『告白』湊かなえ

告白

告白

 ある学校で起きた、教師の娘である少女の死。母である女教師は、自らが担任するクラスで一つの告白をする。私の娘を殺した人間が、このクラスにいる……。


 章ごとに視点が変わり、多数の観点から、事件の複雑な様相が明らかにな……らない……。なんじゃこりゃ? 第一章の『聖職者』だけはまあまあ読めたが、あとはただの付け足しだよなあ。日記だったり独白だったり、ネットにアップされた手記だったりと統一性もないし、特にネットにアップされた……という部分はまったくのご都合主義。
 各章で語られる内容も、それ自体は視点が変わっただけで、意外性のある何かが提示されるわけではなく、単なる繰り返しでしかない。構成という点では、目新しくもなんともない。では、何をそんな繰り返し書きたいのかと言うと、やはり愚かで手前勝手な人間達……なんだろうなあ。
 しかしながら、人間を書きたいならば、それこそこういうゲーム感覚の小説を書くべきではないだろう。少年犯罪ひとつの描き方にしろ、もう少し真摯に取り組むべき。ありえないと承知でミステリ小説したいなら、もっと練り込んでくれ、と言いたい。途中で真面目に読むのが馬鹿馬鹿しくなり、あとは流し読みした。


 これが売れるってのは、やっぱり少年二人に象徴される自分とは相容れない「異物」「悪」の破滅に強烈なカタルシスを感じるから、なのか?
 「少年犯罪」「いじめ」「幼女殺し」「エイズ」「爆弾」、刺激的なキーワードが満載で結構なことである(後半は「これまで引っ張り出して来るのか」という失笑に昇華される)。作者はシナリオライター上がりだそうで、パッと目を引く要素が何か、ということがよくわかっている感じ。しかしながらそれは、冷静な計算の上であろうが本能的なものであろうが、そういうものに安直に飛びつく感性目当てなのは同じなんであって……まして中身が描けてないとくればねえ……。自殺やレイプがてんこもりのケータイ小説ばりの刺激臭に辟易。終着点を「泣ける」とこに持って来てるかそうでないかだけで、メンタルはそれらとまったく同じなんだよなあ。道理で売れるわけだ……(笑)。


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