”身体は覚えている”『おじいちゃんはデブゴン』


「おじいちゃんはデブゴン」予告編

 サモハン監督・主演作!

 元人民解放軍要人警護のディン。引退後、66歳を迎えたが認知症を患い物忘れが激しくなって来ていた。隣に住む少女チュンファとの交流を楽しみに暮らしていたが、彼女の父親がギャングの抗争に巻き込まれてしまう。チュンファを人質にしようとするギャングを、必殺のカンフーで撃退したディンだが……。

 アクション指導した『コール・オブ・ヒーローズ』と抱き合わせで公開。認知症を患いかけているサモハン老人が、近所の少女を守って戦うというボディガードもの。まずその少女のギャンブル狂のダメ父がアンディ・ラウなんでびっくりするのだが、その他にもユン・ピョウやツイ・ハークなど大物がちょいちょいカメオ出演してて、サモハン人脈の大きさを実感させる。最後の方で登場するエディ・ポンが印象深いな。

 元軍人で、太ってるが実は凄腕というサモハン、しかし今回は老人役なのだが、妙に肌ツヤがいいな……。時々、健康不安説が飛び出す人でもあるが、髪の白さの割には若く見える。おまけに、髪型が若干昔のオカッパ風なので、なおさら童顔が際立って見えて、そこがまた懐かしのデブゴン映画を想起させるところでもある。

 さすがに動きの切れは落ちてエフェクトでごまかしている部分もあるが(『ロミオ・マスト・ダイ』のレントゲンを久しぶりに見たわ)、近距離での切れは健在で、後半に体格を生かしたダイナミックな動きを加えてくるところもみどころ。
 昔『大福星』や『ナイスガイ』を見た時、やたらと女優を殴ったり蹴ったりするシーンがあるので、ちょっとこの人はサディスティックな性癖があるのではないか……と感じたのだが、今回のアクション演出はもっとダイレクトに骨や関節を破壊する動きで、『イップ・マン 序章』でもやってた超痛そうな奴。

chateaudif.hatenadiary.com
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 認知症設定と年齢設定はそのままアクションにも反映されていて、長時間は戦えず、負傷すると動きが鈍るもどかしさをきっちり描き、生身の人間である老人を演じ切ったところも好印象ですね。
 また残酷描写もどこかしら、主人公の記憶が徐々に失われていく無常観とつながっているようにも感じられる。戦いに明け暮れ、家族を失い、業の深い人生を送ってきた彼が迎える結末とは……。
 子供との交流シーンは、普通っぽい子役だけどどこも抜群に良くて、アイスのシーンがお気に入りですね。

 冒頭の殺人現場の目撃が後の話にまったく絡んでこずに綺麗にスルーされたり、子供が失踪した展開が誤解だったりと、色々と雑なところも多いのだが、まあこれも香港映画であろう。『ローガン』にも通じる一本でありました。

燃えよデブゴン 豚だカップル拳 blu-ray

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