”スベテ滅ブガイイ”『貞子vs伽椰子』
あの対決が実現!
ダビングのために手に入れた中古ビデオデッキに入っていた、ボロボロのビデオテープ。それこそが名高い「呪いのビデオ」だった……。再生し、そこに巣食う怨霊「貞子」に呪われた親友・夏美を救うため、友里は都市伝説に詳しい大学教授・森繁に助けを求める。一方、女子高生の鈴花は、踏み入った者は必ず死ぬと言われる「呪いの家」に、四人の子供が入るのを目撃し……。
舞台は現代。かの「呪いのビデオ」も「呪いの家」も、伝説の彼方にその名を残すのみ。しかし山本美月と佐津川愛美の二人が、うっかり中古デッキに入っていた呪いのビデオを見てしまい、その呪いにかかってしまう。タイムリミットはあと二日……えっ、二日? 短い! 色々とルールが簡略化されていて、かつては一週間ぐらいかかるはずだった呪いもえらく短縮されている。死の方法もいちいち貞子が現れて心臓を止めるのではなく、コントロールして自殺を誘発させるようなバリエーションに。割合、もったいをつけてなかなか見せないのだが、オリジナルと呪いのビデオの映像もまったく違い、島や井戸は出てこない。
映画の尺が短いから、簡略化した……と言ってしまえばそれまでだが、それよりもむしろ、第一作公開から十数年、キャラクターが立って先走って認知され、もはや舞台設定を超えた存在になったことを示唆しているように思える。作中世界でも最初はオリジナル『リング』の形で存在していたとしても、拡散していく一方で細部は廃れ、貞子本体も冒頭で語られる「都市伝説」として新たな形になって定着していった……ということではないかな。
一方の「呪いの家」も、「入ったら呪われて必ず死ぬ」という骨子は同じなのだが、オリジナル『呪怨』では、一旦家の外に出てから、帰宅したり学校に行ったり……移動してからその先で惨殺されるパターンだったのが、入ったらすぐ襲われるという猛獣の檻のようなことになっている。単に凶暴性が増しているような……。呪いの家の間取りも随分変わってボロ屋になっていて、これはパラレルな設定か。
そうしたルールの簡略化、都市伝説化とともに、貞子、伽椰子の双方とも、もはや個々の怨念や生々しいパーソナリティを感じさせなくなり、単に「事象」になっている。設定の気味の悪さ、オリジナリティも薄れ、本当にアイコンとしてのキャラだけが残った感じですね。
そういう意味では得体の知れないものを見ているような「怖さ」はもはやまったくないのだけれど、音やカメラワークでハラハラドキドキさせる演出は冴えていて、出るかな出るかな出た〜!と驚くことは十分にできる。殺害シーンも血こそ大したことはないが適度に無惨で上手いですね。
貞子側の呪いから始まり、並行して伽椰子側の呪いも描いておいて、さあこれがどうつながるのか……? というところが興味になるのだが、貞子を除霊しようとする霊媒師がまず登場し、敢え無く惨敗! まだ全然二日のタイムリミットが来てないのに介入しようとした人たちがぶち殺されるという、もはやルールもへったくれもない状況が見せられる。
そこに「保険」としてやってきたのが経蔵と珠緒の二人組。ここまで大仰に怖がっていた山本美月と佐津川愛美の二人をばっさりこき下ろし、手際よく次なる除霊の手はずを進めていく。すなわち、「化け物には化け物をぶつけんだよ……!」
この怪異現象に対する取り扱いを、急激にレベルチェンジすることで笑いを取る手法が、どうやらおなじみなのかな。片手で早九字を切る安藤政信のキャラが近年になくスマートで、格好良い。
『呪怨』側、ここまで子供が四人、景気よくぶち殺されている。オリジナルの『呪怨』シリーズは、いわゆる殺害シーンは明確に見せないことも多かったのだが、今回は首折りが多い。俊雄くんが飛びついて首を折る、まさに首折りの達人のようなことになっていて、即物的に繰り返すからなんともワンパターンに感じられてしまう。さらに玉城ティナの両親も惨殺し、迎撃準備は整った……というところ。
さて、ここまで、力技混じりで少々端折った感はあるものの、見事に両者の激突のお膳立てはできて、呪いの家で呪いのビデオを再生してぶつけ合うというステージが成立。あとはこの世紀の激突を見届けるだけだ!
