"なくしたもの、取り戻したいもの"『3時10分、決断のとき』
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南北戦争で片脚を失い、借金を背負って土地を手放す危機に陥っているダン・エヴァンス。家族のために地主と交渉するため、町に向かう道すがら、名うての無法者ベン・ウェイドの強盗現場に遭遇する。現場で生き残りの賞金稼ぎを助けたダンは、町でウェイドの逮捕に居合わせ、彼の護送に加わる事に……。
このキャストなのに単館公開という不遇の作品で、公開当時見逃した。BD買ってあったのを、やっと観たぜ。
早撃ちを得意とする強盗団のボス、ラッセル・クロウのキャラクターが抜群に面白い。この人の強面、マッチョというほどではないが強そうなところと、それなのに頭も切れて教養もあるところのギャップがはまってる。思えば『バーチュオ・シティ』の悪役や『ロビン・フッド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101230/1293672340)の主人公にもこういうところがあった。イヤな奴にも丁寧なしゃべり方をし、わりと理屈をこねるが、突然豹変して容赦なくぶっ殺す! その二面性に対して、チャンベさんの息子役のローガン・ラーマン(三年後『パーシー・ジャクソン』、さらに二年後『三銃士』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111110/1320901456)のダルタニアン)が、ちょっとカッコいいと思ってみたり逆に引いてしまったり……。
そうしてアウトローたるラッセル・クロウに対し、クリスチャン・ベールは戦争で片脚を失った実直な男。妻と息子二人、さらに土地と牛を守るために金が必要……と表向きはそういうことになっているのだが、実はコンプレックスに悩まされているのだよね。そこを常に突かれることに。また報われない役なわけだが、こちらもこういう神経質げで自らに欠けたものを必死に求めてるキャラがはまってるんだよね。
自己の承認を求める心と、それに対するリスペクト、心意気の物語。過去作『決断の3時10分』のリメイク作品なのだが、血で血を洗う南北戦争後の西部の価値観が、現代のそれとは大きくずれていて、観ながらギャップも感じた。人の命はひたすら安く、わずかな金で取引され、それでもそのわずかな金がなければ生きていけない世界。そのわずかな金を得る事が、男としての証明であったりするのだが、喪失感に悩まされるチャンベさんはそれ以上のものを求め、より大きな事を成し遂げたい。もっとささやかなことでいいんじゃない、楽な生き方してもいいんじゃない、と「持てる者」であるアウトローのラッセル・クロウはちくちくつつくんだけど、それでは埋められない、と感じているんだね。やがて奇妙な絆が芽生え、そんな男の喪失感にアウトローだったはずの男が心意気で応える姿にしびれる。
ローガン・ラーマンやベン・フォスターなど、近年主役級に出世した若手も出てるし、『ロビン・フッド』でもラッセル・クロウと共演してた変な顔の人(『リアル・スティール』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111211/1323615379)のプロモーター役の人)も出ておったり、キャストも豪華。劇場で観たかったな〜。
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