”校庭は誰のものだ?”『ゾンビスクール!』


小学生ゾンビが大暴れ! 『ゾンビスクール!』予告編

 イライジャ・ウッド製作のゾンビ映画

 作家志望のクリントは、田舎に帰って代理教員として働き始める。登校初日に幼馴染が同僚であることに気づくも、同僚には馬鹿にされ生徒にも笑われ散々な目に。ようやく一息つけた給食の時間、チキンナゲットを食べた女子生徒が突如、豹変する……。

 なぜか地元シネコンゾンビ映画がひさしぶりにやっている……。冒頭は鶏肉の屠畜場。いかにもアウトな感じで異物が混入したナゲットが製造されている。昨年のカナザワ映画祭で見た『ブラック・エース』でも屠畜シーンが出てきたが、それを彷彿とさせますね。

 チキンナゲットと言えば、全米のジャンクな給食の定番であり、これらがごっそりと小学校に輸出されていくのである。
 一方、作家志望ながら芽が出ずに田舎に帰ってきたイライジャ・ウッド、代理教員として自らの母校で働くことに。同僚は幼馴染で『スノーピアサー』の教師役も嫌な感じだったアリソン・ピル、『SAW』の脚本家リー・ワネル、そして体育教師に『スーパー!』のレイン・ウィルソンだ!
 アリソン・ピルと再会してちょっといい雰囲気になったのもつかの間、そのボーイフレンドはレイン・ウィルソンであった。挫折して田舎に舞い戻ってきたがプライドだけは一丁前のインテリア崩れと、そもそも田舎から一歩も出られずにいるマッチョという相性最悪の二人は、早速犬猿の仲に!

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 そんなムードの赴任初日、最初の授業で早くもゾンビが発生する……!
 ゾンビではあるんだけど、あくまで子供のゾンビであり、子供らしく「走るタイプ」。さらに子供同士はどんどん感染していくんだが、思春期を過ぎたらもう伝染しなくなる。すなわち大人は感染しない。
 人体を引き裂くパワーがあるので、もちろん噛まれると危険なのだが、感染のリスクがないために、いわゆるゾンビものの緊迫感は薄い目。さらに元気な割に耐久力もさほど高くない。学校に置いてある日用品でも対抗が可能である。

 イライジャ・ウッドと言えばロバート・ロドリゲスの『パラサイト』で、高校を舞台に宇宙人の侵略と戦ったものであるが、今作はその系譜につながるB級スピリットで、あの主人公が成長して(小さいままだが)帰ってきたかのような感じ。

 「ド田舎の教師」というのが、いかに閉塞感に満ちた存在であるかがうかがえて、その辺りちょっと怖い。呆れるほど鈍感なのに、自意識ばかり発達しててコンプレックスまみれで、未来だけはある子供たちに囲まれている中で鬱屈だけが溜まりつつも、どこにもはけ口がない。そんな彼らが、自己解放の時を迎える……というと聞こえはいいが、妬みの対象である子供がゾンビ化したことで、そいつらを蹴散らしてカタルシスを得るわけで、あまりいい話ではないかな。そのあたりを表現しているとっつぁん坊やのイライジャ・ウッドと、小汚いレイン・ウィルソンがハマり役ですね。ちょっと『ワールズ・エンド』に似てるかもな。

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 ギャグの間の取り方が上手く、テンポもいいので退屈せずに最後まで楽しめる映画。人体破壊などのR指定描写もしっかりやってるが、たまにシネコンでこういうのがかかると嬉しいね。