”月が真円を描く時が我々サイヤ人の”『獣は月夜に夢を見る』(ネタバレ)
デンマークのミステリー映画。
海沿いの小さな村で両親と暮らすマリー。車椅子の母を介護しながら、漁港で働くように。だが、村人や職場の人間は、彼女に奇異の視線を向ける。それは母にも向けられていることに気づくマリー。すべての秘密を知る父は口を閉ざし続けていたが……。
原題は「NAR DYRENE DROMMER」でデンマーク語。訳すると「獣が夢見る時」ぐらいの感じか? 特に変な邦題でもなく、オリジナルに近い。で、内容はというと、ほぼこのタイトルの通りでありました。
港の工場で働き始めた主人公を遠巻きに見る村人たち。意味ありげな視線がチラチラと送られる。その頃、彼女は謎の発疹に悩まされ、医者にかかっていた。家にいるのはマッツ兄ことラース・ミケルセンお父さんと、車椅子生活のお母さん。お母さんは介助を受けていて、食事も入浴も一人ではできず、毎日薬漬け。しかし、そんな母親にも村人は意味深な視線を……。
結構低予算な映画で、工場で働いている人=村人全員みたいに見える世界の狭さ。舞台は家、工場、港ぐらい。いささか絵が貧弱なのに加え、説明台詞を入れないので、意味ありげなカットをちょいちょい挿入して雰囲気作りに努めるも実らず……と言った感じで、どうも舌足らずな印象になる。
が、それは序盤の印象で、なかなか謎が謎を呼ぶという風にはいかないな、と思っていたら、父親が母親の入浴時に彼女の背中の毛を剃っているシーンで全てが明らかに……えっ? 狼男? 女だから狼女か。人狼ものだったの?
果たして、夜になると夢を見て凶暴な衝動に取り憑かれる主人公。発疹からも毛が生えてきて……。おおおおお……タイトルそのまんまの内容やったんか……!
昔、殺人を犯したのは母親で、父親が助命を嘆願した結果、薬漬けになって生かされているんですね。で、新たな殺人が起きた時に真っ先に疑われる。結局、薬は効いていて変身の兆候はなく無実なのだが、家族の留守中に村人は彼女を殺してしまう。怒りに燃える娘は、もはや症状を隠そうともせず村人を挑発し、弱腰な父親とも溝が生まれていく。
「狼男もの」としてみるとシンプルな筋立てで、料理の仕方によっては面白くなりそうな気もするのだが、いかんせん安い。少女の変容はシーンが切り替わる度にちょっとずつ進行していて、決定的な変身シーンというのは映像になっていないのだな。特殊メイク自体は賞も取っていて悪くないと思うのだが、終盤は少女視点と連れの男の視点が揺れ動き、登場シーンが何か唐突でサプライズに繋がらないのだよね。後半は村人を惨殺しまくりますが、これも肝心なところは映りません!
主人公と恋に落ちる男、というのも登場するのだが、その他村人と並んでどうも貧乏くさいルックスでキャラも立っていないのが苦しい。いつ裏切るかと思ったわ。まあここは、主人公のお父さんのような悲しくも弱々しいポジションに今後なっていくことが匂わされているのかな、とも思うが。
予算なし、オリジナリティなし、熱量なし、ということでなかなか見ていてつらい映画だった。吸血鬼ものを見事なセンスで再構築した『ぼくのエリ』はやっぱり最高だったね! これは残念ながらあと百歩ぐらい及ばなかった感じで、予告編が一番面白いです。
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