”息子の思い”『30年後の同窓会』


『30年後の同窓会』予告編

 リンクレイター監督作品!

 バーを営み酒浸りになっていたサルの前に、ベトナム戦争時代に同じ部隊だったドクが現れる。妻を失い、イラク戦争で息子を失ったドクは、サルに息子の遺体の引き取りに同行してほしいと告げる。今や牧師になったもう一人の旧知の仲のミューラーも巻き込み、三人は墓地へと向かうのだが……。

 邦題はこうですが、別に同窓会の話ではありません。学生時代ではなく、ベトナム戦争に従軍した三人の男が再会するお話。
 三人の一人、スティーブ・カレルがイラク戦争で息子を失い、翌日に控えた葬儀について行ってくれ、と、バー経営しているブライアン・クランストンに頼む。割とあっさり引き受けたクランストン、さらにベトナム時代はどこへやら、なぜか牧師になっているというローレンス・フィッシュバーンのところに出かけて、こちらも無理やり連れ出す展開に。フィッシュバーンと言えば『地獄の黙示録』が当然思い起こされるわけで、狙ったキャスティングか。

 リンクレイターと言えば会話劇が持ち味だが、今作はそこまで一発撮り感はないにせよ、三人の掛け合いがずーっと続き、初老感も相まってまったりとしたロードムービーに。しかしなにせ若くして死んだ息子の話なので重苦しくもあるし、でもしゃべってたらちょっと楽しくもあるし……。腫れ物を触るような扱いではなく、すぐに昔の、あのベトナムの頃のノリが蘇ってくる。何もかも昔通りではないが、変わらないものも多い。

 死んだ息子と同輩の若い兵士たちとの交流もあり、ベトナム戦争イラク戦争の対比で、これまた変わったこと、変わらないことを浮かび上がらせる。イラク戦争の若き兵士たちを描いた『ビリー・リンの永遠の1日』という映画があって、その映画と同じテーマにまた別視点からスポットを当てていくような……。
 惨いことが多すぎて、笑ってばかりもいられないが、落ち込んでばかりでもいられない。やることは山ほどあるし、これからも生きていかなければならない。
 また、軍の葬儀を断り遺体を連れ帰る下りで、正直言ってベトナム同様にイラク戦争に意義は見出せないが、では連れ帰ることは息子の意志に沿うことなのか?という問いかけも生まれてくる。父は息子を生前理解できていたのか……?

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 帰りは列車の旅になり、『15時17分、パリ行き』と似たルックになるが、運命の不思議を描いたかの作品に対し、今作は避けようもない「人災」に残されたものはどう対峙するかが描かれる。正反対の話だが、別に否定しあっているわけではないかな。負けに不思議の負けなし、勝ちに不思議の勝ちありというだけで……。