”姿なき暴力という大前提”『パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO NIGHT』


 超低予算ホラーの続編が、本国のお墨付きを得て日本で製作、公開!


 アメリカ旅行に行っていた姉が、事故で両脚を骨折して帰ってきた。その日から、山野家には不可解な出来事が連続して起こり始める。知らぬ間に移動する車いす、吹き飛ばされた盛り塩、突然割れるグラス……。弟の幸一は、姉の部屋にビデオカメラを仕掛け、その現象を撮影しようとするのだが……。


 前作の感想。
http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100125/1264381136


 さて、果たしていかなる新味を加えてるのかな、と思ったのだが……。
 すげえ! ほぼ同じ内容! 恐怖演出もカメラ位置もだいたい一緒!
 しかし不思議と飽きない。前作ではいったい何が起きるのか?と期待感込みだったが、今回は、だいたいネタがわかっている分、「見えない人」のエスカレートぶりを、お約束を待つような気持ちで見た。


 今シリーズの恐怖というのは、ダイレクトな暴力へのそれが強い。睡眠中の、いかにも無防備なところを狙っての怪奇現象。防ぐ術はいっさいない。姿は見えない、映像にも捉えられない、こちらから触れることもできない。話も通じないし、霊能者も無力。この「見えない人」を打倒する術は何もない。いたぶるように徐々にポルターガイスト現象をエスカレートさせ、少しずつ肉体的な苦痛を与えていく。
 もっとも平和で落ち着けるはずの空間である自宅が、暴力的な誰かに居座られ、好き放題に荒らされる状況。内容こそポルターガイスト現象と言うホラー映画のタームに分類されるが、解決の提示されない本作は、その暴力のシンプルな純粋性が際立つ。


 その「姿なき暴力」という前作の大前提を一切ぶれさせずに、そのまま日本と言う舞台に落とし込み、シリーズの冠をつけるに相応しい作品に仕上げたのが今作。新味は全然ないんだけど、職人仕事ですね〜。


 相違点と言えば、カップルだったオリジナルが、姉と弟(たまに父親も)という組み合わせに変わったこと。関係性はやや濃くなり、性的なニュアンスは希薄になった。だからと言って大まかな筋は変わらないので、単に男女が一軒の家にいる、というシチュエーションのバリエーションでしかない。


 だがな〜、せっかく「彼女いない原因?」とまで言われる美しい姉が、両脚の動かない無防備極まりない状況で、恐怖に怯えてるわけじゃないですか!
 姉、自分は社会に出て「色んな事を経験」したからって、今の状況では何にもできんわけじゃないですか!
 ちょっとファザコンっぽくて、浪人生の弟を軽く見てる感じがありありじゃないですか!
 その父も仕事仕事で真剣味なくて全然役に立たないわけじゃないですか!
 つうか母親が登場しないのも、死んだんじゃなくて出てったんだとしたら、もしかしてその色んな意味で役に立たないのが原因なんじゃないんですか!
 そんな姉と、この緊迫した状況下で一緒にいるわけで、ここで本来なら「間違った庇護欲」を抱いて然るべきなんじゃないかね、弟くんは! 遠回しな言い方ですけど!


 うーん、脚が動かない、母親がいない、そこらへんは単に家で二人っきりで出るに出られない、というシチュエーション作りのための設定なんだから、まあしようがないんだが、せっかく設定した以上は、もっと活かそうじゃないか!
 あとオリジナルは、「見えない人」から、なんかもっとケイティ好き好き感が漂ってたように思うんですけどね。そんな事も考えつつコピーを作ったりしたわけで……。


http://twitter.com/#!/paranormaljp/status/8277599612


 今作はただのレイプ魔だなあ……。「乗り換え」が起きてるせいかな。より悪意を感じる。
 つうか、この「見えない人」ね〜、無言で暴力振るうっていう恐ろしさの体現だからこそ怖いんだけど、さすがにネタ切れだろう。しかも「悪魔」っていう設定をしている必然性がまったくない。日本まで来たら余計に。いや、キリスト教色強められても、どうせ変に理屈っぽくなるだけだし、別にいいんだが。そっちの方に走りすぎると『REC2』になってしまうというこのジレンマ。

 さて、本家『パラノーマル・アクティビティ2』はどうなってるのかな? たぶんまた全く同じなんじゃないの……。予告観た限りでは、動物や赤ちゃんを恐怖に晒し、より嫌な感覚を掻き立ててそうだったが……。

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