”深夜営業にご用心”『荒らし』
アジアン映画祭六本目!
太った店長のコンビニで働き始めたピン。だが、深夜に次々とやってくる一癖ある客たちは皆、不穏な動きを見せる。サンドイッチとハサミを買おうとした老人と店長がもめたのをきっかけに、狂乱の一夜が幕を開ける……!
ラム・シュー主演作? 香港のコンビニを舞台にした密室劇。飛び込みでバイトを始めたコンビニに、なぜか千客万来。強盗や爆弾魔が次々と訪れ、脅されて監禁されてしまうことに……。
先の『香港はもう明日』と打って変わって、今作は同じ香港でもやや中心街を離れた辺りが舞台。主人公の暮らすマンションや、お話の中心となるコンビニも、観光地とは少しずれたところにある感じですね。より市井の人を描く狙いがある。
街中を舞台にした不条理群像劇と言うと、つい昨年に『ミッドナイト・アフター』を観たところで、奇しくも同じようにラム・シューが出て同じように血みどろの展開になり、同じように……おっとこれは秘密。まあ日本公開はないであろう映画だが……。
登場人物は全員、箸にも棒にもかからない人間ばかりで、皆が皆、人生に行き詰まっている。それぞれに一念発起して行き着いた先がそもそも場末のコンビニで、なんとも言えない閉塞感がつきまとう。主人公は割合何も考えていない人間だが、それでも同じ閉塞感を感じていて、コンビニの商品に針を刺したりつまみ食いして憂さ晴らし。こりゃあひどい。人間のクズだな……。
そんな閉塞感に包まれた人間ばかりの香港の現状を表現する!ということだが、だいたい台詞で説明しちゃうので、『ミッドナイト・アフター』よりわかりやすい案件。またも香港のスターの代表格としてアンディ・ラウの名前が出てきて、彼がいつまでもトップにいることこそが閉塞の象徴だ!と大熱弁!
このクラスの作品がなかなか日本には入ってこないのだが、確かに日本でやるのは辛気臭いチャンバラものか、アンディ・ラウ、トニー・レオンばかり。こういった香港映画らしい不条理ギャグとエログロのオンパレードを観るのは、逆に新鮮なような状況である。あるいは本国でもなかなか作りにくくなっているとしたら、それは確かに由々しきことであるな。
ただまあ、アンディ・ラウを打倒だ!と言われても、え? これで?と思うのもまた事実……。
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