”俺ちゃん面白いだろ?”『デッドプール』


『デッドプール』本予告

 Xメンからスピンオフ!

 かつて有能な傭兵だったウェイドは引退後、娼婦のヴァネッサとの出会いを経て結婚を決意。だが、突如末期ガンとの診断を下されてしまう。失意のウェイドは、そのガンを治療できると言う謎の男の誘いに乗り手術を受けるのだが……。

 『ウルヴァリン』で登場したもののあんまりな扱いだった人気キャラが、『フューチャー&パスト』によって過去作がリセットされたおかげで、堂々の復活! アメコミ大作映画としては少々低予算だが、全米ではバカあたりとなり、しかもR指定の残酷描写が爆裂。子供の見られないアメコミ映画として話題に。
 ライアン・レイノルズと言えば『グリーン・ランタン』というフォローのしようもない大失敗作が常々ネタにされているが、『ウルヴァリン』と合わせて二作品分のリベンジ、捲土重来を期した映画となった。

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 タクシーで移動する(この時点で可笑しい)デッドプールが、身の上を運転手に語るところから始まり、現在と過去が並列して進む。ガンに侵されたライアン・レイノルズが、彼の元特殊部隊という経歴に目をつけた組織によって改造され、不死身の超人となる。が、代償として信じられないような苦痛を味わった上に、醜い風貌になってしまったため、恋人の元から離れ復讐を企てる……。

 アメコミ映画も本数が多すぎるが、何が食傷気味って、こう似たり寄ったりの「オリジン」を見せられること。スパイダーマンの叔父さんが何度も殺されるのが代表例だが、もう「かくかくしかじか」でいいんじゃないかな、という風に思ってしまう。時系列入れ替えはそこで退屈させないためのテクニックなんだろうが、ライアン・レイノルズというのがまた自意識の感じられないぼんやりとした風貌なので、どうも真に迫ってこない。
 また、顔が醜いと言っても、まあ確かに『バニラ・スカイ』のトムよりは多少ひどいかな……とは思うが、ヒロインをそれなりに魅力的な人物像にするならば、この程度なら大丈夫だろうと普通に予想がついてしまうので、王道の恋愛もの的なメインストーリーもいまいちパッとしない。

 シンプルなオリジン、シンプルなラブストーリーを肉付けしているのが、パロディとメタ要素、グロ描写、さらに観客に語りかける演出……なんだが、この「第四の壁」を超えてくる演出のせいで、どうも何をやっても「これ見よがし」でわざとらしく「ウケ狙い」をしてるなあ、という気がして、物語にも入り込みづらい。作中のキャラクターの自然な減らず口としてギャグが飛ばされるのではなく、わざわざこちらを向いて、アクションの真っ最中に画面をいちいちスローモーションにして、「どうですか? おもしろいでしょ?」と言ってくるので、同じギャグでも寒く感じられるし、テンポも実は良くない。日頃、「笑い屋」やら「オレわかってるぜ笑い」を憎悪する向きは、まずそれらを誘発するようなギャグに石を投げるべきじゃないか、と思いましたね。

 下手な映画ではないので、タクシー運転手との会話シーンなんかは普通に面白い。マスクのおかげでライアン・レイノルズの無個性な顔を長いこと見なくていいのも助かるし、無表情な覆面とオーバーなアクトの合わせ技は魅力的。
 ジーナ・カラーノさんも出ていたけれど、すごいでかくなってたな……。ありゃあ75キロぐらいあるんじゃないか。もうロンダ・ラウジー戦はでかくなりすぎて無理ですね。
 シンプルさと淡白さ、過剰さとクドさが入り混じっていて、全体としては濃いけど麺の量の少ないラーメンを食ったような物足りなさが残った映画でした。特別好きじゃないが、単品ものなら去年の『アントマン』あたりの方が買いかな……。
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