ああ、麗しのオランダ 第二日目&第三日目



 目覚めは八時過ぎ……普段の休みなら考えられない早起きではあるが、気分は爽快である。ホテルのベッドは沈みすぎで寝にくいけどな。
 昨日も今日もお天気は快晴……! いやはや、晴れ晴れとしてるね。絶好のハウステンボス日和ではないですか。
 朝食もホテルのバイキング。トマトジュースを飲んで身体に目覚めをうながす。クロワッサンに卵にソーセージにヨーグルト……食べ過ぎですよ。

 入園料は3200円、ハウステンボスに入ると、まずは遥か彼方の塔が目につく。地元大阪、通天閣と同じぐらいの高さらしい。幾つにも枝分かれして流れる運河と、その傍らで回る風車、整然と敷き詰められた花畑など、いかにもテーマパークらしい作為的な空間である。
 お花で作った浮世絵をぼんやり眺めたあと、運河の側のベンチで休憩……って入ったとこじゃんかよ! まあしかしそうは言ってもしんどいもんはしんどいんだ。マップを見てたら、さすがに広いね……! ぼちぼち歩き回ってみるとしよう。一応、レンタサイクルやバスもあるんだが、そんな急ぐわけじゃないし……。
 歩き出したはいいが、歩くの遅い、オレ! 普段の半分ぐらいのペースで歩いてるよ。まあぶっちゃけた話、朝からそんな人いないっすわ。だ〜れもいないテーマパークってのはなんというか……最高だね(笑)。「ディズ二ーランドとか行ったら」みたいなことも言われるが、んなやかましいとこに行けるかっつうの。
 ……で、無料のアトラクションだけを見て回る(爆)。アトラクは一個だいたい400円で、入場口で1600円余分に払えば見放題なのだが、なんか時間とかいちいち合わせて回るのめんどくさいし。シーボルト記念館とか、ハウステンボスのシステム解説とか地味なやつだけ回る。お土産屋で自分用に陶製の道化師ハンドベル購入。たまに鳴らすと癒されるぞ。
 端まで歩くと、海も見えるんですね〜。帆船も二隻あって、いい感じ。さらに運河に沿ってブラブラと歩いて回る。昼近くなるとちょっと人も増えてきて、修学旅行の学校なんかも二組ぐらい来とりました。
 一応、展望台にも登る。おおおおお、よく見えるぞ。なんとなく行ってないゾーンがわかったので、さらに歩いてみよう。
 ひと休みして、園内のハンバーガーショップで昼飯。ポテトとチリバーガーと生ビールと……なぜかビールもハイネケンなのよね。最高。外の運河やお花畑を眺めながら、ぼーっとビール飲みながら、撮影した写真を写メールであちこちに送る。行く前は「人間関係から離れたい」なんてことを言ってた割に、勝手なものである(笑)。平日はレストランもアトラクションもお土産屋もヒマそうで、実にいいね。年取ったら、こういうところで働いても楽しいだろうね……と勝手なことを言ってみる。
 ほろ酔いでいい気分になったので、お花畑の前のベンチに移動し、ひたすらぼーっとする。道ぞいにある妙に整然とした奴ではなく、もう少し色々な花が雑多に咲いてるスペースがあって、そこはなかなか綺麗。後ろの方で、ワインの試飲フェアやっててそちらにも興味をそそられるが……いかんいかん、昼間からそんな飲んでてどうすんの。な〜んか面倒くさくなるあたり、自分が全然酒好きじゃないのを実感するねえ。
 さらにお土産屋を冷やかして、入り口付近まで戻ってくると、だいたい三時であった。入ったのが十一時前だから、4時間ぐらいはブラブラした感じか。
 再入場OKなので、また夜に来る事にする。夜もイベントあるからな。先に家と会社用のお土産を購入。カステラとお饅頭とクッキーと……。

