”それにしても金が欲しい”『ブレイド・マスター』


 中華映画祭り!


 明朝末期、皇帝の崩御と共に権勢を振るっていた宦官も失脚。行方をくらました彼の追跡と暗殺を、義兄弟の契りを結んだ錦衣衛の三人が命じられる。だが、任務を果たしたはずの彼らに、暗殺の手が迫る……。


 今回は『盗聴犯』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120811/1344655574)シリーズの三作目と合わせて二本。今作はチャン・チェン主演のチャンバラものです。
 錦衣衛である三人の義兄弟の一人チャン・チェンが、職務を遂行する中、岐路に立たされる。陰謀に巻き込まれ、職務に忠実であるか大金を得るかを選ぶことに……。


 中華映画祭りも集客が見込めるジャンルが限られてるからか、ちょっと似たようなのが増えてきたかな……。『フライング・ギロチン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140113/1389589446)、『ドラゴン・フォー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20141220/1419051262)シリーズとも共通するが、この手の辛気臭い陰謀絡みのチャンバラものは、いささか食傷気味である。忠誠と友情と金を天秤にかけて悩む悩む悩む……。あのムッツリ顏で悩んでるチャン・チェンは、やっぱりカッコいいけれどね。
 出世したいけれど、袖の下に使う金が足りない長兄。通い詰めてる遊女を身請けしたいけれど金のない次兄チャン・チェン。医者の娘との結婚を考えてるけど、ワル時代の兄弟子に揺すられてる末弟。それぞれにジレンマを抱え、ああそれにしても金が欲しい……。
 そして、職務で向かった討伐先で、大金を見せられて裏切りを持ちかけられたチャン・チェン、他の二人も金が欲しいのを知っているので独断で応じてしまうのであった。
 すんなりと事が運べば、この金さえあれば全て上手くいく……と思ってしまうのだが、実は長兄の出世は陰謀含みながら内定済み、末弟は二人に黙って肺病を抱えていて先が長くないことが明らかに。うーむ、全然金はいらなかったのではないか……そして、チャン・チェンも身請けしたい遊女に実は嫌われていたことが判明! 子供の頃の彼女を反逆者の子として娼館に売り渡したのはある錦衣衛……実は自分だったのだああああ! このあたり、オープニングの捕物でも、幼い娘を娼館に売り飛ばすぞと脅す人非人ぶりが伏線になっていたのだが、脅しだけじゃなく本当にやっていたのね……。
 過去は決して消えない。男はかくして、全てを失っていくのであった……。つうか、年齢設定がわかりにくいな。チャン・チェンはだいたい実年齢ぐらいの役なのか。


 今作はワイヤーワークは控えめで、殺陣の最中に1mほど飛ぶのには使っていても、屋根の上まで跳び上がれるかというと無理、というリアリティライン。三兄弟がそれぞれ違うタイプの刀を使ってファイトスタイルが違うのが見どころで、これはクライマックスでも生きてくる(まあ『楊家将』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140111/1389413623)と同じネタです)。『ブレイドマスター』の邦題もここから来てますね。もちろん『グランドマスター』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130609/1370788635)を連想させようというのもあるのでしょうが……。
 それよりも、ライバル役の一人が使う武器が倭刀なので、『刀のアイデンティティ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120320/1332241915)を思い出してちょっとテンションが上がった。刃のない部分を持って棒のように使ったりするアクションも面白い。


 陰謀チャンバラのフォーマットを超えた映画では全くないのだが、まあまあそれなりに楽しめた一本。

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