"必死剣貞子刺し"『貞子3D』


 スルーしてましたが遅れての上映があったので観てきました。


 柏田という男によってニコニコ動画でアップされた自殺動画を見た人間が、同時刻に謎の自殺を遂げる。一度は削除されたその動画は、今もネットにアップされ続け、それを見た者は必ず死ぬ……。鮎川茜が教師として勤める学校でも、動画を探していた学生が変死を遂げる。自らもその動画を見てしまった茜に迫る、動画から飛び出る謎の女。それこそが柏田の言う「S」なのか……?


 「呪いの動画だってさ〜!」みたいな台詞だけでその大変さ、恐ろしさを語る演出は、映画としては噴飯ものなんだけど、ネットで口コミの噂だけが先行して、「これが真実だ!」と人が踊らされてしまう感覚に、ちょっと重なる。もちろん、これは映画なんだからその噂が本当に真実になってるわけだけれど、逆にその軽薄な噂、馬鹿馬鹿しい都市伝説を鼻で笑う自称大人に対する反発のようなものも感じられて面白い。もうじき世界は終わるんだ〜、終わってしまえばいいんだ〜!という若者の諦念や厭世観とも、今作は無縁ではないよね。
 他者の承認を得られなかった男が自らの自殺をきっかけにして「S」を呼び出し、逆に他者からの承認を得た主人公がそれとの一体化を拒否する、という展開は一応ちゃんとストーリーになっているんだが……んん〜、主人公が超能力者という点で、まあ『リング2』と同じ話でもある。


 『リング』シリーズのテイストはもうすっかりなくなって、旧作への言及もなし。かつて呪いのビデオが出回った、ということにも触れず。今回はネットに出回るのだが、そこでもネットならではのテクニカルな要素にまったく言及されてなかったのはもったいなかったなあ。「拡散」があくまで人の好奇心と大オチのアレという止めようのない心理によって為されるところこそ、かつての「呪いのビデオ」の恐ろしさの肝だったわけだ。それがネットによってより先鋭化される危機があることを描かずに、「どこにでもディスプレイはあるんだびょ〜ん」という程度の演出に留まってしまったのはもったいない。


 しかしもっとつまらないかな、と思っていたが、音響と3D効果込みのアトラクション・ムービーとして観るとそれほど悪くもない。要所要所でびっくりはできる。ピンチに石原さとみが悲鳴をあげてディスプレイ崩壊、という同じシーンが二回続いたのには辟易したが、何気にこの薄い映画を支えているのはこの石原さとみで、意外と演技上手いんでちょっと驚いた。あまり注目したことはなかったが、周りのキャストがしょぼい中、メインヒロインとして気合が入っていたか、恐怖の表情が大げさでな絶叫系でなくリアルでいい感じ。


 怪奇作家倉阪鬼一郎曰く「間違ったホラー映画はアクションになってしまう」だそうだが、それを地でいく作りで、クライマックスは増殖した貞子クローンがエイリアンの如く大量襲来。またここのシーンになるとどっかで観たような映像ばかりになり、絶望的なまでにつまらなくなってしまった。こいつら一発殴られただけで消滅するのだが、石原さとみは別に反撃には転じない。三体ぐらい石や棒でやっつけるので、そのまま切り込めば、多分バッタバッタと蹴散らせたと思うのだが……。
 さらに貞子の素顔がババーンと出て来るあたり、「貞子役をやりました!」という箔を女優につけさせたかったようにしか見えないし、このシーンのメインビジュアルが怨念の地である井戸とまったく関係ない辺りにもガクーンとなってしまったね。


 観てる間はまあまあ面白かったような気がするが、思い出すとアホらしくなってくる映画。消費してさっさと忘れてしまうのが吉だな〜。たぶん、来年か再来年ぐらいにまた新作が作られるのだろうが……。

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