"POV! FPS! 目指せ新世代アクション"『ユニバーサル・ソルジャー 殺戮の黙示録』


 シリーズ四作目!


 目の前で謎の男たちに妻子を惨殺されたジョン。昏睡から目覚めた時、すでに9ヶ月が経過していた。妻子を殺した男、リュック・デブローを追うジョンだが、昏睡していたはずの9ヶ月の間に、自分が足取りを残していることを知る。失われた記憶? それとも……。一方、郊外の洞窟に密かに集結する集団があった。かつての初期型「ユニソル」リュック・デブローとアンドリュー・スコットによって率いられる、ユニソルの脱走兵たちであった。


 うーむ、こないだ一作目(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121114/1352886917)を見返したとこなので、もうリュック・デブローというキャラはまったく別人のようにしか見えないが、一作目と『ザ・リターン』と、『リジェネレーション』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100702/1277996888)と『殺戮の黙示録』のリュックは、別個体と認識しちゃっていいよね。前作では旧型と新型の戦い、がテーマだったが、今回はそちらのラストで呈示されたクローン化がネタ。ドルフさんやアルロフスキーも再生しているが、たぶん一から作り出されてるので、この二人も新型準拠の性能になっているんではないか。


 冒頭から主人公の妻子の惨殺シーンで幕を開けるが、POVのような主観映像で構成していてなかなか面白い。主人公の行動のキーポイントとなる「記憶」の部分で、妻子を殺したのはヴァン・ダム! ストーリーを引っ張る要素としても伏線としても、文句無しの幕開け。前作までのリュックならそんなことはしないはずだし、これは何か裏があるんだろうな、と普通は見てたら思うところだが、実は「筋肉映画だから、また無理やりな設定で悪役に仕立て上げてるんじゃないの」と疑いの気持ちも抱いてしまいました、すいません!


 これだけなぜかプリントでの上映だったので驚いたが、今作もビデオムービーということでよりハードコア路線。R-18指定は伊達じゃなく、血みどろの人間解体シーンが連発! ユニソルは不死身の肉体を持っているので、頭部を破壊するぐらいしないと死なない……って、ほぼゾンビ映画ですな。「好きなゾンビ映画は?」と聞かれて「『ユニバーサル・ソルジャー』です!」と答えるのは半分ギャグだったわけだが、今作ではまさにゾンビ映画的演出も盛り込まれている。
 主演のスコット・アドキンス、動きも切れていて、その「ゾンビ」を破壊するためにワンカット内で複数回攻撃できる身体能力を見せつける。前作での格闘シーンは寝かせて動きを封じ、打撃や関節技で仕留めるMMA風味だったが、今回はより人体破壊を極めるために、サバイバル武器格闘路線へと歩を進めた。銃器、鈍器、刃物を駆使して敵を容赦無く確実に仕留めるスタイル。これは先日公開された『ザ・レイド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121102/1351834330)とも共通するところだね。


 クライマックスは狭い洞窟内でカメラを縦横無尽に動かしながら、出てくるユニソルを一人一人、あらゆる方法で倒していくのだが、冒頭のPOVと合わせて撮影が凝ってる。FPSも意識しているのかな。今回はクレジットされていないが、監督ジョン・ハイアムズの父親ピーター・ハイアムズは前作でも撮影に参加していたし、そのあたりの影響もあるのかもしれない。
 このシーン、前作と違う格闘スタイルを取り入れつつ、カンフーっぽいムーブやMMA的な動きも若干残していて、さらにちょっぴりだがガン=カタまでやっている。いや……この監督、オタクだね……。『地獄の黙示録』への目配せもあるし、アクションや戦争映画好きなんだなあ。ただ、各演出それぞれはいいんだけど、少々継ぎ接ぎ的な感じも受けたし、中盤の別人云々のところがかなりかったるく、ダンサーの女が全然キャラ立ってなかったりと、ストーリー展開が上手くない感じも受けた。ただ、それは低予算で人物や場面転換などを豊富に使えなかったりで、もう少し語るべきだった反乱したユニソル側の物語を描けなかったせいかもしらんなあ。そろそろ、お父さんの代表作……そう『タイムコップ』(笑)ぐらいのバジェットで、一本撮らせてあげてみたい気もするのであった。


 そんなこんなで、これはもう若手監督ジョン・ハイアムズと、次代のアクション・スターであるスコット・アドキンスの映画なんですねえ。ヴァン・ダムはそこに闘魂とシリーズを継承する役回り、ドルフさんも箔をつけるための重し的なポジション。ドルフさん、最初にアルロフスキーに勝ったのはいいが、次の登場の軍曹姿はシリーズ一作目よりもなぜか『リトル・トーキョー殺人課』を思わせるコスプレっぽさであった……。

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