ここまでのアングル作りが面白かったので、実際の激突も大いに期待したのだが、そこはビッグネーム同士、まあ猪木と馬場が両者リングアウトするような『キングコング対ゴジラ』的な玉虫色的に両者の顔を立てあった決着もまあやむなし、と想像していた。
実際のところは、リングアウトならぬ両者ノックダウンで、まあ多少は満足感もあったかな、という感じでしたね。
ただ、試合中のムーブは正直面白くなく、つかみ合いも髪の毛のアクションもあったものの、16文キックを受けて卍固めを返したような愛想のない定番に留まってしまったかな……。俊雄くんの首折りもそうだったが、この監督、あまりアクションは上手くないような気がする。もっと空間を生かして欲しかったし、両者が階段を転げ落ちるような激しいものも「人外」を意識させるためには逆に入れて欲しかったな。さらに、今までの技を発展させた新フェイバリットも出したかったね。
『貞子3D』、『呪怨 終わりの始まり』と、もはや賞味期限が完全に切れたようなしょっぱい興行してた両者を揃い踏みさせ、曲がりなりにもまともな試合を成立させた時点で拍手を送りたいし、始まるまでは大いに楽しませてもらったが、もう一歩突き抜けたものにはならなかったかな、という印象。まあこれ以上は続編は作らなくていいかな……。
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監督による解説が収録した電子書籍の記事はこちら! 昨年のカナザワ映画祭の対談も読めます。
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kindle館の殺人 綾辻行人編
高校生ぐらいの頃はいわゆる新本格ものを読んでまして、二十代半ばが一番よく読んでたかな……。だんだんとホラー小説に移行していきましたが。
新本格というと最初に手を出したのが、やっぱり『十角館の殺人』の綾辻行人。自分で買ったり、妹や友達の本を借りたり……。仲間内じゃまあ好き嫌いはあまり分かれずにみんな読んでる感じでしたね。
ちょっと読まないでいるうちに、館シリーズは新装版が出ていたりして驚き。
- 作者: 綾辻行人
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時計館の殺人〈新装改訂版〉(上) 「館」シリーズ (講談社文庫)
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時計館の殺人〈新装改訂版〉(下) 「館」シリーズ (講談社文庫)
- 作者: 綾辻行人
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近年はこの『Another』で再ブレイクした感がありますね。『殺人鬼』その他のホラー小説も同じくkindle化されています。
- 作者: 綾辻行人
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kindle化されていない本
個人的に好きな『囁き』シリーズ、『殺人方程式』シリーズ、『どんどん橋、落ちた』は今のところ電子版なし。他に対談集『セッション』や、エッセイ集『アヤツジ・ユキト』シリーズもありません。エッセイなんかはkindleでさらっと読めると助かるんですがね……。
- 作者: 綾辻行人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/11/14
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- 作者: 綾辻行人
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- 作者: 綾辻行人
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”お前の罪を償え”『シークレット・アイズ』
ジュリア・ロバーツとニコール・キッドマン共演/映画『シークレット・アイズ』予告編
キウェテル・イジョフォー主演作。
今から13年前、9.11直後の2002年……FBI捜査官のレイは検察局に派遣され、検察局捜査官のジェスと組んでモスクの監視を行っていた。だが、モスクの駐車場から死体が発見され、それがジェスの娘だということが明らかになる。捜査を強硬に主張するレイとジェスだが、テロ捜査の方を重く見た検事は、事件を握り潰そうとする。そして現在、すでに引退していたレイが、再び検察局に戻ってくるのだが……。
アルゼンチン映画『瞳の奥の秘密』のリメイク。アメリカ野郎どもときたら、吹き替え版作る代わりにリメイクしてんじゃねえか、と思うぐらいで、今作も舞台を9.11直後のアメリカに翻案してのリメイク。
13年前の殺人事件を中心に、事件を追い続ける元FBI捜査官をキウェテル・イジョフォー、被害者の母親である同じく元捜査官をジュリア・ロバーツ、検事をニコール・キッドマンが演じる。
13年分は老けメイクで処理……なんだが、イジョフォーさん実年齢39歳は、過去がやや若作り、現在がやや老けメイク。ジュリア・ロバーツ実年齢48歳は過去がかなり若作り、現在はスッピンで実年齢どおり。ニコール・キッドマン実年齢48歳は過去が超若作り、現在が普段してる若作りぐらいかな……。各キャラクターの設定年齢が定かではないので何とも言えないが、ジュリア・ロバーツが貫禄あってパイセン感を出しているので、ロバーツ>イジョフォー>キッドマンぐらいの年齢に見える。
そんな感じで統一感がないので、結果的にニコール・キッドマンが突出して若作りしてるみたいに見えてしまい、割りを食っている……。13年前の設定年齢はいくつなんだ。30ちょうどぐらいか? イジョフォーさんの暴挙でブラウスがはだけ、容疑者にブラジャーを覗かれるという憂き目に合うのだが、いかにも苦しいな……。
そもそもイジョフォーさんとの現実には9歳差恋愛が、設定と乖離していてこれも結構な無理があるぞ……。しかもこの恋愛感情、大筋とはあまり関係なかったりする。匂わせる程度に留めておいても良かったんではないか。
対テロ捜査班のイジョフォー&ジュリア・ロバーツが、監視対象のモスクで見つかった死体を一応調べに行ったところ、実はジュリア・ロバーツ捜査官の娘だった、というところが衝撃の幕開け。場所的には管轄だけど、業務的には管轄外だから自分たちでは捜査させてもらえない。
