”バナナの皮”『イレブン・ミニッツ』
スコリモフスキ監督作!
午後5時……。映画監督との面接にホテルにやってきた女優。嫉妬深いその夫。ホテルの前でホットドッグの屋台を開く刑務所を出たばかりの男。バイクでホテル前に向かうその息子。様々な人間模様がわずか11分の間に絡み合う……。
監督作は初見。もう78歳なのな。『アベンジャーズ』の、スカヨハを捕まえていたロシアのスパイ役でカメオ出演していた人。
わずか11分の間に起きたことを視点と時間軸をクロスさせて描く群像劇。
あるホテルとその周辺で起きた数々の出来事を、すれ違わせながら同じ時間軸、近い空間にあることを強調しながら描いていく。個々のエピソードが非常に生活感にあふれていて、言っちゃあ超地味なのな。お決まりの情事や、家族あるいは夫婦間の不和、人生への行き詰まりの気配がそこここに感じられ、出口の見えない日常がこの先にも待っていることが感じ取れる。
登場人物同士はお互いに関係なく、作中ではすれ違いを繰り返すのみ。そこかしこで重なる彼らの関係が、どう収束していくのか? 群像劇の見所は、やはりその収束具合だと思うのだが、往々にして風呂敷をたたまないこともあるわけで、今回はそのパターンだったな。
途中、この世界を映し出すモニターの存在が示唆され、作中の犬の視点と対照的に、より高次の視点があることが匂わされる。この映画を見る観客の視点であると同時に、より俯瞰した目線で全てを見る「神」的な視点か……。
いや、オチはある意味最高で、こんだけ引っ張って、よくこんなオチをつけられるものだ、と感心してしまうよ。描写はリアルかつ地味に積み上げていたのに、泡ですべったというだけでそれが全部吹っ飛ぶ。別な意味でカタルシスがあるというか……。
やっぱりこの監督のように歳をとると、世の中の人の営為すべてが、いつ消し飛ぶかわからない儚いものだと思うようになるのだろうか。わずか11分の間にあれだけのことが起きている、そんな世界の奥行きを感じさせつつ、でもそれはモニターの一つのドットにすら満たない小さな出来事でもあるという逆説ですね。
想像していたよりもはるかにトンパチな映画で、まあ短くてよかった。二時間見てこのオチだったら切れてるわなあ。
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