”もうギリギリです”『77回、彼氏をゆるす』


《原諒他77次》預告片正式曝光

 大阪アジアン映画祭2017、六本目!

 十年の恋人関係を解消すると言いだしたエヴァ。些細なことが原因で……と思っていたアダムだが、エヴァの怒りは深く、家を出る際に残していったノートにその真意が記されていた。自分がして来たことがどれだけ彼女を傷つけていたか気づいたアダムは……。

 さて、まあ好みはあれど、今年はここまでの五本がどうも低調だな……と思っていましたが、ここで登場、名匠ハーマン・ヤウ。昨年は『八仙飯店之人肉饅頭』も劇場で観られて最高でしたね。アジアン映画祭は一昨年の『セーラ』以来、二年ぶり。

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 『セーラ』に続き主演はツインズの丸顔の方ことシャーリーン・チョイ。どんな話かと思っておったら、今回はまさかの恋愛ものだ!
 十年越しで続いた彼氏との関係に、ついに終止符を打ったヒロインは、彼との関係を密かにノートにしたためていた……。それが「77回」ノート。ゲスト出演、ツインズの元相方ジリアン・チョンがやっている創作雑貨屋という、あからさまに怪しい店なんだけど、そこで買ったのがこれ。恋人のやらかしたことを書き綴り、77回までは書くことによって飲み込み、許すというコンセプト。7回は気が短すぎ、7×70は優しすぎ、77回ぐらいがちょうどいい、というわかったようなわからんような理屈が書いてあるが、まあ一つの目安を作り記録することによって、関係性を見つめ直していこう、ということかな。

 十年の関係を解消するにあたり、そのノートをわざと置き忘れていった彼女。男が読み返すと……すでに76回がビッシリだああああああ! そして77回目は破り取られている。これ、『セーラ』と同じく時系列をかなりいじっているので、別れた後も葛藤しているかのように思えるが、もうすでに77アウト、チェンジ!なのな。遅ればせながら、そのノートを読んだ男が、自分の愛想を尽かされた経緯に気づく……。
 最初は観客にもそこまで怒ってる理由がわからないのだが、アウトっぷりが段々と明らかになり、さらに捨てられたショックで即、次の女を連れ込んでたりしてしまう男……。でも未練はタラタラ。
 双方の揺れ動く感情をそのまま撮って放り出し、見ているこちらにも恋愛観を問いかけてくる。さあ、77回は多いですか? 少ないですか? その内訳はこんな感じですが……? パートナーのいる人は、相手のノートが何回目ぐらいまで言ってるか考えて見てもいいんじゃないかな? 僕は……まあ10回ぐらいなんじゃないかと思うんですが……。

 男が弁護士を目指しているのを放り出し、「本当にやりたいこと」としてキックボクシングのインストラクターをやってるあたり、それ自体は別におかしな職業でも何でもないのにダメ男の緩い選択みたいに扱われていて悲しい! しかも会員と浮気してトレーニング中に殴られる! それを切々と撮り上げるハーマン・ヤウの変なカメラワーク。これは『人肉饅頭』でもやってたが……。

 『ミセスK』のカラ・ワイさんもシャーリーン・チョイの母親役で出演していて、こちらはまあ結婚生活を乗り切ってきた人なので、妙に男に甘かったりするのも面白い。

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 主人公のラストの選択も含め、その是非どうこうではなく、自らの恋愛やパートナー関係に投影して見たい映画ですね。さすがはハーマン・ヤウという、引き締まった一本で堪能しました。