”様々な名で”『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』


サモ・ハンが黒澤明監督に捧ぐ/映画『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』予告編

 サモハンアクション監督!

 1914年、内戦下の中国。田舎の村である普城にいる従兄弟を頼り、教師のパク・レンは子供たちを連れて旅する最中、強盗に巻き込まれたところを謎の男に救われる。たどり着いた普城だが、パクらの村を滅ぼした軍勢がまたこの地にも迫っていた。自警団長のヨン・ハックナンは村を守る決意を固めるが……。

 サモハン祭り的に抱き合わせで公開されている映画。『デブゴン』とは違って、こちらはサモハンはアクション監督とゲスト出演。出演時間は相当短かった『処刑剣』よりさらに短いからな! 監督はベニー・チャン。最近は『レクイエム』あたりか……。

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 出演作的に、ラウ・チンワンとルイス・クーがベニー・チャン人脈で、エディ・ポンとウー・ジンがサモハン人脈かな。普段、違うジャンルで出ている人たちが異色のコラボ。ただ、直接ライバル的に絡むのはチンワンとルイクー、エディぽんとウー・ジンで、ウエスタン班と武侠班に分かれているような模様も。

 1914年!と言っているが、時代考証とかあってないようなマカロニ・ウエスタン、黒澤明武侠ものの折衷といった趣のなんちゃって時代劇で、舞台となる村のセットをどんと作ってずーっとそこと周辺で撮影してるような、贅沢ながら限定されてこじんまりとした作りでもあります。もちろん、最後には全部爆発して吹っ飛ぶ!こんなに爆発させたら、結果は勝ったけど後の再建が大変では……とか、色々と突っ込むところは多いのだが、盛り上がればいいのだから気にしない。
 すべては盛り上げのため!とでもいうような潔い作りで、特にルイス・クーは本当にひどい悪役演技を徹底的に漫画的にやってて、リアリティラインをガンガンに押し下げてくる。二階にジャンプで飛び上がれるレベルのワイヤーワークを使ったチャンバラ&カンフーが応酬され、特別出演の割には出番多いウー・ジンも切れ味鋭いアクションを披露。
 全体的に緩めなんだが、アクションシーンでは急に画面が引き締まってくるのは、サモハン演出の切れ味か。エディ・ポンもダンテ・ラム映画と合わせて、完全にアクションスター的立ち位置を確立しつつあるな……。しかしそれを圧倒し、映画的にも美味しいところを持っていくウー・ジンでありました。

 七人の侍的な人数合わせのために「自警団のその他の人」にも活躍の場があって笑ってしまう。トンファーの人はサモハンの息子さんなのね。それより、村の嫌な金持ちに護衛で雇われるシン・ユー(イップ・マン序章の芋の人)がこれまた嫌な奴なのだが、せっかくだから仲間になって欲しかったなあ。ラウチンの奥さん役の人の活躍も良かったが、いきなり足を怪我する謎展開がなければもうちょい暴れられたのかも……? いや、撮影前後で実際に怪我でもしたのかもな。
 『デブゴン』でも最後だけ登場してたエディ・ポンだが、今作ではサモハンが最後だけ登場。交換条件か! という感じで、うっかりしてると見逃しそう。

 気楽に観られる映画で、大味さも含めて香港映画ファンはきっちり楽しめる。また抱き合わせでもなんでもいいから、こういう映画はどんどん公開してほしいね。

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”身体は覚えている”『おじいちゃんはデブゴン』


「おじいちゃんはデブゴン」予告編

 サモハン監督・主演作!

