”地獄まで追っていく”『ブリムストーン』
西部劇!
言葉の話せない助産師リズは、夫と二人の子とともに暮らしていた。だが、彼女の過去を知る牧師が着任し、その平和な生活を打ち砕いていく。夫を殺されたリズは街を逃れるのだが……。
イギリス発の西部劇。夫、息子、娘と四人で暮らすダコタ・ファニングの街に、新しい牧師がやってくるが、その顔を見て蒼ざめるダコタ。二人の過去には何が?という所から幕開け。
ナンバリングがされて1章から4章まであるのだが、時系列順に並べると、
3→2→1→4
となっていて、段々と遡っていく構成になっている。ガイ・ピアース牧師との関係性が肝なのはわかるが、しかし今回のガイ・ピアースは、ガイ・ピアース史上最悪で、まさに害・ピアースでしたね。一章ごとに変態が上乗せされ、SM、ロリコン、近親相姦と変態が三乗になっていく。
腹に触っただけで妊婦が産気づいたり、後々の不死身っぷり、神出鬼没さも合わせて、ちょっとばかり超自然的な怪物と化している印象さえあり。ひっくり返って語られる第1章では妻であるカリス・ファン・ハウテン(この人、実際にもガイ・ピアースのパートナーです)に、「妻の肉体は夫のものだ」と宣言して拒まれ、代わりに暴力を振るうというクズ夫ぶりを発揮。拒まれると、今度はまだ少女である娘を狙い始める……。ここで娘をかばってセックスを受け入れようとする妻だが、夫の標的はすっかり娘になっていたのであった……。演技とは言え、実際の二人の関係にヒビが入っちゃわないか心配になるストーリーだ。
この時点では、クズはクズだが、ある意味平凡な生き物だったのが、妻に自殺され娘を犯し、逃げた彼女を追い始めた時点から狂気度が増してどんどん怪物化していく。
逃げた娘は成長してダコタ・ファニングになり、娼婦になって身を隠していたが、そこに貸し切りパーティをするためにガイ・ピアースがやってきてしまうという悲劇を経て、物語は冒頭へとつながる……。
ガイ・ピアースのキャラはこの時代の男性主義、父権、キリスト教の歪みの象徴として設定されていて、映画自体『ウィッチ』と似たテーマを孕んでいる。娘として妻として母として虐げられる役回りをダコタ・ファニングが引き受け、対立し逃亡していくという構図だ。ただ、マジに女性の尊厳などについて考えている映画なのかと言うとちょい疑問で、こういう題材でもってサディスティック描写をやりたいだけなのかも、と言う気はする。
羊殺しや、腸を首に巻きつけて殺される旦那ちゃん描写など、なかなか楽しんでいる感じでいいのだが、一番最高だったのは、子役時代のヒロインと『ポンペイ』の人が、死体を豚に食わせつつおしゃべりしてるシーンですね。殺した後、全然焦ってないからどうするのかと思ったが、豚がいれば、死体の始末には困らないのか……。
他の娼婦キャラが乳を出しているのに、「ミステリアスなロリキャラ」で通して乳も尻も出さないダコタだが、少女のようにも見え、安達祐実的に妙に老けたようにも見え、父親の遺伝子も継いで若干人外化した感もあったり、さすがは『トワイライト』シリーズ最強の吸血鬼役だけあるな、という印象。子役とは目の色ぐらいしか似てないが、意外とマッチングするのな。
クライマックスの脱出展開のありそうでなかったアクションや、ラストの生死など、この主人公も父親の怪物的な不死身の遺伝子を継いでいるのかな、と言う気もしましたね。
ストーリーは『ジェーン』にも似ているんだが、百倍嫌な感じで、男のロマンチシズムは入り込む余地なし。いや、息子とか一瞬頑張ったがね……。なかなか楽しめました。

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