"博士とあいつにあたし萌え萌え!"『ジキル&ハイド』

 原題は『メアリー・ライリー』。原作『ジキル博士とハイド氏』を、メイドであるメアリーの視点から描いた翻案作。


 ジキル博士の屋敷に雇われた、メイドのメアリー・ライリー。夜毎、謎めいた実験を繰り返すジキル博士に、手と首の傷の存在に気づかれたことを切っ掛けに、彼女は、じょじょに博士に心を開くようになる。そんなメアリーに目をかけるようになる博士。だが、ある日を境に、屋敷に博士の助手である男が出入りするようになる。助手の名はハイド……粗野で危険な男……。


 出だしから、玄関先に這いつくばって掃除をしてるメイド役な辺り、ジュリア・ロバーツ主演作としては異色の内容。当時の出演作もラブロマンス全盛だったし、フィルモグラフィ見ても明らかに浮いている。まあそれだけ意欲作だった……のかもしれないし、ダークな雰囲気の中、オーバーアクト気味ながら演技的にも健闘しているのではないか。


 しかし、肝心のジキル&ハイドことマルコビッチがなあ……いや、上手いのは間違いないのだが、ジキル博士の時点ですでにかなり危険な雰囲気を醸し出していて、ハイド様が満を持して登場しても、メイクの違いが目に付くばかり。で……どう見ても同じ顔の人だよなあ……フェイスが個性的すぎるよ!


 多分、原作小説はそこそこ書き込んであるんだろうが、いかにも「二次創作」的な話なんだよな。二つの人格の狭間で苦しむ男の姿に「萌え」を見出し、それにはまってしまう感性の持ち主を主役に据えている。温厚で人格者のジキル博士と、危険なあんちくしょうことハイド氏の両方に惹かれ行く女……二つの父親像から逃れられない。たぶん耽美小説的にやりたかったのだろうが、映画は殺伐とした雰囲気が先立ってしまい、恋愛劇としては弱くなっている。


 個々の要素や狙いはいい部分もあるのだが、もう一歩、何をやりたいのか不明瞭なまま作ってしまった印象。残念ながらラズベリー賞ノミネートだそうで……。

ジーキル博士とハイド氏 (新潮文庫)

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メアリー・ライリー―ジーキル&ハイドの恋 (文春文庫)

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