 元人民解放軍要人警護のディン。引退後、66歳を迎えたが認知症を患い物忘れが激しくなって来ていた。隣に住む少女チュンファとの交流を楽しみに暮らしていたが、彼女の父親がギャングの抗争に巻き込まれてしまう。チュンファを人質にしようとするギャングを、必殺のカンフーで撃退したディンだが……。

 アクション指導した『コール・オブ・ヒーローズ』と抱き合わせで公開。認知症を患いかけているサモハン老人が、近所の少女を守って戦うというボディガードもの。まずその少女のギャンブル狂のダメ父がアンディ・ラウなんでびっくりするのだが、その他にもユン・ピョウやツイ・ハークなど大物がちょいちょいカメオ出演してて、サモハン人脈の大きさを実感させる。最後の方で登場するエディ・ポンが印象深いな。

 元軍人で、太ってるが実は凄腕というサモハン、しかし今回は老人役なのだが、妙に肌ツヤがいいな……。時々、健康不安説が飛び出す人でもあるが、髪の白さの割には若く見える。おまけに、髪型が若干昔のオカッパ風なので、なおさら童顔が際立って見えて、そこがまた懐かしのデブゴン映画を想起させるところでもある。

 さすがに動きの切れは落ちてエフェクトでごまかしている部分もあるが(『ロミオ・マスト・ダイ』のレントゲンを久しぶりに見たわ)、近距離での切れは健在で、後半に体格を生かしたダイナミックな動きを加えてくるところもみどころ。
 昔『大福星』や『ナイスガイ』を見た時、やたらと女優を殴ったり蹴ったりするシーンがあるので、ちょっとこの人はサディスティックな性癖があるのではないか……と感じたのだが、今回のアクション演出はもっとダイレクトに骨や関節を破壊する動きで、『イップ・マン 序章』でもやってた超痛そうな奴。

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 認知症設定と年齢設定はそのままアクションにも反映されていて、長時間は戦えず、負傷すると動きが鈍るもどかしさをきっちり描き、生身の人間である老人を演じ切ったところも好印象ですね。
 また残酷描写もどこかしら、主人公の記憶が徐々に失われていく無常観とつながっているようにも感じられる。戦いに明け暮れ、家族を失い、業の深い人生を送ってきた彼が迎える結末とは……。
 子供との交流シーンは、普通っぽい子役だけどどこも抜群に良くて、アイスのシーンがお気に入りですね。

 冒頭の殺人現場の目撃が後の話にまったく絡んでこずに綺麗にスルーされたり、子供が失踪した展開が誤解だったりと、色々と雑なところも多いのだが、まあこれも香港映画であろう。『ローガン』にも通じる一本でありました。

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”わたしのたわし”『メッセージ』(ネタバレ)


映画『メッセージ』本予告編

 ドゥニ・ヴィルヌーブ監督作!

 地球各地に飛来した、謎の巨石。宇宙から来たそれらにコンタクトを取るべく、各国が次々に動き出す。言語学者のルイーズ・バンクスも召集を受け、物理学者のイアンらと共に「船内」に入る。そこでは驚くべき出会いと、彼女自身の人生をも揺るがす出来事が待ち受けていた……。

 『灼熱の魂』以降、監督作をずっと追いかけているが、この人は「構造」を描く作家だな、と思う。時に、個々の人物描写よりも、歴史の変遷や社会の状況こそを見せていきたいし、それらを題材として描きこむことによって、より映画を完全な構造として美しく仕上げたいのではなかろうか。
 『プリズナーズ』は、主体となるヒュー・ジャックマンお父さんの心理描写がかなり凝っていたけど、やはり構造的犯罪によって翻弄される役回りだったし、その追求っぷりは『複製された男』以降ますます顕著になっているように思う。

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 そして今作もその例に漏れず、まさかの回文構造になっているという……。

 ハリウッド映画のキャラクターの年齢設定って、時々よくわからないことがある。ニコール・キッドマンあたりが若作りしてたりすることもあって、40代ぐらいの役者でももっと若いキャラを演じていることも多い。特に、二つ以上の時間軸をまたぐ場合には、30代と40代をさほどのメイクもなく演じ分けていたりして、特に説明がなければキャラクターが何歳なのかよくわからないまま見ていたりする。
 で、今作、エイミー・アダムスの見る夢が結構大きくなった娘の病死シーンなので、「ふーん、今回はそこそ年齢いってる設定なのな」と思ってしまう。ちなみに彼女の実年齢は42歳
なんで、だいたいそれぐらいの歳なのだろう……。そして、そう頭の中で結論を出してしまうと、夢の中に登場する子供生まれたてぐらいのころのエイミー・アダムスは「十年前ぐらいだから、ちょっと若く見せてるかな」とまで思ってしまうのである……。
 ああ、先入観って怖いな……。SF小説を原作にした映画なので、らしいとしか言いようがない仕掛けがあり、前半見ていた「夢」の意味は、後半にガラリとひっくり返るのである。

