”ネズミたちの寓話”『ショックウェイブ 爆弾処理班』


「SHOCK WAVEショック ウェイブ 爆弾処理班」予告編

 ハーマン・ヤウ監督作!

 香港警察爆発物処理局のチョンを襲う、爆弾テロ……。一年半前、チョンは潜入捜査の末にある犯罪組織を壊滅させていたが、リーダーのホンは取り逃がしていた。収監された弟を助け出すため、チョンへの復讐のため、ホンは次々と非道な手口で爆破を仕掛けて行く……。

 大日本帝国軍の細菌実験を描いたアンソニー・ウォンとの再タッグ作は、どうにも日本公開はありえなさそうであるなあ、と感じる今日この頃、代わりにやってきたのはアンディ・ラウ主演の爆弾解体ものであります。

chateaudif.hatenadiary.com
chateaudif.hatenadiary.com

 チアン・ウェンの弟さんという、兄ちゃんに顔の似た人が率いる犯罪者集団の一人であるアンディ、実は爆弾に詳しい潜入捜査官で、逃走するカーチェイスの最中、正体を現し彼らを逮捕! しかし主犯であるチアン・ウーを取り逃がす。
 いやー、このチェイスからしてすでに防犯カメラの映像をつなぐハーマン・ヤウ印で堪能しましたね。香港映画らしく話運びは強引の極みなのだが、一瞬の淀みもなく力技の編集でつないでいく、まさに職人芸。またなぜかカメラワークも変で、そこをそう撮るの!?と思いつつ、それが実に力のあるいい絵になっているのだなあ。全編、面白いカットしかない。と言いつつ、お話含みではところどころ違和感ありありのカットもあるが……。
 一番面白かったのが、アンディがキッチンで卵を焼くシーン。斜め上からの妙に不安を煽るアングル、もう火はついているのにずーっとシューッって鳴ってる効果音……なんだこれ……今にもガス爆発が起きそうだが、そんなシーンじゃないよな……。

 ヒロインは教師役でソン・ジアさん。事件の半年後にアンディと恋に落ち、さらに一年後、という感じでポンポン時系列が先送りされますよ。必要な情報なんで抑えといてください、と言わんばかりの情緒のなさであるな。
 しかし今作は製作アンディ・ラウなので、こんな恋愛パートも一切手を抜きません! 訳のわからないぐらいに年齢不詳な女優も多い中国だが、このヒロイン役の人は36歳ということで、まあまあ年相応に見える……が、アンディは20歳ぐらい年上だがな! そもそもアンディ、落馬で大怪我したんじゃなかったのか……あれは誤報だったのかというぐらいに精力的に動き回っていて、めっちゃ走ってる。ほぼアイドル映画というぐらいに見せ場をさらうのだが、お話上では散々に痛めつけられているので、美味しい感じもあまりしないのもバランスかな。

 数年前に香港旅行したのだが、その時にトンネル通っておいて良かったあ。今作の後半は3本あるトンネルの一本が占拠され、通行していた車が大量に人質に取られる! 前半は細かい爆弾をアンディが解除して回るが、この後半はずーっとクライマックスというテンションで、チアン・ウーさんがどんどん人質を惨殺していく。いや、まだるっこしい映画だと、なんだかんだで人質が無傷だったりしてこの人たちは本当に凶悪犯なの、と思うことがよくあるが、今作にそんな妥協はない。チアン・ウーさんは「うん、ウェンじゃなくていい! 弟で充分!」と思ってしまうぐらい良くて(こらこら)、今後も見たいと思いましたね。

 引退したお父さんとその友達と共に、トンネルの中にいた現役警察官のベビージョン・チョイ君、女子供を解放しろ、というアンディ・ラウの要求を嘲笑うかのように、成人男子のみ解放されることになり、引っ張り出される。いやー、彼は弱そうだから子供扱いされててっきり残されるんじゃないかと思ったよ。なよなよしてて、いかにも『29歳問題』とかに出てそうだからな……しかし、うっかり警官の身分証明を落としてしまい身バレ!

chateaudif.hatenadiary.com

 爆弾をくくりつけられ、包囲網の前に立たされるべビジョン君、いやいや、アンディ・ラウとの初共演がすごいシーンになったな……。さっそく爆弾の構造を見抜き、難しいがこことこことここを切っていけば大丈夫、と判断するアンディ。だが、チアン・ウーさんがリモコンで爆弾を起爆! 2分から! 1分半の時点で、「警官の心得とは!」と急に語り出すアンディ。うわっ、諦めやがった!とすぐにわかり、べビジョンもそれを復唱! 警官として……。
 「警官は周囲を巻き込んではならない!」と言うアンディだが、爆弾巻きつけられる警官がそうそういるとは思えんが……。残り10秒を切ったところで、背中を見せてダッシュするアンディ!

 いやはや、ひどすぎて素晴らしい名シーンでしたね。この後、トンネルの入り口が映るたびに、バラバラになったべビジョン君の真っ赤な肉片もしつこくしつこく映るのが最高でありますよ。

 この後も地獄のような展開が続き、結局、強行突入してまずまず犠牲者も出るのだが、逆にこれがリアルという気がするね。交渉役なのに、現場を離脱してヒロインを助けに行ってるアンディの面白ラブシーンや、宗教にかぶれて改心してる弟君の末路など、笑いどころがぎっしり。人体損壊、人の命の安さをたっぷりと堪能できますね。
 爆弾解体でべビジョンを見殺しにしたけじめを取り、作中で語った警官としての勇気を体現した上で、自ら歌う主題歌で締めるアンディのやり切りぶりも素晴らしい。いやあ、香港映画って、本当にいいものですね。

私の少女時代(字幕版)

私の少女時代(字幕版)