”僕は木で君は車で”『エージェント・ウルトラ』
ジェシー・アイゼンバーグ主演作!
田舎町のコンビニでバイトしながら、ゴリラのマンガを描いているマイク・ハウエル。ダメな男だが、唯一の自慢は同棲している恋人のフィービー。彼女にプロポーズすべくハワイ旅行を企画するのだが、謎の発作を起こし飛行機を乗り逃してしまう。傷心のある日、仕事中の彼に謎の女が近づいてきて……。
アイゼンバーグとクリステン・スチュワートと言えば、『アドベンチャー・ランドへようこそ』という、後のクリステン不倫事件を予見した傑作がすでにあるわけですよ。今作は「舐めてた”自分”が殺人マシーンだった」もので、『アジョシ』とか『イコライザー』と設定は似ているが、主人公一人称の物語。
恋人と海外旅行などで街を出ようとしたら、謎の発作が起きていつも断念せざるを得ない男ジェシー・アイゼンバーグ。そんな彼を監視する組織があって……。ものすごいチープな会議室だけみたいなセットから、CIAが彼の動向を常に見張っている。
主人公はバイトしながら葉っぱ吸ってマンガ描いてるダメな男で、だけどそれは実はCIAによって記憶を奪われて飼い殺しにされているのだ、という設定。本人からしたら、そんなことまったく想像の外なので全然主体的に動き出さず、代わりに彼に同情するCIA職員がどうにかして彼を救い出そうとする展開が話の主軸になる。そう、CIAは遅ればせながら飼い殺しにしていた彼の抹殺を決めていたのだ……。
ジェシー・アイゼンバーグは実は改造人間で通称「ウルトラ計画」によって作られた……と言えば、こないだの『ブラック・スキャンダル』ではあまり語られてなかったが、バルジャーが刑務所で薬物実験されていたのもCIAによるこの計画だったのだよね。単なる殺人者になった失敗例がバルジャーで、もしも成功していたら……というのが本作だとして見ても面白い。
「俺はまだ本気出してないだけ」ものというわけではなく、主人公は別段そんな力を望んでいるわけではない。むしろ人生の軛になっているので解放を望んでいる……んだけど、本人は原因がさっぱりわかっていないので、全然自分では動かない。結果として、安っぽいCIAパートが長々と続いてしまい、勝手にネタを割っていくのでいまいち一体感が薄いのだな。
戦闘能力にリミッターを掛けていた暗号が解かれ、襲ってくる「タフガイ」との死闘が始まってやっとエンジンがかかる……んだが、ここでもまだ主人公は自動的に戦って倒してしまった、という体裁なので、観客には全部わかってる事態の推移が全然飲み込めていない。このあたり、非常にダラダラと感じられて歯がゆい。
終盤はさすがに爆発する。ラストの長回しバトルとエンディングのアニメは良かったし、愛に着地させる展開もいい……んだが、やっぱり中盤までのたどたどしさが足を引っ張ってるな。
ゾンビものを思わせる田舎町が封鎖されるシチュエーションも好きだし、確信犯的なB級テイストで好きなエッセンスは色々と詰まっているので嫌いにはなれないんだが、どうにもこうにも物足りない映画である。もう少し昔、『ゾンビランド』のすぐ後ぐらいに見たら超面白かったかも、という気がするな……。
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