”闇の中で見たもの”『ダーク・プレイス』
シャリーズ・セロン主演作!
1985年、母親と娘二人が何者かに惨殺される。家中に書かれた悪魔崇拝者の文字から、悪魔崇拝にかぶれていた15歳の長男ベンが逮捕され、生き残った末娘リビーも彼が犯人と証言する。そして28年の月日が流れた。定職もなく孤独な日々を送っていたリビーの元に、「殺人クラブ」と名乗るグループから講演の依頼が来て……。
『ゴーン・ガール』の原作者の書いたサスペンス。書かれたのは一つ前で、あれが当たったから急遽映画化された格好か。主人公セロン様は、かつての一家惨殺事件の生き残り。少女時代から寄付金と自伝の印税で食っていたが、まったく仕事をしていなかったために三十も半ばを過ぎて文無しに……。
そこへ現れたクリーニング屋経営のニコラス・ホルト。未解決事件のマニアが集まるサークルをやってて、そこで謝礼出すから話をしてくれ、と言われる。金だけ貰って帰ろうとする外道なセロン様だが、しぶしぶながら捜査に関わり、有罪判決食らって28年服役してる兄コリー・ストールとも再会……。
まあ兄ちゃんが犯人じゃない、というのは最初からだいたいわかってるわけである。母親と妹二人が死んで、服役しているものの何事か隠している……。当時の彼はファッション感覚ながらゴスで悪魔崇拝ごっこをしてたので、裁判では危ないやつと決めつけられて有罪となった、というあたりは、実話ベースの『デビルズ・ノット』でもあった話。あっ、そう言えばあの事件で逮捕された彼は……ということに気づくと、今作でこの兄ちゃんが何をかばっているのかもだいたいわかってしまうのではないか。
さて、セロン様が手がかりと記憶をたどりながら、事件の謎を追う……のだけれど、現在とほぼ同時進行で入る過去のシーンが、回想であるのか誰かの語りであるのか単に過去の映像であるのか不明瞭。幼かった主人公の記憶なら少女視点のみで構成しなければならないし、兄ちゃんの視点なら、そこには当然、隠さなければならないことがあるのだから嘘が潜むはず……。でも実際の映像では「犯人」がしっかり登場してるのだよな……。そのせいで、主人公が記憶と情報をより合わせて真相にたどりつく、という過程が全然成立してないのである。
これはミステリとしては致命的にダメなんだが、じゃあ他の要素はいいかというとどうにも見所がない。主人公の失われた人生を取り戻す……という話にしても、再度事件に関わった動機が金に困ったからだからな……。死んだお母さんも生活に困ってたのが段々と明らかになるので、そこに生まれる共感……って、そりゃあだめだ。
さすがのシャリーズ・セロンもニコラス・ホルトも演技の見せ所がなく、非常にぼんやりとした雰囲気に……。
そんな中、金持ちビッチの少女役やったクロエちゃんが役名「ディオンドラ」で、重要な役で気を吐く。この名前、いかにもゴージャスビッチっぽいな。少女役と言いつつ、過去パートの兄ちゃんタイ・シェリダン君より年上という設定で、クロエもそんな年頃になったのね……。
真相は一応二段構えになっているが、いや、この展開どっちも無理ありすぎだろ……というもので、しかも明らかになったから何がどうということが全然ないのにも驚く。やっぱり原作がぼんやりしすぎなのか。監督は『サラの鍵』の人で、こういう過去掘り起こしものをやるのは得意そうなのだが、ミステリのセンスがなかったかな。
同じ原作者の『ゴーンガール』を監督したフィンチャーは、『ドラゴン・タトゥーの女』で真相究明の過程をタイトに描いてたので、やっぱり腕前次第ということであろうか。今作をフィンチャーが監督してれば、もう少し見られるものになっていた?
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