 ただ大仕掛けを見せたいだけの一発トリック映画じゃなくて、「三千年後」とか言い出す呑気過ぎる宇宙人の、地球人とはまったく違う時間感覚の表現にもなっていて、それとの「遭遇」が言語や科学技術含め、いかにギャップがあり、またそれを受け入れることでどれだけの変革をもたらすか。受け入れること自体が、大国がせめぎ合う世界情勢そのものへの試金石にもなっているという、人類レベルのSF設定と、がっちり合致している。今や強硬に世界をリードしていく役回りは、中国になっているのだな。それに対して穏健ぶるアメリカというのも、どのツラ下げてという感じではあるが。

 映像も美しいし、幻想的なビジュアルで、かつスケール感もあり、サスペンス的な緊迫感、言語学的な謎解き感覚も備えているのだが、宇宙人のビジュアルと夢演出のけったいさなど、どこかしら素っ頓狂さもあり、今作もやっぱりドゥニヌーブらしい、と感じたところ。ただ、登場人物の心情を読んだりストーリーよりも構造を楽しむ、という映画的豊饒さはもちろんあるのだが、どこか「またオモシロ映画作ったな」と、マジシャンのテクニックの方に注意がいってしまうね。さあ、次はなにをやってくれるのかな……?

 それにしてもジェレミー・レナーは色々とかわいそうな役回りだったな……(ベスト・ハズバンド度:50)。

今日の買い物

『ハプニング』BD

 シャマランでまだ見てなかったやつ。まあズーイーも出てるし、損はあるまい。

『君と歩く世界』BD

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 公開時の感想。
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”僕にはまだ、帰る場所が”『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(ネタバレ)


映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』日本版予告編

 リミックスと言ってますけど、続編です!

 黄金の惑星の艦隊に追われるガーディアンズ・オブ・ギャラクシーだが、間一髪、謎の男に助けられる。男の名はエゴ、”スターロード”ピーター・クイルの正体不明だった父親だった。エゴの星に案内され、彼の星そのものと言える力に魅了されるピーター。やがて仲間との関係にも亀裂が……。

 ジェームズ・ガンが続投した二作目。前作で謎のままになっていたスターロードの「父親」を主軸に据え、新たな展開を見せる。冒頭は若かりし頃の両親がいる地球。謎の花を植える若作りのカート・ラッセル……。

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 舞台は現代に戻り、おなじみのメンツが早い段階から総登場。正直、このシリーズに別に思い入れがないので、前半は少々しんどい。ガン監督の上手さはわかるんだが、「俺ってセンスあるだろ?」というひけらかしに近い演出もチラチラあって、わかったわかった……という感じもあるのだよな。いつものぬめったガジェットへのこだわりも、宇宙船のギミックレベルでは少々浮き気味のような……。

 一作目は「お母さんとの思い出」がオープニングとエンディングを締めくくり、それこそ主人公ピーターの中で「揺るぎない良きもの」として設定されているんだよね。で、今回はその母が愛した父の物語である、と。必然的にロマンチックなお話かと思いきや、かなり豪快にひっくり返してくる。惜しむらくは役名が「エゴ」だから、サプライズにも何にもならんことだが……。まあこれは原作ありきだからしようがないか。
 アライグマとか木とか、宇宙人でも「少々カルチャーギャップがありますのお」ぐらいの齟齬で済んでいたのが、初めてまったくの異生物らしく価値観が根本的に異なる相手に出くわし、しかもそれがよりによって自分の父親だった、というゲロを吐きそうな事態。母親は実は殺されていて、地球は壊滅危機、自分にもその父親と同じ力が……と、アイデンティティ崩壊レベルの事実が立て続けに明かされる大ショック。
  ……が、まあ父親はもう一人いたからいいじゃん! と、これまた豪快な着地を見せる。ヨンドゥって、前作見ただけだと人さらいの悪党だったのだが、その行動の裏には思わぬ理由があったことが明らかに……。親の心子知らず、的な話だが、父親と息子のコミュニケーション不全にも通じる話ですね。