独自に調べていたところ、被害者をジト目で見ている男の写った写真を発見。しかもそれは、自分たち捜査班のピクニックのもの。これは誰か知っているだろうと思って聞き回るが、全員が知らないとスッとぼける……。実はこの男はモスク内部の情報屋で、9.11後の厳戒態勢の中では欠かせない(と当時は思われた)情報の持ち主。担当の捜査官はかばい、他は見て見ぬ振り、検事のアルフレッド・モリーナさんも当然起訴はしない……。
時系列が現在と前後するので、この過去の話もなかなか進まないが、いろいろ奮闘したが結局徒労に終わり、取り逃がしてしまったらしい、ということだけはわかる。現在パートは、13年間、容疑者の足取りを追い続けていたイジョフォーさんが、ついに整形で顔を変えたその男を見つけたところから始まるのだ……。
あらすじを読んだ限りでは、オリジナルと全然違う話なんじゃないか。9.11じゃあもろにアメリカの話だし、オリジナルで話題になったスタジアムの長回しは野球場の平凡なシーンになってるしな。
13年後の現在パートは、老け込んだジュリア・ロバーツ、同じく老けたが目だけギラギラしてるイジョフォーさん、歳は取ったがキャリアは順調なキッドマンという三人が再び顔を合わせ、再捜査に向けて動くシーンから。
ぼんやりとだが、ここからすでに三人の内心には実はギャップがあることが感じ取れる。それは13年前の幾つかのすれ違いが原因で、容疑者を逮捕できなかったことだけの問題ではない、ということが時系列を行き来するたびに少しずつ浮かび上がってくる。
ミステリ的な構造にはなっているが、進めば進むほど、どう転んでも救われないであろうことは想像がつくし、虚しさしかないオチもまた見えてくる。事件そのものではなく、そうして過去に囚われていることこそが悲劇なのだ、というテーマも明らかに。そしてそこからの解放もまた、やはり苦痛を伴う……。
真相はなんやねん、という興味でまあまあ退屈せずに観られるのだが、ラストも含めてやや切り込み不足に感じられるし、もっと無名キャストで年齢合わせて作った方が良かったんじゃないかな……。
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ジョジョの奇妙な電子書籍 荒木飛呂彦編
珍しくもなんともないと思いますが、『ジョジョ』が好きです。でもアニメは見てません。5部やったら見ようかと思ってます。
そのアニメ化など、最近、メディアミックスにも熱心な『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズですが、あまりイメージのなかったkindle版も普通に出ています。特にカラー版は目玉ですね。
ジョジョの奇妙な冒険 第4部 カラー版 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/03/19
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ジョジョの奇妙な冒険 第4部 カラー版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/03/19
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集英社のコミックは作品によって電子化のばらつきがあり、紙版と同時に電子版が出る場合と、1〜3ヶ月遅れて出るパターンがありますね。
『ジョジョリオン』はちょい遅れが基本。自分はせっかく今まで揃えてるので、ずっと紙で買っていますが……。電子版ならカラーの方を買おうかな。
ジョジョの奇妙な冒険 第8部 カラー版 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/12/18
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ジョジョの奇妙な冒険 第8部 カラー版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
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近年発売された新書や、短編集、初期作品群も電子化されています。
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/02/19
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- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
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荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論【帯カラーイラスト付】 (集英社新書)
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/03/27
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kindle化されていない本
『変人偏屈列伝』がまだなんですよねえ……。大判の『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』などは、やっぱり紙でないとダメかな。
- 作者: 荒木飛呂彦,鬼窪浩久
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/04/18
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- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/05/27
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”俺ちゃん面白いだろ?”『デッドプール』
Xメンからスピンオフ!
