”うちは、ぼんやりしとるけん”『たかが世界の終わり』
グザヴィエ・ドラン監督作!
12年ぶりに故郷の生家へと帰って来たルイ。帰郷の目的は、自らの死期が迫っていることを家族に告げるため……。浮かれる母、そっけない兄、幼い頃しか知らない妹、初対面の兄嫁。ぎこちなく会話を交わしながら機会をうかがうルイだったが……。
今回は主演してない天才ドラン。代わりの主演は『サンローラン』でもキレッキレだったギャスパー・ウリエル! やたらとドランに寄せたメイクと演技で、顎が割れてるドランに見えるよ。さらにヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥと豪華キャスト。オリジナルは戯曲で、その映画化ということ。
死期が迫っているらしい次男が、長い間疎遠だった生家へと帰り、母、兄、義姉、妹と対面。兄嫁と会うのは初。兄の子供は嫁実家に預けられていて不在。
母親と、子供の頃から会ってなかったレア妹ははしゃぎ気味なのだが、ヴァンサン兄が大変不機嫌で、間に立って困惑気味なマリコ兄嫁。前半はこのマリコの「家族」だけにわかっている空気の中に入り込めてない感じが最高ですね。
場をもたせるために、ウリエルに子供の写真を見せるマリコ。説明をしてたらヴァンサンが突然怒り出す。「そんな話しても弟が迷惑なだけに決まってるだろ!」 いやあ、意味がわからない。まあ実際、そんなに面白い話ではないかもしれないが、お互い普通に話を合わせているというのに。「どうしてそういうこというの……」と戸惑うマリコ。
その後も、姑の話で笑ってたら、またヴァンサンが切れる! 「その話、もう百回は聞いたよ!」 そう言えばうちも家族でつい同じ話をしてたりして、「この話、前にもしたっけ?」と言ったら母親が「落語みたいなもんで、何回聞いてもおもろいもんはおもろいねん」と言っていたな……。
おっとりしてて、空気読むの半分、天然半分と言った風情のマリコが実に好演で、今にも「うちは、ぼんやりしとるけん」とか言い出しそうで怖い。この順応っぷりと、それでもなお家族間の深いところは読めない感じが、まさにすずさん。「嫁」はどこの国にもいるのだ! 『マリアンヌ』の凄腕とは対極のキャラで、非常に良い演技でありました。
chateaudif.hatenadiary.com
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後半はヴァンサン・カッセルの独壇場で、弟と全然話の合わない兄像を大熱演。都会でシャレオツな仕事についているゲイの弟が、もう何から何まで気に入らない。「カフェ」という単語を聞いただけでブチ切れるレベル。『トム・アット・ザ・ファーム』でもそうだったが、ドランにとって「兄」というのは相当やっかいなもののようだな……。傷ついた拳から、暴力的なのか自傷的なのか(まあこの二つは同じものなんだけど)が伺え、恐ろしくもあるし可哀想でもあり……(ベスト・ハズバンド度:0点)。
対して妹のレアちゃんは、都会っ子になったウリエルが羨ましく、結構懐いてくる。ちょっとハイすぎる感じがつらいのだが、今回は妹キャラを貫徹し、いつものレア先輩キャラを封印。むしろ後輩、いや妹。
お話はこの家族間の人間関係を会話劇でじっくり見せ、ほぼそれのみ。三幕構成の二幕目に入った瞬間に終わるような感じなのだが、これはこれで一つの結論だな……。正直、帰る前からこうなるのをわかってたけれど、実際帰ったらやっぱりそうだったよ、と言うような……。
観ている間はかったるいところも多いが、後から考えているとじわじわくる、そんな感じの映画でした。まあ演技合戦だけでも十分楽しめますよ。
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