 話が宇宙規模になるとガンちゃんのグロ趣味も俄然大げさに面白くなって、反面、話のまとめ方はスムーズそのものの手際良さ。チームの複数のメンバーのバトルを同時に処理するあたりは、大勢を無駄にスモークの中をウロウロさせたデヴィッド・エアーあたりにも、見習わせたいところだな……。

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 父子関係のみならず、チーム全体を絡めたファミリーものとしてまとめてくるので、エンディングも非常に座りがいい。よくよく考えると、かなり悲惨かつおぞましい話なんだが、トラウマとして引きずらせずに、スパッと片付けたあたりも良いですね。僕にはまだ、帰れる場所がある……こんなに嬉しいことはない……!

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”いつまで続くんだ!”『バイオハザード:ヴェンデッタ』


映画『バイオハザード:ヴェンデッタ』新予告編

 CGアニメ版『バイオ』第三弾!

 国際テロ対策部隊BSAAのクリスは、国際指名手配犯のアリアスを追っていたが、仲間を殺され取り逃がすことに。生物兵器を操るアリアスは新型ウイルスで巨大テロを企んでいた。ウイルスの情報を掴んだクリスのかつての仲間レベッカは、ワクチン製造に成功するのだが……。

 一応、『デイジェネレーション』『ダムネーション』と劇場で観てます。毎回レオンが大活躍するこのシリーズですが、ダムネーションはタイラントとの対決、エイダさんの出番も多くて結構満足感があったな……。今作はクリスとレオンのダブル主役になる模様。
プロデュースに『呪怨』の清水崇が加わったりということで、ジャパニーズホラーの旗手がいかなる味付けをするかも見所。

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 ……だったんだけどさあ……。

 クリス、レベッカ、レオンと順番に主役が揃っていくのだが、悪役の企みもそれに連れて少しずつ明らかになっていく。が、ホラー演出をやりたいあまりにキャラがぶれている感じで、何をしたいのか。発端である合衆国によるドローン攻撃によって家族を失ったくだりで、すでにめっちゃお尋ね者になってるのに、堂々と結婚式やってそこにミサイル撃ち込まれた、という話運びがいまいちよくわからないんだが……。

 で、生き残った家族はBOWとして蘇らせ、花嫁の腕だけは保存。レベッカは彼女に似てたので新しい花嫁に……って、結婚式再現シーンの絵面だけは恐ろしいのだが、クレバーな武器商人と復讐に燃える花婿の間でキャラが右往左往している。割りを食った形でレベッカが、ウイルスに対抗するキーパーソンと囚われのヒロインの立場でどっちつかずに止まって結局活躍しないという悲劇……。

 さらにレオンさんはこの事件直前に、裏切りにあって仲間を全て失い酒浸り。「いったいいつまでシリーズは続くんだ……このCG版も3……ゲームは7……実写映画はやっと終わったけど、こんな戦いがいつまで続く!」と、くだを巻き続ける。が、その裏切り者がなぜか酒場に駆け込んできて、「悪者に脅されたんだ。スペインで狙われてる家族を助けてくれ」と懇願。倒すべき敵は奴だった!と気づくレオン。が、その「家族」がそのあと一切出てこないし、次の舞台もスペインじゃないのだな……。

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 レオンが本気出すとアクションも俄然面白くなってくるのだが、いかんせん話が雑すぎなので、一向にテンションが上がらない。悪役はアメリカで人間をゾンビに変えるガスをばらまき、街中で食い合いが始まる……が、同じようにワクチンをまけば、元に戻れる! ……えっ、家族を食い殺してから元に戻った人は、そのあとどうなるんだろ……?
 犬に追跡されてバイクチェイスしてるレオン、回避際に周囲の車も吹っ飛ばしてるが、それまだ生きてる人が乗って運転してたよね……? レオンを援護するチームがレールガンぶっ放してビルを二、三棟倒壊させてたけど、それまだ人いるよね……?

