”ただ君のもとへ帰る”『キングコング 髑髏島の巨神』
『ゴジラ』に続く、レジェンダリーの怪獣映画シリーズ。
太平洋、嵐に常に隠された謎の孤島「スカル・アイランド」。ヘリコプターで島に調査に向かった学者、カメラマン、軍人らで構成された遠征隊は、地質の調査のために爆弾を投下する。だが、それによって島の守護神キングコングが、そしてコングと戦う謎の怪物が目覚めてしまう……。
太平洋戦争末期から始まり、舞台はベトナム戦争直後の1963年へ……。『キングコング』はピーター・ジャクソン版も初代のリメイクを志していたわけだが、今作はそこから離れ、完全な新作ストーリーに。
前振りを長めに取って、船ではなくヘリで上陸した髑髏島。爆弾を落としていたところ、いきなりコングに遭遇だああ! 旧作では飛行機に射殺されたコングですが、まったくびびらずヘリ部隊を粉砕、落ちてきた兵士をパックンチョ!
部隊壊滅の憂き目にあったサミュエル・L・ジャクソンは、コングへの敵討ちを誓うのであった。が、この人は終わったばかりのベトナム戦争に対して同じ感情を抱えているので、コングに対しては半ば八つ当たりなのよね。映画はそこを肯定的には描かず、島を脱出しようとする案内役の傭兵トム・ヒドルストンとカメラマンのブリー・ラーソン、そして太平洋戦争末期に島に取り残されて生き残ったジョン・C・ライリーが主人公的存在になる。
ハリウッドゴジラが不自然なくらいに人間を避けてたのと近いスタンスで、コングさんは基本的に人間にあまり興味がないのよね。現地住民やジョン・C・ライリーとのコンタクトもほぼなしで、序盤のヘリとの攻防もあくまで爆撃への怒りとして描かれる。ブリー・ラーソンとのちょっとした触れ合いこそあるが、彼女の服を破いてキャー!みたいなシーンはなく、今回のコングさんはスケべ心のないマッシブな存在である。永遠に童貞であることが宿命づけられているにも関わらずストイックな……。
フォルムもほぼ直立して、筋肉も逆三角形、意外に小尻かな……。ジャンプ力ある割には下半身が小さめに見えるかな。
監督はすごいオタクだな、という印象で、要は興味のない要素をバッサバッサと切り捨てて、好きなものを代わりにどんどんぶち込んでいる。あまり必然性のないソードアクションなどがその典型で、あれだけの出番だったMIYABIさんも愛刀をトムヒに譲らずおっさんになって登場して欲しかったところですね。まあジョン・C・ライリーと違って、「戦争に勝ったと思い込んでる元日本兵」なんかに登場されたら話が余計にややこしくなるか……。太平洋戦争に取り憑かれた男とベトナム戦争に取り憑かれた男の対決は、それはそれで面白そうだが、まあお話にするなら「早く帰国してビール飲みたいよ」なジョン・C・ライリーの方を対立軸にしちゃうわな。
相変わらずコネで出演しているのであろうジン・ティエンの台詞のなさ、活躍のなさ、メイクの綺麗さは異常なのだが、このあたりも作り手の割り切りの速さの傍証という感じで、トムヒさんがアクションとしてはともかく、お話の上では活躍してないように見えるあたりも、その一部か。まあいいよ、人間はほどほどで。それよりコングコング、他の怪獣も出していこうぜ、と宮崎駿にエヴァオマージュの方に熱心なあたりが清々しい。
顔が使徒っぽいスカル・クロウラー、大ボスが大きいだけというのは少々残念だったが、命名するところは東宝特撮のいつのまにか名前が勝手につけられてるパターンを茶化したようで面白かったね。
普通の3Dで見た後、IMAX3Dで見たが、やっぱり別物だったなあ。ただ普通に2Dで観ても充分面白かったんではないかな、という気もする。次はゴジラとの対決だそうですが、まだまだ巨大化しないとダメだな。
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ルシフ様の対決映画ベスト10
ワッシュさんの春のベスト10企画に参加します。
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今回はタイトルに対決しちゃう両者の名前が入っていないといかんそうで、なかなか難しい。どんな素晴らしいファイトシーンがあっても選べなかったりするわけですからね。
1.『ドラゴン×マッハ!』
現在の香港映画でも至高のファイトが展開される最新作を一位に! 公開当時、ドラゴン=ウー・ジン、マッハ=トニー・ジャーというあまりに安直なタイトルの付け方に辟易としましたが、おかげで選べるんだから何が幸いするかわかったもんじゃありません。まあメインはこの二人の対決じゃなくてマックス・チャンとの二対一のバトルなんですがね!
