”最後のX”『ローガン』


ヒュー・ジャックマン、“最後のウルヴァリン” 映画「LOGAN/ローガン」予告編

 『ウルヴァリン』シリーズ完結!

 ミュータントが次々と死滅していった世界……わずかな生き残りであるローガンもまた、その再生能力を失いつつあった。テレパスを制御できなくなったプロフェッサーをかくまいながら、運転手としてひっそりと暮らすローガンに、ある少女が委ねられる。ローラ……強烈な再生能力とアダマンチウムの爪を持つ少女の正体とは? そしてミュータント絶滅に隠された秘密とは……。

 大変バカな映画だった『SAMURAI』と『アポカリプス』を経て、さあヒュー・ジャックマンの最終作です。ミュータントが滅びに瀕した時代。プロフェッサーの理想も虚しく排外主義がはびこる世界。一応、『フューチャー&パスト』の時代のその後と解釈することもできるし、パラレルな世界設定と思ってもいいし、どっちとも取れるかな。

chateaudif.hatenadiary.com
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 かつての主要キャラはローガンとプロフェッサーしか出番がなく、ボケ老人と化しつつあるプロフェッサーは能力を暴走させて仲間を死なせたことが明らかに……。しょうがないから残ったローガンが介護しているという話だが、何でも7人ぐらい死んだらしく、それはつまりスコットとストームと……と指折り数えてしまう。
 ローガン自身も再生能力の低下に悩まされており、『SAMURAI』で心臓に機械を仕込まれたのと同様の事態が、何もないのに起こっているという状態。

 じぇんじぇん未来が見えなくて、あの希望に満ちた学園が今思うと虚しい……。色々と頑張ってきたつもりだったけど、まさか待っていたのはこんな結果だったのか、と思うと泣けてくるね。
 そんな二人に助けを求めてきたのは、謎の少女を連れた女……。少女は軍事利用のために「ウルヴァリン」の遺伝子を組み込まれて生み出された、人工ミュータントだったのだ!

 メインの登場人物はこの三人だけで、後は悪役か途中で出会う一般人か……。何せ悪役も二役でヒュー・ジャックマンがやってたりするし、大作感は薄いめ。ただその分、メインキャストのドラマは濃密になっていて、三人を取り巻く環境の出口の見えなさをこれでもかこれでもか、と強調する。
 作中で流れる『シェーン』からわかるように西部劇オマージュで、老いたガンマンが、家族のために最期の戦いに挑むという展開も完成されていて、非常にまとまっていますね。マンゴールド監督、あまり理解が深かったとは言えない時代劇から、わかってる西部劇に雪崩れ込む落差が激しいな!
 ローガンの「娘」であるローラは作られたミュータントであり、他の仲間も含めてもう生殖能力があるのかどうかもよくわからんのだよね。宣伝でちょいちょい触れられた「ミュータントの希望」とかそういう話では全然なくて、ローガンが最後に知った家族である彼女自身を守る、というかなり個人的な話でもある。ミュータント死滅の謎はラスト近くでさらりと語られるが、それはもはや、今作の主人公を取り巻く状況を作り出すための装置でしかなく、作品のテーマではないし、作中で回避される手段もまたない。

 ローラ役はダフネ・キーンちゃん。険しい顔してるんだが、めちゃくちゃかわいいな、この子……。足にもアダマンチウムの爪が仕込まれていて、潜在能力ではローガン以上かとも言われる戦闘マシン。頑固者のお父さんの性格もやっぱり受け継いでるのか、と思わせる頑なな演技を見せつつ、後半にちょっとデレてくるとまたそのギャップがいいですね。
 未成年者が人を惨殺しまくるヒットガール以来のキャラ、R指定も納得のバイオレンスの象徴。これも『デッドプール』のヒットの副産物だそうで、こういうアプローチは今後増えて欲しいですね。

 ヨレヨレになってるウルヴァリンを終盤のバトルで活躍させるための前振りは一応あるのだが、ほんとに一時的な効果しかないもので、カタルシスがあるかというとない。が、今ある材料だけで何とかするリアリティとテクニカルな攻防が引き立つので、それはそれでよしですね。

 キーンちゃんが急に喋り出すところや、脱走が義憤を感じた看護士たちの決起、の割には妙に用意周到だったり、若干腑に落ちない展開もあったが、総じて面白かったし、何にせよ「終わり」が描かれるということ自体が最高のエンターテインメントであるな、とダラダラ続きがちなシリーズやユニバースを振り返りつつ思ったところ。まあX-MEN自体はまだまだ続くようですが……。

ウルヴァリン:オールドマン・ローガン (MARVEL)

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