 悪党が最後の切り札で合体するところは良かった。これはプラーガ系の敵ではおなじみだからな……。まあまあラストバトルだけは何とか観られたかな。しかしホラー展開の陳腐さといい、怖かったり派手だったりする「絵面」にしか興味ないんだな。ハリウッドごっこした末に出来上がった形骸という感じで、こりゃあダメだわ……。

 最後の頼みの綱、エイダさん加点(登場するだけで700点ぐらいはある)もなく、あえなく終了で、ちょっと期待していたが壮絶に裏切られた一本でありました。さらばバイオ……。

”探し続ける者”『BLAME!』


劇場アニメ『BLAME!(ブラム)』本予告② BLAME! The Movie Trailer②

 弐瓶勉原作漫画のアニメ映画化。

 都市をコントロールするアクセス権を失った人類を尻目に、機械は次々に増殖し、人間を狩りながら都市を増築し続けていた。密かに生き残った人間たちが隠れ住む村も食糧危機に見舞われ、少女づるは仲間と共に大人に黙って狩り場へと出向く。だが、セーフガードに発見され、そこで霧亥と名乗る謎の男に助けられる……。

 原作は未読(『シドニアの騎士』は3巻まで読んだ)で行って来ましたが、いきなり世界観が投げ出される割には、なかなかわかりやすい。『アイ、ロボット』みたいな顔した敵のスピード感、都市を改築し続けている機械の巨大感などと共に、その都市の途方も無い広さを表現。人間は限りある資源、お粗末な装備で、対抗というほど対抗できるわけでもなく、なるたけ避けて逃げ回り、残った乏しい資源を求めて生き続けている……。

 資源を求めて、大人たちに黙って村を出た少年少女たちが、その無謀の代償を命で支払おうとしていたその時、一人の男が現れ、「アイ、ロボット」から彼らを救う。ろくにしゃべらず、なんだかガッチャンガッチャン歩く感じの、まさに『ターミネーター』ですね。村人のテクノロジーではありえない、凄まじい銃も持っている。「俺は人間ダ」というけど、どう見てもおかしいよ! 人間味を見せるシーンはまさに全然なく、プログラム通りに動き回ってるっぽいのだけれど、ただどこかしら何がしか感情があるのではないか、という投影が、村の少女を通して我々観客にも起こるのは面白い。演じるのは櫻井孝宏で、そういえば彼はサイボーグ009もやっていたのであった。かの作品では、もちろん島村ジョー=009という人間味あふれるキャラクターだったわけだが、不思議と今作のキャラにも一脈通じるような……?

 途中、『マトリックス』っぽく電影世界の元締めと対話するシーンなんかもあったりするが、それよりも『ターミネーター』オマージュの味わいが強い。後半にかけてイケメンながらマッチョな主人公が、細っこい女ターミネーターの火力とパワーに押されまくるあたりは『ターミネーター3』だ! シュワちゃんクリスタナ・ローケンにボコボコにやられてる感じね。

 機械側はもっと緻密にやってればいくらでも人間を殲滅できそうで、人間側も意図的に穴を突くことで生存しているという風には見えないあたり、こういうシチュエーションを作るための緩さという感じ。一方で映像やシナリオで表現されたその世界の広大さは非常に魅力的で、その果てなき鋼鉄の荒野をプログラムのために……あるいは己自身のために……? 彷徨い続ける主人公の格好よさはなかなかいい感じ。最後は『マッドマックス 怒りのデスロード』になってしまったがな……。

 ちょっとオマージュに走りすぎな感はあるが、映像、音響、美術などは一見の価値ありで、アニメアニメしたところも含めて、今の日本製CGアニメの先端を行ってるんじゃないかな。まずまず良かったです。