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”漢を上げろ!”『スペシャルID 特殊身分』


 ドニー・イェン主演作!


 黒社会のボス、ホンの手下であるロン。彼の正体は潜入捜査官だった。だが、弟分のサニーがホンの部下であるクンを殺害し、取引の上前をはねたことから、ロン自身も疑われることに。上司の指示で女刑事ジンと密かに組んだロンはサニーに接触するが、その現場が何者かに襲撃を受ける……。


 去年は公開作が一つもなかったのですが、今年はひさびさにドニー・イヤーになりそうですね。この後『アイスマン』『モンキー・キング』も控えてますよ。


 冒頭、入れ墨だらけでヤクザと麻雀しているドニーさん。イカサマを破って勝ったはいいが、相手のロー・ワイコンに因縁をつけられ、『邪神拳』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130226/1361875749)以来の蹴り合いに……ならない! ムエタイベースのワイコンさんに対し、敢えて座って引き込みを誘い、立ち技勝負を避けてアリキック! 下から絡みついてポジションを奪い、パウンドを落とす!


 今作は『SPL』、『導火線』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110619/1308391012)からの流れで、MMA的なムーブを取り入れてのファイトシーンを構成している。過去作はその技が流れから浮いてわざとらしかったのが、段々とその場の地理的状況や、ファイト中の流れを意識して振りつけられるようになっている。今作のドニーさんは潜入捜査官役で、三十代半ばぐらいの設定か? 特別超人的な能力やテクニックを持っているわけではないのだが、ファイトシーンをリアル寄りにするための設定だろう。『激戦』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150202/1422881099)のような競技としてのMMAではなく、あくまで街中、室内でのファイトの味付けとしてMMAを取り入れている。
 なのでまあ、異常な速度の手業やら空中二段蹴りを連打するいつものドニーさんスタイルではなく、普段よりスピードも落とし気味。ほぼ作為的なものなのだが、うっかり見ているとドニーさんキレ落ちた?と心配になってしまうかもな。


 ラストのアンディ・オンとのバトルも、『導火線』のように個々の技やムーブを見せることに力点を置かず、あくまでシームレスに自然な流れを形作る。おなじみの下から腕十字or三角をバスターで返すという、もうハリウッド映画でも食傷気味なぐらいに扱われているアクションがあるのだが、浮かせた後で車にぶつけてワンクッション置いたりと見せ方を工夫している。これを意識的にやったのは、あとは『エージェント・マロリー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121010/1349858686)だろうか。


 しかし、ただの潜入捜査官とチンピラがなんでMMAムーブで対決するのか、という深い設定や必然性があるわけではないので、アクションシーン自体の細かいこだわりには感心したものの、やっぱりちょっと浮いてるように思えてしまったのだった。飛び蹴りやどつき合いじゃなくてテイクダウンを選択する理由づけが、「やりたかったんだ」以上に見えないので、やっぱり『導火線』や『エージェント・マロリー』同様に実験作っぽい趣は消えず、MMAをアクションに導入する必然性とは……という課題はまたしばしお預けとなったのでありました。


 『ポリスストーリー・レジェンド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140610/1402391462)の娘ちゃん役だったジン・チェンがヒロインの刑事役で登場していて、飛び回って銃撃ったり車に飛び乗ったりするアクションは、主にこちら(のスタントさん)が担当している。当初はジャッキーも出演するはずだった企画なので、その名残か……?
 製作にまつわるドタバタは映画秘宝でもチェックしてもらうとして、漢気を発揮してチョウ・マンチェクの代役になったはずがやっぱりいつもの非人間的キャラのアンディ・オン、出てきた割には見せ場のないコリン・チョウ(きっとアンディ・オンが断ってたら、自分がラスト戦うつもりでスタンバってくれてたのではないか……)など、キャストを揃えている割にはちぐはぐしていて、お話も急激に細かくまとまっていくのが難点。
 また、潜入捜査官というハードな設定の割には微塵も悲壮感のないゆるさが、『SPL』路線のハードアクションを期待すると物足りないところである。ドニーさんのキャラもコメディタッチで、これは『イップ・マン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110206/1296983880)以降、演技に幅を出すようになったゆえに、新しいキャラに挑戦してみたくなったところであり、やっぱりジャッキーとの掛け合いをやるための役作りだったのかもしれませんね。


 久しぶりのドニー映画ということで大傑作を期待していたが、まあ『レジェンド・オブ・フィスト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111006/1317555045)あたりの、個々の要素は頑張っているけど諸々の都合でうまくいってない……という、並よりちょい上程度のランクに止まっていたな。

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