”お前の罪を償え”『シークレット・アイズ』
ジュリア・ロバーツとニコール・キッドマン共演/映画『シークレット・アイズ』予告編
キウェテル・イジョフォー主演作。
今から13年前、9.11直後の2002年……FBI捜査官のレイは検察局に派遣され、検察局捜査官のジェスと組んでモスクの監視を行っていた。だが、モスクの駐車場から死体が発見され、それがジェスの娘だということが明らかになる。捜査を強硬に主張するレイとジェスだが、テロ捜査の方を重く見た検事は、事件を握り潰そうとする。そして現在、すでに引退していたレイが、再び検察局に戻ってくるのだが……。
アルゼンチン映画『瞳の奥の秘密』のリメイク。アメリカ野郎どもときたら、吹き替え版作る代わりにリメイクしてんじゃねえか、と思うぐらいで、今作も舞台を9.11直後のアメリカに翻案してのリメイク。
13年前の殺人事件を中心に、事件を追い続ける元FBI捜査官をキウェテル・イジョフォー、被害者の母親である同じく元捜査官をジュリア・ロバーツ、検事をニコール・キッドマンが演じる。
13年分は老けメイクで処理……なんだが、イジョフォーさん実年齢39歳は、過去がやや若作り、現在がやや老けメイク。ジュリア・ロバーツ実年齢48歳は過去がかなり若作り、現在はスッピンで実年齢どおり。ニコール・キッドマン実年齢48歳は過去が超若作り、現在が普段してる若作りぐらいかな……。各キャラクターの設定年齢が定かではないので何とも言えないが、ジュリア・ロバーツが貫禄あってパイセン感を出しているので、ロバーツ>イジョフォー>キッドマンぐらいの年齢に見える。
そんな感じで統一感がないので、結果的にニコール・キッドマンが突出して若作りしてるみたいに見えてしまい、割りを食っている……。13年前の設定年齢はいくつなんだ。30ちょうどぐらいか? イジョフォーさんの暴挙でブラウスがはだけ、容疑者にブラジャーを覗かれるという憂き目に合うのだが、いかにも苦しいな……。
そもそもイジョフォーさんとの現実には9歳差恋愛が、設定と乖離していてこれも結構な無理があるぞ……。しかもこの恋愛感情、大筋とはあまり関係なかったりする。匂わせる程度に留めておいても良かったんではないか。
対テロ捜査班のイジョフォー&ジュリア・ロバーツが、監視対象のモスクで見つかった死体を一応調べに行ったところ、実はジュリア・ロバーツ捜査官の娘だった、というところが衝撃の幕開け。場所的には管轄だけど、業務的には管轄外だから自分たちでは捜査させてもらえない。
独自に調べていたところ、被害者をジト目で見ている男の写った写真を発見。しかもそれは、自分たち捜査班のピクニックのもの。これは誰か知っているだろうと思って聞き回るが、全員が知らないとスッとぼける……。実はこの男はモスク内部の情報屋で、9.11後の厳戒態勢の中では欠かせない(と当時は思われた)情報の持ち主。担当の捜査官はかばい、他は見て見ぬ振り、検事のアルフレッド・モリーナさんも当然起訴はしない……。
時系列が現在と前後するので、この過去の話もなかなか進まないが、いろいろ奮闘したが結局徒労に終わり、取り逃がしてしまったらしい、ということだけはわかる。現在パートは、13年間、容疑者の足取りを追い続けていたイジョフォーさんが、ついに整形で顔を変えたその男を見つけたところから始まるのだ……。
あらすじを読んだ限りでは、オリジナルと全然違う話なんじゃないか。9.11じゃあもろにアメリカの話だし、オリジナルで話題になったスタジアムの長回しは野球場の平凡なシーンになってるしな。
13年後の現在パートは、老け込んだジュリア・ロバーツ、同じく老けたが目だけギラギラしてるイジョフォーさん、歳は取ったがキャリアは順調なキッドマンという三人が再び顔を合わせ、再捜査に向けて動くシーンから。
ぼんやりとだが、ここからすでに三人の内心には実はギャップがあることが感じ取れる。それは13年前の幾つかのすれ違いが原因で、容疑者を逮捕できなかったことだけの問題ではない、ということが時系列を行き来するたびに少しずつ浮かび上がってくる。
ミステリ的な構造にはなっているが、進めば進むほど、どう転んでも救われないであろうことは想像がつくし、虚しさしかないオチもまた見えてくる。事件そのものではなく、そうして過去に囚われていることこそが悲劇なのだ、というテーマも明らかに。そしてそこからの解放もまた、やはり苦痛を伴う……。
真相はなんやねん、という興味でまあまあ退屈せずに観られるのだが、ラストも含めてやや切り込み不足に感じられるし、もっと無名キャストで年齢合わせて作った方が良かったんじゃないかな……。
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