かつて有能な傭兵だったウェイドは引退後、娼婦のヴァネッサとの出会いを経て結婚を決意。だが、突如末期ガンとの診断を下されてしまう。失意のウェイドは、そのガンを治療できると言う謎の男の誘いに乗り手術を受けるのだが……。
『ウルヴァリン』で登場したもののあんまりな扱いだった人気キャラが、『フューチャー&パスト』によって過去作がリセットされたおかげで、堂々の復活! アメコミ大作映画としては少々低予算だが、全米ではバカあたりとなり、しかもR指定の残酷描写が爆裂。子供の見られないアメコミ映画として話題に。
ライアン・レイノルズと言えば『グリーン・ランタン』というフォローのしようもない大失敗作が常々ネタにされているが、『ウルヴァリン』と合わせて二作品分のリベンジ、捲土重来を期した映画となった。
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タクシーで移動する(この時点で可笑しい)デッドプールが、身の上を運転手に語るところから始まり、現在と過去が並列して進む。ガンに侵されたライアン・レイノルズが、彼の元特殊部隊という経歴に目をつけた組織によって改造され、不死身の超人となる。が、代償として信じられないような苦痛を味わった上に、醜い風貌になってしまったため、恋人の元から離れ復讐を企てる……。
アメコミ映画も本数が多すぎるが、何が食傷気味って、こう似たり寄ったりの「オリジン」を見せられること。スパイダーマンの叔父さんが何度も殺されるのが代表例だが、もう「かくかくしかじか」でいいんじゃないかな、という風に思ってしまう。時系列入れ替えはそこで退屈させないためのテクニックなんだろうが、ライアン・レイノルズというのがまた自意識の感じられないぼんやりとした風貌なので、どうも真に迫ってこない。
また、顔が醜いと言っても、まあ確かに『バニラ・スカイ』のトムよりは多少ひどいかな……とは思うが、ヒロインをそれなりに魅力的な人物像にするならば、この程度なら大丈夫だろうと普通に予想がついてしまうので、王道の恋愛もの的なメインストーリーもいまいちパッとしない。
シンプルなオリジン、シンプルなラブストーリーを肉付けしているのが、パロディとメタ要素、グロ描写、さらに観客に語りかける演出……なんだが、この「第四の壁」を超えてくる演出のせいで、どうも何をやっても「これ見よがし」でわざとらしく「ウケ狙い」をしてるなあ、という気がして、物語にも入り込みづらい。作中のキャラクターの自然な減らず口としてギャグが飛ばされるのではなく、わざわざこちらを向いて、アクションの真っ最中に画面をいちいちスローモーションにして、「どうですか? おもしろいでしょ?」と言ってくるので、同じギャグでも寒く感じられるし、テンポも実は良くない。日頃、「笑い屋」やら「オレわかってるぜ笑い」を憎悪する向きは、まずそれらを誘発するようなギャグに石を投げるべきじゃないか、と思いましたね。
下手な映画ではないので、タクシー運転手との会話シーンなんかは普通に面白い。マスクのおかげでライアン・レイノルズの無個性な顔を長いこと見なくていいのも助かるし、無表情な覆面とオーバーなアクトの合わせ技は魅力的。
ジーナ・カラーノさんも出ていたけれど、すごいでかくなってたな……。ありゃあ75キロぐらいあるんじゃないか。もうロンダ・ラウジー戦はでかくなりすぎて無理ですね。
シンプルさと淡白さ、過剰さとクドさが入り混じっていて、全体としては濃いけど麺の量の少ないラーメンを食ったような物足りなさが残った映画でした。特別好きじゃないが、単品ものなら去年の『アントマン』あたりの方が買いかな……。
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ホームシアターのポテンシャルを最大限発揮してくれるのは、ライブのソフトかもしれない。
”怪物をやっつけろ!”『マネーモンスター』(ネタバレ)
ジョディ・フォスター監督作!
