”天を舞う大地”『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』


 奴らがまたも集結!


 再結集し、ヒドラの本拠地を叩いてロキの杖を取り戻したアベンジャーズ。だが、そこで戦ったスカーレット・ウィッチの超能力により、ヒーローたちはそれぞれの過去を呼び覚まされる。宇宙に行き、アベンジャーズの限界を恐れるトニー・スタークは仲間の死のビジョンを見たことで、かねてより進めていた平和維持システムを完成させることを決意。だが、完成したウルトロンは暴走し……。


 毎年マーベル映画やってるせいで、いい加減大作感がまったくなくなってきたなあ、と思っていた今日この頃。今作もあまり超大作という感じがせず、いつものメンツがいつも通り顔合わせして次へつなぎだろ……というゆるいテンション。


 物語は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140503/1399114724)の直後から幕開け。もうすでに全員揃っているアベンジャーズがヒドラの施設を急襲! ワンカットでアクションを見せて勢揃い……のところはやはり燃える。まあCGなので動きがぐねぐねしすぎて、キャップさんのバイクが盾同様磁力で動いてるように見えたけど……。
 さらに早くも「双子」との対決を迎える。「弱いメンバーから狙え!」と言われて誰もが真っ先に顔を思い浮かべたであろうホークアイが、まずやられるあたりで泣いた。


 シールドは崩壊したけど現在建て直し中で、その間、スターク社長が出資して活動しているのだな。スポンサーが社長でリーダーがキャップさん……ということで、まあ金を出す出さないではさすがに揉めないものの、嫌な緊張感がどことなく漂う。今回は社長の嫌さと面倒臭さが全開で、せっかく『アイアンマン3』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130502/1367490315)を通過してきたのにまたトラウマがぶり返し、「宇宙人に仲間がやられる!」という妄想に取り憑かれる。うーん、前回は勝ったから大丈夫じゃないの、主役だし。敵はまた顔が青いだけの存在感のないキャラだし……。
 この序盤、エリザベス・オルセンのスカーレット・ウィッチによって、全員の妄想が喚起され、一人ずつ順番に心の整理をしたり、トラウマを告白したりする。出番の割り振りのためか、いかにも苦しい作劇だな……。


 今回は本当にこの出番と見せ場の割り振りに苦労している感が強く、進行が窮屈極まりない。それでも余裕で2時間超えだしな。


 敵役のウルトロンも、トラウマの宇宙人から地球を守るためにスターク社長が作ってしまったもので、堂々たるマッチポンプ感。あ〜あ、こいつのメンタルの弱さのせいでこんな余計な苦労を……。まるでドラえもんの能力を持ったのび太のようである。そんな社長に対して苛立ちを隠せないキャップさん、『シビル・ウォー』ではいよいよ対決か……。


 続編に向けたネタを突っ込みつつ、今までのシリーズから振ってきたネタも回収しつつ、さらに前からいるキャラに見せ場も用意し、新キャラも続々登場……うーん、何に注目してよいのやら、という感じで、ハルクvsハルクバスターも、この戦いって何か話に関係あるんだっけ?という気がしてしまった。契約の関係か単品映画が作れないらしいハルク絡みは余計に苦労している感じで、ナターシャとのロマンスと言われても、見せ場の必要な人同士を適当にくっつけた感が強い。ジュリー・デルピー登場はなかなかぎょっとさせる配役だったので、次作ではぜひあのままの姿で出てきてスカヨハさんをいびってほしいものだが……。


 『シビル・ウォー』他、この先もまだ何作品も控えてるのがわかってるので、何をやっても緊迫感に欠けていて、30時間ぐらいある映画のやっと真ん中らへんに来たようなテンション。ここを観ておかないと、続きやクライマックスが何が何やらわからなくなるので、しようがないから観ておくか、という感じにまで落ち込んでしまった。
 スターウォーズの予告が冒頭についているが、あれを観たファンの反応動画を思い出した。予告を見ながら、やたらと知ってる固有名詞を連呼するのだが、まさに今作もそのテンションがずっと続く感じ。「アベンジャーズ!」「スカーレットウィッチ!」「ハルクバスター!」「ウルトロン!」「ビジョーン!」。ただしファンならばね……。


 「この扉を開けたら……」のあたりは確かにカッコいいのだが、その前の双子の心情が揺らぐあたりが雑なので、いまいち感動しない。例によって予告編で先に見せられているので、予定調和に強引につなげたな、と感じてしまう気の毒さ。
 クライマックスも見せ場を増やすために敵の数を増やして、個々は別に強くないように設定しているような、とにかく割り振りに必死な作りがつらかったですね。


 まあこれでどうにか次の『シビル・ウォー』を観るための切符は得られたな、ということで良しとしたい。邦題はやっぱり『アイアンマンvsキャプテン・アメリカ』になるのかな。それはそれでいいと思うが。