”鬼畜の園へ”『八仙飯店之人肉饅頭』
アンソニー・ウォン主演作!
マカオの海辺で、腐敗しバラバラになった人間の手足が発見される。切断面から殺人の疑いありと見たマカオ警察は捜査に動き出す。やがて、辛うじて取れた指紋から行方不明の老婆を割り出した警察は、彼女の親族が経営する食堂「八仙飯店」を訪ねる。だが、そこはウォンという男が一人店主に収まり、店の持ち主だったはずの一家は行方をくらませていた……。
以前、『エボラ・シンドローム』『タクシーハンター』とまとめて公開されてましたが、今回は単独で、某劇場の企画上映にて上映。前回は観られなかったのでありがたい限りであります。
昔、VHSで観たはずだが、当時はアンソニー・ウォンのこともよく知らなかったな……。今回の上映はBDだが、販売用DVDのマスターをアップコンバートしたものか、画質は大したことなかった。テレビで観るには充分だが、劇場では物足りないレベル。さらに、スタンダード画面を上下カットしたか、いわゆる「貧乏ビスタ」になっていて、登場人物の頭が切れる箇所もチラホラ……。まあ最高の環境とは言い難かったですね。
が、やっぱり映画は面白く、ジョニー・トー映画や『インファナル・アフェア』で渋さが認知される以前からアンソニー・ウォンはすごい! 狂気じみた目の血走り様、非人間性を感じさせる顔芸……。
血や内臓に一切嫌悪がなく、人体を解体することに何のためらいもないこのキャラクターは、当然、女子供であろうが容赦なく切り刻み、バラバラにし、ミンチへと加工していくのである。
バックボーンなど一切明かされず、非常に怪物的に描かれているのだが、かといって行動パターンが一貫しないわけでもなく、全てにおいて自己中心的な性格でもあるのだな。自由な間は自分だけは大丈夫と思っているし、お前の物は俺の物精神が炸裂する。逮捕されれば無実、無実、無実と言い張り……。
舞台がマカオということで、死刑制度がなかったり、香港への渡航が制限されたり、両警察の軋轢もあったりと、この地ならではの展開も多数あり。ハーマン・ヤウ監督はゆるゆるのマカオ警察をコミカルに描きつつ、惨殺シーンにもそこはかとないユーモアを漂わす。かなり誇張はされているが、一応は実話ベースということで、非常に救いなく後味悪く、司法や警察の限界までも浮かび上がる展開にはなかなかの深みがあり、一筋縄ではいかない映画ですね。
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