財テク番組「マネーモンスター」の司会者リーは、話術とダンスパフォーマンスで人気。おなじみの株価予想とアドバイスで、今日も生中継に入ったリーは、ディレクターのパティの指示も無視して絶好調のはずだった……。だが、局内に侵入してきた一人の男が突如彼に銃を突きつけ、ある要求をしてくる……。
メル・ギブソン主演の鬱病映画『それでも、愛してる』以来、ひさびさの監督作となりましたジョディさん。今回は来日までしてくれて、ありがたいことですね。
市場予測してニワカ投資家を煽る金融番組「マネーモンスター」の人気司会者ジョージ・クルーニーと、番組ディレクターのジュリア・ロバーツ。長年の付き合いだが最近ちょっと隙間風が吹いている二人の、いつものオンエア直前……そのはずだった……。
が、景気良くいつものダンスで始まった番組に、謎の男が拳銃と爆弾を持って乱入してくる! この日は前週の株価暴落の特集の日で、そこの会社の社長が捕まらず、広報担当が生中継に出てくることになっていた。まさにそれで株をすった男が殴り込み、「銀行より安心な銘柄だよ!」と煽りまくったジョージ・クルーニーに爆弾を巻きつけ、さらに社長出てこいと要求! 最初は言ってないとすっとぼけたクルーニーだが、録画を見せられあえなく轟沈。
男の要求で生中継は続行され、通報により警察も駆け込んでくるが手を出せない。ジュリア・ロバーツディレクターは、クルーニーがこっそりつけているイヤフォンで指示を出し、なんとか男がエスカレートするのを避けつつ、事態を沈静化しようと真相を探る……。
自分は雇われ司会者(だから罪はないんだ)と言い張り、自分を助けるために視聴者の善意で株価を上げてもらおうとするクルーニーだが、壮絶にすべる。乱入してきた男は『アンブロークン』のジャック・オコンネルが演じていて、今回は全然不屈の男じゃないがいかにもいい人っぽい。そんな彼を懐柔しようとするクルーニーも、彼が説得に来たはずの婚約者に「穀潰し」と罵倒されたりしてるのを見てると、段々と同情が先に立ってくる。
しかし雇われ司会者だと言うジョージ・クルーニーと、別の局に移籍しようとしてるやっぱり雇われ者のジュリア・ロバーツだが、なぜか現場の判断は全て二人がしているのだよな。生中継の続行の可否にしろ、視聴率や番組のイメージが相当に絡むだろうに、なぜかホイホイと進めて、何の障害もない。この番組にはプロデューサーはいないのであろうか。テレビ局にはスポンサーもいないし、上役も同じ建物にはいないのであろうか……? まるで二人が番組はおろか局を丸ごと私物として持っているかのようだ。
おかげで仕切ってるジュリア・ロバーツが超有能な人のように見えるが、これだけ横槍なくフリーハンドで何でもできたらスムーズに進むに決まってるよ。
じゃあその分、番組で投資を煽りに煽った責任は二人がしっかり背負うのかと言うと、それは企業の方が実は儲けをちょろまかして裏取引をしていて……というのが見えてくる。悪いのは実はあの会社の社長だったんですよ〜! 僕たちも君と同じで騙されていたんだよ〜! いかにメディアの責任に折り合いをつけるのかと思っていたら、分かりやすい悪役を提示することで自分たちは共犯関係から逃れるセコさ。なんだこりゃあ。
システムではなく、一部の不心得者が悪い! だから君と一緒にオレたちがそいつを成敗してやるぜ! とお話はあっさり勧善懲悪になり、ジュリア・ロバーツはハッカーに頼んで証拠をつかむのであった。いや、いくら99分にまとめたからって、お手軽すぎるでしょ。
ウォール街まで舞台にしておいて、悪いのは「1%の金持ちだけ」というのもなかなかすごい設定で、ハリウッドスター様が正義の味方であるのはいつものことであるにしろ、この映画自体に放送局から金でも出ているのか、「テレビ番組はツールに過ぎず、それは作り手の良心次第だ」なんて与太を本気で言おうとしているのか、理解に苦しむ。それにしても同じジョージ・クルーニー製作としても、『フィクサー』からさえかなり後退したように感じられるが……。
番組を見ている観衆を何パターンも撮ってるが、これも臨場感を増すだけの工夫ではあっても、何か生きている感じのない、まさにモブであったな。
しかし、結局悪者は成敗され、これでまあめでたく終わるのかと思いきや、ジャック・オコンネル君だけはきっちり射殺されてしまい、番組ジャックの責任だけは取らされるという悲しさ。ディレクター、司会者、カメラマンはプロの仕事を全うしただけで何も悪くないのだ……。とりあえず悲しんで見せて、善人ぶりだけはアピール。ラストも二人で「番組これからどうする?」と話して終わるのだが、やっぱりお前らの一存なんかい!
悪い意味で全然『テロ,ライブ』を彷彿とさせない、普通のハリウッドエンタメ。まあジョディ・フォスターはテンポよくまとめ切ったと思うけれど、監督・製作・主演の人たちが集まって、自分らをカッコよく描いたお友達映画、という印象でした。プランBの神様ブラピみたいなもんね。
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