 で、ごはん前に「空白の叫び」の続き。前後編ほぼ一気読みのリーダビリティはさすがですな。
 一番、目を引いたのはやはり、殺人を犯す三人の主人公の少年の視点を、一人が一人称、二人を三人称にした構成。三人称の二人が、今にも切れそうな人と「きみホントに中学生?」というぐらい頭の切れる「テニスの王子様」的キャラクターなのに対し、一人称の一人が母親に捨てられたおばあちゃん子という設定。一人称が「ぼく」なことも相まって、これは当然このキャラクターが読者の共感を呼ぶ主人公的設定になるのだな、と思ったら大違い。他の二人が衝動的に殺人を犯すのに対し、いきなり一人で計画犯罪! 最初に読んだ時、三人称で書き込まれた他の二人と違い、どうも殺人に到る過程に飛躍があるように感じられたのだが、読み進めるに従って、一人称で書かれた理由のようなものがじょじょに見えてくる。
 作品の結末に至って、主人公たちの行く末の明暗を分けたのは「内省」であると明言される。三人称で描かれた二人がどこか突き放した視点で描かれているのに対し、「ぼく」「ぼく」「ぼく」は自らの視点から他者の行動を見て、それに対する解釈をするだけだ。そこに一切の内省はない。ないのだが、何げなく読み進めていると、あたかも「ぼく」の言う事、している事がいかにも理にかなった正しい事のように思えてくるからぞっとする。ラストにつながるテーマの表現方法としてこういう構成が取られた、ということには緻密な計算が見て取れ、そこはすごいと思う。
 しかし、後でネット見てたら、

http://www.yukan-fuji.com/archives/2006/10/post_7227.html

>この作品を悪くいう人がいたら、そっちの方が間違っているとしか思えない

とか、作者が自分で言ってて笑ってしまった。
 せっかく主人公三人の視点で構成したのに、唯一の例外として女教師の視点も加えねばならなかったのは、なにかルール違反のようにすら感じられる。レイプ被害者が逆に男を篭絡する、という設定に対するエクスキューズとして入れているのが明白なだけに、美学が感じられない。曖昧にぼかすと突っ込みどころが生まれるのを怖れ、過剰なまでに書き込んだ感じが、かえって後に被害者の父が語る「マスコミに作られた」ような感覚を生んでいるのは皮肉なものだ。
 殺人を犯した者の視点で描いただけに、「罪と罰」にテーマが偏りすぎ、正直「少年犯罪」というテーマは希薄になった。少年院の一年が刑務所の十年になったとしても、さして印象は変わるまい。それもこれもあまりに「内省的」でありすぎる二人のキャラクターの特異性によるものか。そこらあたりのバランスを、もう一人が取ってはいるのだが……これはつまり「旧少年法ではフィクションでもない限り、更生は不可能」という結論に結びつくような気がするな。もしかしてそう言いたいのだろうか。
 あとはガンプラの描写にも感じられるが、「悪党たちは千里を走る」で最後に出てきた犬同様、とりあえずこれを出しとけば読む人は共感したりほのぼのしたりするだろう、と言わんばかりのあざとさが鼻につく。テーマも道具立てもすべて作品を構成する駒の一つでしかない、という冷笑的感覚が、読者の受け取り方を無視した上記の勘違い発言に結びついているんだろう。「オレはこんな難しいテーマで、こんなにも書いたぞ! すごいだろう!」という感じか。ある意味、無邪気なものだ。

 さて夕食はまたもホテルのレストランで同じコース。まあメインだけは変えられるんだけどね。サラダとデザートにちょっと違うものが出てれば万々歳だったのだがなあ。
 再入場して夜のイベントを見に行く。いやねえ、昼はいかにも「なんちゃって」なとこなんだが、夜はそういうあらが見えなくなり、ライトアップされてきれい!
 港のステージでやってる微妙にやる気ない感じのコンサートを見て、その後は花火である。時間待ちの間、またビール買って飲みつつ、だらだらとメール。で、野暮用で耕一氏に電話して時間を潰す。ところで携帯代って長崎からかけても一緒だっけ?
 花火というもの自体、十年ぶりぐらいに見たかなあ。スケール的にはどうってことなかったのだが、なかなか楽しかったです。

 持ってきた本も読んでしまい、テレビ見る気もなく、夜は早々と寝る事にする。一日がかりで大して何もしなかったが、これがいいんですよ、これが。人と行ってはこうはいかない。もっと精力的に遊ばねばならん。よっぽど気の合う人と行けばいいが、「そうするものだから」と義務的に遊ぶ事を考えると、ちょっとぞっとしますね(こういう事をわざわざ書いたり言ったりするから、友達いないしもてないんだなあ)。

 さて、翌日は起きる→朝食→電車→という流れだったので、特筆すべきことはなにもなし。しかし、実に晴れ晴れとした気分で家路につきました。
 帰ってきた三日後、職場ではトイレの水道が逆流して大洪水、さらにその二日後、ピーッという警報を鳴らして映写機が停止という不運が二つも重なり、旅行によるリフレッシュ効果の貯金を丸ごと吐き出すことになるのだが、それはまた別の話……。