"デジタルだめだよ、8mmじゃなきゃ!"『フッテージ』
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ノンフィクション「流血のケンタッキー」で一躍時の人となった作家のエリソン。だが、後の作品はヒットに恵まれず散々な評価を受ける。次のヒットがないまま十年、豪邸を売りに出し、エリソンは逆転のチャンスを賭け、かつて陰惨な事件の起きた家に、家族と共に引っ越してくる。かつて警察でも暴き出せない「真実」を求めていたはずの彼が今追うのは「成功」のみ。それでもインスピレーションをつかみかねていた彼だが、家の屋根裏で8ミリフィルムを見つける。そこには、警察も知らない事件の全容が映し出されていた……!
イーサン・ホークが、一度ベストセラーを出したものの、その後は鳴かず飛ばずのノンフィクション作家役。金がないから家を売ることにし、次作の取材も兼ねて家族に黙って変死事件の現場である家に引っ越す……。安かったから一石二鳥だね!とか思ってるわけだが、そもそも危険な場所に行ってしまう、何かがあっても留まってしまうという事態を招くのは、とかくこういった自身の経済的状況と名誉への執着であるのだね。
こういうシチュエーションの設定が丁寧で、期待値は低かったが、意外に面白かった。ノンフィクションライターが追う猟奇殺人、という体裁を取っておいて、徐々に超常現象へとシフトして行くあたりの緩急も好みだし、それと比例して神経質フェイスを青ざめさせるイーサン・ホークの熱演もハマっている。
演出は序盤薄味で、後半にギアを上げてからも、物音ガタッが中心なので、いささかしょぼかったかな。生理的な恐怖感はなく、怖さと言う点ではイマイチ、イマニというところであったが、ミステリ的に解決まで引っ張るので、最後まで楽しく見ていられた。8ミリを編集してデジタルビデオカメラで撮影し、それをPCに取り込んで解析し、真相に迫って行くあたりのアプローチも面白い。こういう映像で伏線を張っていくところも好きですね。それぞれの猟奇殺人に、一応の真相が用意されているあたりも良し。作中の伏線はちゃんと回収し、ロジックも整理されている。
8mmフィルムの映像もいいですね。「いい映画が撮れた」という台詞があるが、この犯人はなんでそんなに映画が好きなのか、しかもデジタルデータが複製されてるのに、わざわざ8ミリのフッテージを復活させるあたり、何というこだわりなのか……。おらあ、てっきりパソコンにデータが残って次作につながるかと思ったよ。最初に家族の幸せな映像を映しておいて、その後でドドーンと惨殺シーンを見せる構成も心憎いよね。そして隠されたエンディング……! なかなかの凝り性だな、おまえ!
それなりに楽しめる一本で、今年ここまでのホラー関連じゃなかなか良かった方かな。
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