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2.『フレディVSジェイソン』
オリジナルにリスペクトを捧げつつなぜかカンフー要素まで詰め込んだ、VSものの金字塔。対決の華はステゴロ対決だが、フレディは生身でも強かった……。
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3.『ガメラ3 イリス覚醒』
玄武対朱雀、人間との絡み、京都駅で対峙する絵面など、2大怪獣の対決の構図にとことんこだわったところがいいですね。
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4.『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』
格闘ゲームオマージュということで、対決対決の連べ打ちで構成。その中でキャラクターの成長を描く王道展開。
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5.『サイボーグ009VSデビルマン』
往年の東映対決路線へのオマージュ。近年の009映画化の中では一番面白かったから……。
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6.『ゴジラ対メカゴジラ』
7.『ゴジラVSメカゴジラ』
8.『ゴジラ×メカゴジラ』
こうして並べてみると、永遠に続く己が銀色の影との戦いが、一大叙事詩のように見えてこないでもない。他に二本もあるしな……。ハリウッドでもシン・ゴジラQでもいいから、メカゴジラまた出して欲しいな!
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9.『霊幻道士3 キョンシーの七不思議』
霊幻道士VSキョンシー! 『コイサンマン キョンシーアフリカへ行く』と5分ぐらい悩みましたが、やっぱり本家本元をチョイス。
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10.『ツイン・ドラゴン』
「ドラゴン」という呼称の一体誰なの感を便利に感じつつ、ジャッキーVSジャッキーなこれをラストに。まあ共闘の要素の方が強いですが気にしない!
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カーペンター監督作がジャケット変えて再発。
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”今日は素敵なバレンタイン!”『52Hz,I LOVE YOU』
『52Hz, I LOVE YOU』 予告編 Trailer
大阪アジアン映画祭2017、四本目!
花屋を経営する小心は花束を届けながら運命の出会いを待ち受け、パティシエの小安は叶わぬ恋を抱きながらスイーツを作り続けていた。バレンタインデーにそれぞれ配達に出かけた二人は、最悪の出会いをするのだが……?
『セデック・バレ』のウェイ・ダーションの最新作。あの大作に続き『KANO』も製作して、ちょっと疲れてしまった……ということで撮ったということらしい。まあ小品という意味合いで受け取って構わないと思うが、非常にシンプルな代物。メインの四人のキャストは全員役者ではなくミュージシャンだそうである。確かに、言われてみればそれぞれ雰囲気はあるものの演技力にはばらつきがある感じで、何かしらオーバーアクトね。
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バレンタイン当日、四人の男女の恋模様を描くという単純なプロットなのだが、いや……これ、30分ぐらいで済みそうな話なんだよな。でも、場面が変わるたびに延々と歌い踊り続けるのでつらい! いやまあ、ミュージカルってこういうものだよね……ということだが、あまり事前情報入れてなかったせいでミュージカルとそもそも知らなかったので、速攻で帰りたくなったよ。
で、単純な話であること自体はいいとしても、長期にわたる恋愛関係で起きたすれ違いが、楽曲と踊りのムード頼みでなんとなくうやむやになる、という、展開とさえ言い難い展開がクライマックスを締めるのにはいささか呆然となってしまった。これは明日また揉めるんじゃないの……?と心配になってしまう。
全登場人物が、恋愛したくてたまらない、結婚したくて焦っているという恋愛体質映画で、そこに異論が挟まれる余地もない。まあこういう価値観を共有できないと話にならんわな……。
楽曲はまあ良かったし、サブキャラで登場するLGBTのカップルは非常にスマートで、台湾のほんわかした雰囲気も含めていいところもあるのだが、なかなかつらいものがあったでござるよ。やっぱりウェイ・ダーションは気合い入れて神経すり減らして殺伐たる超大作を撮り続けてほしいな……。
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”俺に弾は当たらない”『マグニフィセント・セブン』
『荒野の七人』リメイク!
