『パラノーマル・アクティビティ』


 全米を恐怖に陥れた低予算映画、ついに日本上陸!


 デイトレーダーのミカと同棲するケイティ。ケイティは幼い頃から、姿の見えない気配やポルターガイスト現象に悩まされて来た。二人の住む家でその現象が起き始めた時、ミカはビデオカメラでその怪異を撮影しようと思いつく。一日……二日……撮影が日を重ねるにつれて、現象は徐々にエスカレートし始める……。


 登場人物はたったの四人、制作費は約135万円だそうで、とてつもない低予算。ストーリーは一軒の家の中でのみ進行する。
 筋書きは単純だし、ジャンル映画としてさして目新しいところがあるわけでもない。フェイク・ドキュメンタリーと言う事自体も、いまさら売りにはならない。だが、意外なまでに面白い。
 撮影を続ける彼氏と、渋々ながらもそれを受け入れる彼女……その関係性のバランスの変化がよく描けているのが、そう感じる一つの要因だろう。彼氏の方の怪異現象に対するスタンスは、まず興味本位というのがあり、自分の家に対する侵略として、また彼女を脅かす許しがたいものとしての怒りもあり、だがどこかこの状況を楽しんでいる。最初は半信半疑だが、映像や音声という動かぬ証拠が残るにつれて徐々に困惑の度合いは深まる。
 彼女の方は純粋な恐怖が発端だ。現象が進行するに連れて取り組みに熱心さを増す彼氏に苛立ち、裏返しとして恐怖がより募っていく。彼に対する信頼は、自体を抑止出来ない……むしろ悪化させていることから崩れ、怒りと不信へと変わって行く。
 この辺りの感情の動きが丁寧に順を追って描かれているため、より感情移入しやすくなっている。


 体裁としては、ミカが撮影した映像を、「後日」編集したという設定。本来なら延々と寝てるところが映っているところも、パーッと早送りして当該シーンにあっという間に辿り着く。送ってる間はちょっと安心してて、普通の再生に戻ったら「あ、これから何か起きるんだな?」と思ってハラハラするんだよね。いきなりドーンと来る訳じゃないんだから、ドキドキが薄れそうな気がするんだが、なぜかよりハラハラしてしまう。


 これらが相俟って、フェイクドキュメンタリーと言うよりは、ほとんど普通の劇映画として見てしまったなあ。演出が「観客」を意識しているところも目立つし、嘘でも「実際にあった映像」とは捉えられない。だが、だからこそ冗長さもなく、プロットとランタイムが一致した、コンパクトに詰まった映画になったと思う。


 恐怖演出はシンプルでいい。臨場感もフェイクでいい。それでも怖い映画は作れるのだ。


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