”血族の神話”『血観音』


OAFF2018『血観音 / The Bold, The Corrupt and The Beautiful』予告編 Trailer

 大阪アジアン映画祭2018にて。

 日本統治時代の名残をとどめる台湾の旧家、棠家。古物商である棠夫人の裏の顔は、台湾政界のフィクサーであり、様々な裏の仕事を手がけていた。巨大な権力を操る彼女は、二人の娘に家を継がせようとする。だが、長女が反発する中、謎の一家惨殺事件が起き……。

 ヤン・ヤーチェ監督作! 『GF*BF』に続く監督作だが、全然タッチが違いますよ。昨年来日したカラ・ワイさんを主演に、三世代の女性を描く物語。正直、去年のアクション引退作よりもはるかに締まった内容で、今年来日してほしかったような……。

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 名家の当主にして台湾政財界でもフィクサー役を務めるのがカラ・ワイさんのキャラクター。あちこちに人脈を作り、政治家たちをある時はおだて、ある時はなだめ、資金を用意してもてなして……とまあ、気苦労の方が多そうな感じだが、それゆえに彼らの尻尾を握り、絶大な力をいつのまにか得ている。カラ・ワイさんは顔自体の作りは割と怖いんだけど、愛嬌もあるし逆に人が良さげな雰囲気もあるのよね。その彼女がホステス的に政治家に取り入ってくあたりが恐ろしいですよ。

 その娘役のウー・クーシーは、母親とその家業を嫌っていて、歳の離れた妹役のヴィッキー・チェンはまだ未成年で、母と姉の間でその将来を決めかねている状態。危ういパワーバランスが保たれていたが、政界の絡む一家惨殺事件が起きたことでその様相が一変する。
韓国ノワールほどの直截的な暴力性はないが、生暖かい体温が感じられる、まとわりつくような不気味な恐怖感を煽ってくる。そのいたたまれなさに対し、ここで生きて行くしかなくなった母と、そうなるには弱すぎる姉と、二つの行く末を少女は見続ける……。実は公然の秘密という奴で、母は実は「祖母」であり姉こそが「母」であるという事実が明かされる。必然的に「娘」の行く末もまた二人が暗示しているわけで……。三世代の女性の物語だが、同じ人物の別の道を歩んだ場合、と言えるかもしれないね。

 「祖母」「母」「娘」という体裁を崩したがために、ウー・クーシー演ずる長女は後継足り得ないのだが、代わりとなるヴィッキー・チェンもまた同じように愛を捨てなければならない。そうして「家」に留まり、裏稼業に手を染めるのが貴女のためなのだ、と囁かれ……。
 金や権力に焦がれ、その中でゲームをし続けてのし上がって行くカラ・ワイさんのキャラは、その中でどんどん空っぽの邪悪と化し、娘や孫にも同じ道を歩ませようとする。その最後は、というとこれが完全に『インファナル・アフェア』案件で、これは参りましたね。

 アジアン映画祭常連になりそうなこの監督、大変腕があるなあと思いました。また新作頼むよ!