悪党ボーグの脅威にさらされるローズ・クリークの街。教会さえも燃やされた中、夫を殺されたエマは、街を守るために七人のアウトローたちを雇うのだが……。
『七人の侍』は見たけど、如何せん20年ぐらい前の話だから忘れたな……。ピーター・サースガート演じる悪党に目をつけられて大ピンチになっている村を、デンゼル以下七人のガンマン(弓を持ってる人もいるが……)が迎え撃つ、というお話。
最近、話題沸騰中?のヘイリー・ベネットが無法者によって夫を殺され、事態の発起人として村の代表者としてガンマンたちを集める。まずはリーダー格のデンゼル・ワシントンから……なんだが、同じアントワン・フークア監督の映画では二面性のある不穏な役をやってた彼が、どうも今回は単にカッコいいだけの役をやりたかったのか、時々ある底の浅いヒーローデンゼルそのもの。この時代に黒人がガンマンやってる、ということの危険さなど、キャラに意味付けも相応にあろうはずなのだが、そこをいつものデンゼル力というスターオーラだけで乗り切っているため、単に空虚にしか見えない。
で、またデンゼルには弾が一切当たらないんだよな。後半は死者も出るんだが、デンゼルは物理法則の歪んだ空間に生きてるように見え、かすりもしない。いや、『イコライザー』でさえ、それなりにピンチに陥る展開はあったと思うんだが……。
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また演出がいちいちもったいつけて見えるせいで、この後のクリス・プラットのカードのシーンなども、「キャラ付け」のためにやってるわざとらしい演技に見えてきてつらいのだ……。
この後もイーサン・ホーク、イ・ビョンホン、ヴィンセント・ドノフリオら、「個性豊かなキャスト」が「タイプキャストの定番芸」をダラダラ演り続け、予想されるキャラの役割を一つも超えてこない。
モブキャラと、七人プラスヘイリーちゃんの色分けがきっちりされすぎで、映画内でもなんとなく弾が当たるゾーンとそうでないゾーンがあるように見えてきて、どんどん退屈してくる。撮り方にもメインキャストへの思い入れは感じるわけだが、逆に大仰に演出過剰に見える。
どうもフークワは『サウスポー』にこれとハズレが続いているな。かつての『トレーニング・デイ』も友人が「ブラックムービーの真似しただけ」と散々こきおろしていたが、今作もそういうことなのかもしれないね。
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『ビザンチウム』BD
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公開時の感想。
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”レコードを聴いてみて”『29+1』
大阪アジアン映画祭2017、三本目!
30歳を目前にしたクリスティ。仕事では突然の抜擢に苦しみ、長年の付き合いの彼氏とは噛み合わず……。父の死やアパートの退去が重なって苦しんでいたところ、家主の親戚のパリ旅行の間に部屋を間借りすることになる。部屋の主ジョイスの残したビデオレターを見るうちに、同い年ながら正反対の人生を送っているジョイスに、クリスティは不思議と共鳴して行く……。
一昨年『点対点』という映画があり、香港を美しく撮っているのであろうが、どうにもムード依存が過ぎて辛く、絶賛評を他所に辟易してしまったことがありました。今作はその『点対点』枠とちょっと共通する部分がありつつも、トリッキーな構成が光る一本。
原作は一人で複数のキャラクターを演ずる一人芝居なのだが、その主演をした演出兼女優の人が自ら監督し、一人芝居じゃなく複数の役者をきっちり当てはめて映画化した、ということ。なるほど、後から知って振り返れば、二人の主要人物のモノローグ中心の構成にその形が見える。肉付けの仕方が上手くて、大きくふくらませつつもスマートに仕上げている印象。
前半、仕事に疲れ、恋人との仲にも迷いを抱える女の、三十歳を目前にした苦悩を描き、世間の目に追い詰められ疲弊して行く様を見せる。後半は、ひょんなことから彼女と全く違う人生を送っている女性との交わらないはずの交錯を経て、自分を見つめ直して行くという話。
前半の主人公が、美人なのにすでにもうアンチエイジングに追い回されて疲弊しているのに対し、後半の主人公は太ったメガネ女なのだがコンプレックスに陥らず自由に生きている……とまあ、ビジュアルからして対極的な配置になっていて、「喪女の方が人生の真理を知っている」という乱暴な括りができてしまう。このあたりは元が一人芝居で同一人物が演じ分けで区別してるんだから、ここまでわかりやすくしなくても良かったんじゃないの、という気がしたな。
主人公たちが30歳直前ということで、その世代向けの話なのかと思いきや、作中の時代設定は90年代。当時に30歳を迎えた世代、ということで、現在は40代になっている人が、どストライクのゾーンということになる。作中で小道具として度々登場するウォン・カーウァイ、レスリー・チャン……彼らの映画に熱狂した世代への賛歌なんですね。
オシャレの代名詞としてウォン・カーウァイをそのまま映画の中に出してくるセンス、憧れの場所がパリだったりと、少々拒否反応を覚えてしまうところもあって、個人的には好きではないが、まあなかなかいい映画ではあると思う。ハマる人はハマりそうだな……と思ってたら、今映画祭でも観客賞を受賞したそうで、それも納得でありました。
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