”奴を高く吊るせ"『死霊高校』(ネタバレあり)


 POV映画!


 1993年、高校で上演された『絞首台』のクライマックスでその事件は起きた……。舞台装置のトラブルで、主演のチャーリーが縊死したのだ。それから十数年が過ぎ、同じ高校で追悼のため、再び『絞首台』が上演されることになるのだが……。


 「またPOVかあ、そろそろ食傷気味だよねえ」と訳知り顏で言いつつ、実は今年1本目であったりするのである。それなのに胃もたれして感じられるのは、それだけ新味を出すことが難しい、似通った印象、似た仕掛けのものになりがちだから。


 オープニングは十数年前、原題でもある舞台劇『THE GALLOWS』の本番真っ最中に舞台装置が壊れ、フェイクの首吊りシーンで本当に死亡事故が起きてしまったビデオ映像から。客席からのほぼ固定されたカメラで、人物の顔までは判別できないものの全体像がよく見て取れる。


 前半は、演劇部の活動に補習で協力することになったアメフト部員が、カメラを持って準備や稽古の模様を撮影。上演する演目は……あの死亡事故が起きた劇だ!
 観ていると、ちょいちょい疑問に感じるところが出てくる。なぜその劇なのか? 再演に関わった中心人物は誰? 当時の出演者たちは今どこに? 最重要である情報は、端々に捉えられながらもどんどん流されていく。なぜか……撮影してる奴が、あまりにもバカだからなのでしたあああああ!
 小説でも一人称の語りにどんどん流されていくが、実はその語り自体が信用できないものである、という仕掛けがよくあるが、今作もまさにそれ。このバカ野郎が勝手な解釈をしてどんどん突き進んでいくのが、いいミスディレクションになっている。
 撮影役による偏見に凝り固まった演劇部員の人物紹介と悪さ、さらにその仕返しを食らって痛い目に会うまでが長めに描かれる。
 もう一人のアメフト部員はなぜか主役に抜擢されているが全然演技がダメ。主演女優に惚れてるので何とかビシッと決めたいところなのだが、まるで自信なし。そこへ撮影役の男が、「夜中に舞台セットをぶち壊して中止にさせよう!」と持ちかける。


 映画の本番はここからで、夜中の学校に侵入したアメフト部の二人、撮影役の方の彼女、そしてたまたまやってきた主演女優の四人が、校内に閉じ込められることに。序盤に演劇部のメンバーを大量に出した割に、急に登場人物が絞られるからちょっと拍子抜けしてしまう。
 で、しばらくはいかにも普通のPOVという感じで、手垢のついたビックリシーンが続くのだ……うーむ、これはハズレかな?と思うのだが、じわじわと伏線を回収していく過程も見えてくる。


 全体でも90分ないので非常にサクサク進み、人数少ない=死人が少ないということでもあるが、代わりにテンポの良さを獲得。さらに終盤は急にジャンルが変わったんじゃないのという荒技を見せ、怒涛の勢いで伏線も回収していく。すべては冒頭の事件へ……。


 いやあ、なるほどなあ。数々の仕掛けを非常にコンパクトにまとめていて、堪能しましたよ。
 ただ、全体像が見えてしまうと、よくよく考えたらオチが実は物足りない。









<ここからネタバレ>






 犯人の最終目的は、ああして彼を首吊りに処することであったのは間違いないわけだが、本来の計画では、予定通りに舞台を上演し、そのステージ上で満場の観客(そしておそらくは父親)の前で吊るす、つまりかつての事件を再現することになっていたのではないかな。それがああしてバカ野郎が夜中に忍び込んだから計画を変更せざるを得なかったわけで……。そう考えると、本来の計画通りのバージョンも観てみたかったところであった。








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