"その肉屋の正体は"『ハード・ソルジャー 炎の奪還』
ヴァン・ダム映画が劇場公開!
元外人部隊の兵士だったゴールは、その技術を活かし、肉屋を営みながら裏では非合法に犯罪組織と戦ってきていた。だが、国内に蔓延る人身売買組織から、救出を依頼された子供を助け出したものの、巻き添えで他の子供を死なせてしまう。良心の呵責に悩む彼に、新たな依頼が持ちかけられる。それはやはり誘拐された14歳の少女を救うことだった……。
トキメ筋肉祭り、というなんだかわからんけど素晴らしいじゃないか、という企画名がついたヴァン・ダム二本立て。『ハード・ターゲット』と『ユニバーサル・ソルジャー』を足して二で割ったような安直な邦題が寒い。『6 BULLETS』という原題で、これは人身売買されてる子供の命の値段が弾丸六発分ぐらいの価値でしかない、という意味だそうである。その割には具体的にいくらやねん、という話は一ミリも出て来なかったりするあたり、ここは悪い意味で筋肉映画であった。まあそこらへんが逆に愛おしいわけですがね、もちろん!
『エクスペンダブルズ2』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121028/1351425913)に熱狂するのもいいけど、こういう単独主演作、それも今現在のを追うことがやっぱり大事なんですよ!と力説しつつ、あまりに面白くないのでヘナヘナになる、というのがよくあるパターンなんですが、さて今作は?
デジタル上映だけど、作品自体もビデオムービーだそう。果たして、描写は割とハードコア路線で、Vシネっぽい。元外人部隊という設定は『ライオンハート』などヴァン・ダムシーンではおなじみだが、今回は脱走兵ではなくて現役を全うした模様。表向きの職業は肉屋だが、あまり真面目にやってるようには見えない。
冒頭のミッションでマフィアを皆殺しにして車をドッカンドッカン爆発させながら、首尾よく子供を助け出した、と思ったら、その爆発で他の少女が死んでいたというヘビーな設定。「こまけえことはいいんだよ」というかつてのアクション映画のセルフパロディのような香りが漂う。それでヴァン・ダムが酒浸りになってしまい、うーむ、『その男、ヴァン・ダム』ほどではないがそういうアクション映画に携わっていた者として何か自己言及的、自虐的な雰囲気が!
また別の少女が誘拐されたことで、悪夢を払拭するために再び立ち上がる。今回は元特殊部隊ということで、ナイフなども多用するハードコア武器格闘路線。ちょこちょこと回し蹴りも飛び出させつつ、基本は最短距離で相手を仕留めるアクションが展開される。トラップや狙撃ライフルなども多用し、元兵士を徹底アピール。それなのに呼び名は「ブッチャー」ということで、シリーズ化してもいいかも、というぐらいにキャラ立ちさせている。
「ブッチャーめ、完全武装してやがる!」
……なんていう説明台詞もいいですね。
まあそうは言っても、別にドルフでも「セガールに取られた!」でもいいんじゃない、というキャラではあるのだが、ここで息子ちゃんの活躍が輝く。作中で肉屋の息子の役人やってる青年、クリストファー・ヴァン・ダム、じゃなくてクリストファー・ヴァン・ヴァーレンバーグ! ヴァン・ダム実の息子である。かの『ディレイルド 暴走超特急』では、幼い身で病気にかかりつつも回し蹴りを炸裂させていたクリストファー君であるが、今回は文人タイプ。酒浸りの父を気遣い仕事を持ち込む役。しかし顔は明らかに同じ遺伝子を類推させるものの、垂れ目で全然イケメンでも精悍でもないあたりが面白いね。
もうちょっと親子バディものっぽくして、ダブル主演的にしたらそれがカラーになるし、シリーズ化しちゃってもいいんじゃないかなあ。
年相応に枯れてきたヴァン・ダムが目指す、いつもと同じようでいてそうでないもの。次作にも期待したい。
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