”この戦いに運などいらない”『ウインド・リバー』
ジェレミー・レナー主演作!
ワイオミング州のネイティブ・アメリカン居留地で発見された女性の死体……。死体を発見した地元のハンターであるコリーは、かつて死んだ娘の友人だった彼女の死に憤りを感じる。FBIからは新人捜査官のジェーンが派遣されてくるが、捜査は難航し……。
レナーとエリザベス・オルセン、『アベンジャーズ』な二人が共演ということですが、これは思いの外、硬派なサスペンスでありましたね。監督は脚本家として鳴らしたテイラー・シェリダンがデビュー。地勢的に特異な社会状況を描いた寒い『ボーダーライン』であり、その中でも現実のままならなさを描いた『スリー・ビルボード』っぽさもあるが、結局は浅ましくてしようもない田舎もんの心性には『シンプル・プラン』味もあるかな。
chateaudif.hatenadiary.com
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バカ広くてその癖捜査に当たる人間は数人、FBIが来ないとまともな捜査がそもそも開始できない土地なのだが、発見された女の死体はレイプや殴打の痕跡こそあるものの他殺ではなく凍死だったため、殺人事件とは見なされず応援を呼べない……って何じゃそりゃ!
ラスベガスからいきなり派遣されてきたエリザベス・オルセンFBI捜査官、見た目通りの頼りなさで、乳もパンツも大変でこんなFBIがおるかよ……という感じ。事実をありのまま報告したら彼女も呼び戻されてしまうことになっている。まあ地元のこと何も知らないしこんな頼りない私だけど捜査権だけはあるから、報告は握りつぶして一人でも居残って捜査してやるぜ! このレイプ犯を野放しにしたら女が廃る!
地元で野生動物の管理をしているのがジェレミー・レナー。獣撃ち用の凶暴な銃をかつぎ、スノーモービルを駆る地元に精通した男。今回の被害者は、かつて死んだ自分の娘の親友だった子で、両親とも顔なじみ。まあこれは当然、このままにしておくつもりはない。
彼が重々しく語るところの、「雪に全ての痕跡が残っている。辿れば真実が見える」というあまりのシンプルさが今作では肝になる。
結構面白い凸凹コンビなのだが、中身は大真面目かつハードコア。何にもない、雪しかない土地で、苦悩を抱えて生きるとはどういうことなのか。実にシリアスで気が滅入る。若者には仕事もなければ希望もない。だからってレイプが許されるわけでもない。
脚本家が細部まで練って仕上げたものを、自身で具現化したとあって、キャラクターの設定と人物配置、社会問題、舞台となる土地の地勢と環境、全てがストーリーとがっちり噛み合っていて小気味好い。
ここにシリアルキラーでも投入したら、さぞ派手になったことだろうが、この寒々しい土地で凍えた人間のやることは、やっぱり相当に寒く卑小なのであった。
真っ先に疑われた、被害者の付き合ってたらしい男も死体で見つかり、それじゃあ、とばかりにその職場へと赴くオルセン&保安官。一方、別行動のジェレミー・レナーも、死体を結ぶスノーモービルの轍を発見して……。
結構、唐突にフラッシュバックで真相が明らかになってギョッとなったのだが、正直勿体をつけてちょっとずつ明かしていくような内容でもないのだよな。究極レベルのど田舎での、あまりにもくだらない理由での殺人……虚しさしかない……。
ただ、この処理の仕方だと、我々観客はいいとして、登場人物はこの真相を理解できたのであろうか? 捜査権の問題などが結構複雑で、ここで銃撃戦にならなかったらならなかったで、すっとぼけられたら逮捕できたのだろうか? 令状もないし、相当時間を食ったような気がするし、結局皆殺しにして何となく片付いたようになっているが、我々と主役コンビが全てを共有したかというと首をひねる。ただまあ、これもまた「映画の嘘」というやつであり、最後はカタルシスや面白さを追求したということかな。
ラストの銃撃戦、その後の「裁き」なども演出がキレキレで、短いながらに濃厚で、ジェレミー・レナーの丸こい顔に宿る厳しさが良かったですね。運など通用しない、強さだけが問われる世界。生き残った者だけが強い者……さあ、お前はそこで生き残ることができるのか? 余韻の残るラストも素晴らしい。

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