"いい絵が撮れても帰れない"『グレイヴ・エンカウンターズ』


 またまたPOVホラー。


 好評を博している怪奇現象ドキュメント番組「グレイヴ・エンカウンターズ」。プロデューサーのランス・プレストンとその撮影クルーは、閉鎖されて廃墟になった精神病院で、その第六回の撮影を行うことに。翌朝まで玄関を施錠し、仕込みも交えて番組制作に精を出す一行。だがその時、「それ」はすでに動き出していた……。


 やらせ番組の制作チームが乗り込んだ先の廃病院が、実はモノホンの恐怖スポットだった、というお話。6話目にして本物に当たっちゃったということだから、こりゃあ結構高い確率で当たる、ということだよね。
 最新機材を設置し、映像や温度の変化など科学的アプローチで霊の存在を実証する、という番組だが、同じような設定のものとして、小野不由美の『ゴースト・ハント』(悪霊シリーズ)が好きなら、今作はかなり楽しいかも知れん。五巻『鮮血の迷宮』(旧題『悪霊になりたくない!』)を、多くの面で彷彿とさせるストーリー。黒幕の存在とか、鮮血風呂とか……。残念ながら、この映画に登場するチームにはぼーさんやナルちゃんのような本物の霊能力者がいないので、より大変な目にあってしまうことになるんだがね! 


 冒頭で「80時間分の映像」と言ってたのに、撮影開始して翌朝まで一昼夜しかないのはどういうことなんじゃい、と思ったら、中盤以降は超常現象の釣瓶撃ちで、その辺りも押し切って来る。途中まで何か起きそうで何も起きないまま、伏線張るのに終始するわけだが、この部分が長い上に登場人物たちがそこそこ楽しそうなので、なんだかこの平穏が壊されないでほしいような気がしてしまった。このまま何事もなく朝を迎えて、やらせ番組の第6話が完成すれば良かったのに……。しかし怪現象は容赦なく牙を剥き始める。


 序盤、もう少しかったるくなるかと思ったんだが、キャラクターたち、特に主人公のプロデューサーの「番組を盛り上げるぜ!」という、やらせも辞さないプロ意識(笑)が物語を牽引し、なかなか飽きさせない。むしろ、恐怖現象の連発する中盤以降がやや冗長だったかもしれん。POV映画特有の、カメラに捉えられたものしか観ることのできない歯痒さを、こうしたアクティブなキャラを主役に据え、番組撮影という必ず能動的になる設定を施して、カメラも複数用意して処理してみせたあたりが上手いね。


 『パラノーマル・アクティビティ』シリーズや『REC』シリーズ含め、このジャンルの中ではテンポもいいし、結構好きな方だな〜。

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ゴーストハント (4)

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