”ただの食いしんぼうではない!”『名探偵ゴッド・アイ』


 ジョニー・トー監督作。


 視力を失った元刑事のジョンストンは、その天才的な直感力で警察の解決出来ない事件を捜査し、報奨金を狙う探偵。ある事件の捜査で彼と出くわした女刑事は、自身が幼い頃に失踪した幼なじみの少女を捜してほしいと依頼する。同時に他の事件も手掛けるジョンストンに振り回されながらも、徐々に真相へと近づいていくのだが……。


 なんだかんだ言って『奪命金』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130217/1361104711)に『毒戦』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130315/1363322007)と、きっちり二本も公開された今年ですが、まさかの三本目も来ました、『盲探』! さすがにこれは原題ではわかりにくいということだったのか、変な邦題がついたな……。
 さらに最近恒例となった中華映画祭りの三本の内の一本となり、いや〜、扱い悪いなあ……。そうは言っても、ジョニー・トー監督作でありアンディ・ラウ主演作というフックがあるからこそ、未公開をまぬがれているのであろうが。


 さて『Needing You』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110822/1313988567)、『ダイエット・ラブ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101018/1287381025)、『イエスタデイ、ワンスモア』以来の、アンディ・ラウとサミー・チェンの四回目の共演作でもあります。『高海抜の恋』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120321/1332344243)も関連作だな……。さらに、ジョニー・トーとワイ・カーファイの共同監督でもあるので、そちらのブランドとしても注目。もちろんラム・シューも出てるよ!


 アンディ・ラウは盲目の探偵役だが、捜査に必要な能力として視覚の代わりに発達しているのは、聴覚もそうだが嗅覚と杖や手を使った触覚、味覚。そして、それら五感以上に、話を聞き出し脳裏で再現することで像を結び、事件そのもののイメージを再現するイマジネーションに優れている。
 盲目というハンディキャップを背負っているために、捜査には助っ人が必要で、それを務めるのがサミー・チェン演ずる刑事。必然的に会話劇や、映像で再現ドラマを仕立てていく面白さが、息のあった二人のコンビネーションによって描かれる。


 推理ものということで、割とかっちりした構成なのか……と思いきや、ラム・シューも絡む別の事件や、恋愛エピソードも絡んで、一応本筋なはずの話を置き去りに! が、実は寝かされている間も熟成していて、終盤になるとごった煮のようでいて、奇妙に各エピソードのつながりが浮き出てきてコクになる。
 『MAD探偵』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110308/1299510758)的設定をコメディ的にソリッドにした感じ……と最初は感じたのだけれど、後半どんどん展開が混沌としていくに連れて、より多彩な要素をぶち込んだ作品である感が強くなっていく。シンプルさを希求しまとめようとするのではなく、様々な展開を加えながらも成立させる、映画というのはより自由なものなのだ、と宣しているかのような奔放さを感じたところ。色々入ってるトンコツラーメンですね。でも、作り手の腕がいいから、濃いけれどバランスはいいんだな。


 やたらと食べ物で例えたくなるぐらいに食べるシーンが多く、主にアンディ・ラウがパクパクと物を食っており、フード理論もここに極まれり、という印象。僕自身、妻に「食べ過ぎ」「暴飲暴食」「食欲が怖い」などと言われておりますが、そのうち「ただの食いしんぼうと思ってもらっては困るね」と大見得を切ってみたいものであります。

MAD探偵 7人の容疑者 [DVD]

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Needing You [DVD]

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