”この名前でわたしを呼べ”『レディ・バード』


映画『レディ・バード』予告

 グレタ・ガーウィグ監督作!

 故郷サクラメントで高三になったクリスティン、自称”レディ・バード”は、東部の大学に行きたいが母に許してもらえず、車から飛び降りる暴挙に出る。骨折した中で母に黙って大学の試験を受けようとするクリスティンだが……。

 「もうちょい若ければ自分で演じてた自伝的作品」で、グレタ・ガーウィグ自身の高校時代を描いた映画。演ずるは何の役をやってもいつもさまよっている「永遠の放浪者」ことシアーシャ・ローナン。青春時代でパッションを持て余しているのだが、どこかしらふてぶてしいほどに落ち着いた一面もあるこのキャラがずばりとはまっていますね。もちろんガーウィグ自身に似せている感もあり。
 タイトルのレディ・バードは、自分で名付けた名前……ずばり自称であり、『フォックス・キャッチャー』のゴールデン・イーグルを思い出して思わず赤面。これが……若さか……。親にもレディ・バードと呼ばせてて、すごい自意識だ!
 母親への反発がベースにありつつも、所詮高校生でまだ何者でもなく、どこへ行きたいのか、何がしたいのかも全然決まっていない。だから名前だけでもレディ・バードなんだよ、と、何かになりたくて名乗っている感。そこまで自覚していないかもだが……。存在感なくなりつつある父と、娘へのコントロールが強い母、というのは『ローラーガールズ・ダイアリー』でもそうだったが、ガールズムービーあるある。

chateaudif.hatenadiary.com

 しかし我が強いせいか、あまりスクールカーストなどは眼中にない感じで、フラフラしつつも部活やパーティ、恋愛など、大胆に色んなことに手を出すのが面白い。最近は『ブレックファスト・クラブ』フォロワー映画が多い印象だったが、ひさしぶりに『ヘザース』案件(しかも最初からラストの境地)という感じで清々しいですね。同級生との友情もよし。ジョナ・ヒルの妹なんだ……。

 初体験をはよ済ませたい、というベタな理由もあって二人の彼氏と付き合うが、最初のダニー君は実はゲイということが判明、いい友達に戻る。こちらを演じてるのが『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『スリー・ビルボード』のルーカス・ヘッジス君。割合儲け役。
 次がバンドマン(!)のティモシー・シャラメで、ご存知『君の名前で僕を呼んで』と違ってこちらではゲイ役にあらず。まあこっちはイケメンだが実にチャラくて空疎な感じで、逆にリアルに感じられるところ。

chateaudif.hatenadiary.com
chateaudif.hatenadiary.com

 女優、脚本、監督とどんどんマルチに活躍してきているグレタ・ガーウィグの高校時代だから、どんな才気煥発の極みぶりを発揮しているのか、と思いきや、演技に対して格別やる気があるわけでもなく目立ちもしてないのが印象的。この女が将来アカデミー賞にノミネートされるとか、誰も思わないよ! やっぱりどんな人間でも可能性を信じて見守らないとダメだな……。

chateaudif.hatenadiary.com

 「I am Spider-man!」となるヒーローものの逆で、レディ・バードを捨てて本名に目覚めるあたりは大変清々しいですね。しかし酔っ払って速攻でやらかしてたりして、大学行ってもまだまだフラフラ期間は続きそうなので心配になる。まあガーウィグさんも今は名を挙げたけど別に落ち着いてなくて、知人から見たら危なっかしい人のままだったりするのかもしれないな……。

フランシス・ハ(字幕版)

フランシス・ハ(字幕版)