレミングと対戦。同じ米国人で友人でもあるのだが……マッケンローの方は全然眼中になし! 最初からボルグしか見てないのは誰の目にも明らかで、フレミングも自分との対戦を忘れるな、とアピールしてきたのだが……相手にもならねえ! 試合前に愛用の踵のサポーターが見つからず、マッケンローが隠したと疑うフレミング、試合後にバッグから出てきたのを見て、マッケンローもさすがに呆れ顔。「そんなこすい真似するかよ、お前ごとき最初から敵じゃねえんだから」……とまあはっきりは言わないけど、露骨に態度で示しすぎ。「おまえはクソだ! 絶対にボルグみたいな偉大な選手にはなれない!」と捨て台詞を吐いて去るフレミング。彼がいなくなってから、一人で謝るマッケンロー……なんなんだ、この「素直になれなくて」劇場……。

 一方、ボルグさんは初戦からヨレヨレしてて、コーチとも揉め、地力が違いすぎるので勝ってはいるものの、いまいち調子が上がらない。若い頃はそれこそ怒りをコントロールできない少年だったが、そのポテンシャルをコーチに見出され、あまりに若いまま勝ち続けてきた。負けられないと言うプレッシャーから一度も解放されることがないまま……。

 下馬評は覆されることなく、1980年決勝はまさに頂上決戦に。やはり調子の上がらないボルグに襲いかかる悪童! しかし動かざること氷山の如し、1セット目こそ失ったものの、皇帝の鉄壁の防壁が機能し始め、2、3セットを取り返す。決勝に来てようやく本領発揮だが、このトーナメントの長丁場の最後の最後にこの底力を残しているのが、最強の絶対条件でもあるのだな……。
 4セット目も攻めが空回りするマッケンロー、ここで終幕かと思いきや、コートチェンジ時にボルグが声をかける。「素晴らしい試合だ。君のテニスをしろ」と。この日のマッケンローは理不尽な判定や野次も相手にせず、ひたすら攻め続けていて、いつもの悪口ぶりは影も形もなし。あるのはテニスをすること、それのみ。かつて会見でも「テニスの話をしろ」と言い続けてきたわけだが、このウィンブルドンで初めてそのテニスの話をしてくれたのは、他ならぬボルグだったのだ。「テニスって楽しいじゃん」。
 吹っ切れたようにさらに凄まじい集中力で、ボルグの猛攻をしのぎ続けるマッケンロー。タイブレークまで行き、7度のチャンピオンシップポイントを跳ね返し、逆転で取ったこの第4セットは今も語り草になる。
 そしてファイナルセットも死闘は続き、観客の誰かはこうつぶやいたかもしれない。「この試合、いつまでも見ていたいな」。
2ゲーム差をつけなければ勝てない地獄のルールで、8ー6で制したのはボルグ。見事にウィンブルドン五連覇を成し遂げる。

 試合が進めば進むほど、余計なものは脱ぎ捨てられ、純化されていき、最終的には二人の強者さえも一つになったかのような錯覚さえ生まれる。余計な言葉も遺恨もなく、もう清々しさしか残らない。
 またその後の空港のシーンが素晴らしくてな。ボルグを見て一秒もためらわずに駆け寄ってくるマッケンローの素直な表情は、シャイア・ラブーフのベスト・アクトじゃないかね。舌禍でスピやんに見放されたラブーフがこのキャラクターを演じるというのが、またシンクロ感を生んだのか。

 記録だけ見れば、マッケンローがウィンブルドンでボルグを倒して世界ランキング1位を取ったのは翌年で、歴史的にはそちらが重要なのかもしれないが、この年にすでにボルグは肩の荷を降ろす準備を始めていたのだな、ということもわかる。全ては自分次第なのだから。

 まあ近年稀に見るさわやかな後味で、感動しましたね。他に何もないけど、澄み切った美味い水を飲んだような清々しさ。いい映画じゃった。

ボルグとマッケンロー テニスで世界を動かした男たち (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

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