"かつて、戦いがあった"『ユニバーサル・ソルジャー』

ユニバーサル・ソルジャー [Blu-ray]

ユニバーサル・ソルジャー [Blu-ray]

 BDにて鑑賞。


 ベトナム戦争末期……。戦場で精神に異常を来たしたアンドリュー・スコット軍曹は、部下を銃殺し、ベトナムの民間人にも手をかける。その部下であり帰国を間近に控えていた兵士リュック・デブローは彼を阻止するが、自らも撃たれてしまう。そして二十数年後、アメリカ。ダムに立てこもったテロリストを撃滅して人質を助け出した謎の特殊部隊「ユニバーサル・ソルジャー」。その中に、ベトナムで死んだはずのスコットとリュックの姿があった……。


 まさかのBD化(これで今までの三作品、全部BDで揃うよ! 新作も出るよね?)につきさっそく購入してみたのだが、新作映画のような高画質に思わずのけぞった。淀川長治とおすぎも絶賛した、ヴァン・ダムとラングレンの筋肉美が迫真感を伴って蘇った! 作中でも二人はベトナム戦争時代の死から蘇るわけだが、そのことを踏まえると、このソフトこそが『ユニバーサル・ソルジャー』であると言っても過言ではないのではないか!? 初めて観た頃は自分が軽く三十路超えてもシリーズが続いているだなんて想像もしなかったが、さすがはゾンビ映画系譜に連なる作品。ユニソルは死してなお甦り、そして戦い続けるのだ、永久に……!


 ゾンビとか言うと何かグチャグチャしちゃってるイメージだが、二人のアクション俳優の張り詰めた肉体と、その躍動感。まさに筋肉の、筋肉による、筋肉のための映画だ。画面にババンとアップになるヴァン・ダムの鋼鉄のような尻。活動後は冷却しなきゃだめ、というわざわざ裸にするためとしか思えないような設定。すべてはそう、筋肉の、マッスル様のため!


 西村寿行の小説のごとく、「筋肉さま!」と崇めたてまつりかねない勢いであるが、もはやこの第一作自体が、その筋の(この場合の筋は筋肉の筋ね)人にとっては崇拝の対象と化している。『エクスペンダブルズ2』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121028/1351425913)においても、ほとんど絡みはないながらも再共演した二人だが、かの作品の意義は主に80〜90年代アクションを再評価し、神話の位置へと押し上げることであった。『ランボー』『ターミネーター』『ダイ・ハード』『地獄のヒーロー』……それらと同じく、ヴァン・ダムとラングレン双方の代表作として、神話の一翼として語り継ぎたい映画だ。ローランド・エメリッヒ監督作としても外せない一本であるしな。


 底の浅いヒーロー役ばかりやりがちだったドルフが、ついに奇跡の悪役演技に目覚めた一本としても歴史的に重要。ベトナム戦争に囚われた一軍曹の悲哀、それが狂気の殺戮者へと変貌していく姿……。彼もまた戦争に駆り出された挙句、死することさえ許されない犠牲者なのだが、同時に戦争における殺人を良しとする特異な価値観の体現者でもある。狂気に陥った繊細さと、それを塗りつぶすかのような暴虐なマッチョイズムを併せ持つ存在としてのスコット軍曹。それを演じ切ったドルフは素晴らしかった! もっともここからこの路線を爆走するかと期待された彼が次にヒールを演じたのは、かの『JM』であったわけだが……。


 クライマックスは、まさに神々の戦いのような崇高ささえ感じてしまうね。ベトナム戦争の狂気の権化と化したドルフに、故郷へ帰りたいと願う素朴な一人の男として挑むヴァン・ダムの姿に燃え上がるぜ。GO! ヴァンダミング・アクション、GO!


 お話自体はこれで完結していて、続編とは色々と整合性の取れないところも多いのだが、まあ気にせずに『リターン』『リジェネレーション』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100702/1277996888)『殺戮の黙示録』と追いかけて行ってもらいたいと思います!