"空に囚われて"『フライト・ゲーム』


 リーアム・ニーソン主演作。


 いつもの勤務と同じく、乗客を装って飛行機に乗り込んだ航空保安官ビル。だが、その彼のもとに、1億5000万ドルを振り込まなければ乗客を20分に一人殺す、とのメールが入る。同僚の悪戯を疑うビルの前で、最初の死者が……。地上の上司と連絡を取るビルだが、彼に疑いの眼が向けられる……。


 前作『アンノウン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110508/1304842033)が惨敗ものであったジャウム・コレット・セラ監督とリーアム・ニーソンのコンビが再び……ということで、監督に『エスター』の貯金が残ってる内に、なんとか盛り返して欲しいと思っていたところ。


 今回の主人公はまたいつものリーアム・ニーソン。娘を失ってやさぐれているアル中男が飛行機に乗るって、『THE GREY』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120824/1345735585)のあいつの前日譚のようではないですか。もちろん『96時間』http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130112/1357899781)シリーズも引きずっている定番設定。そろそろジェイソン・ステイサム化しつつあって、そのうちどれがどの映画やら区別がつかなくなるんではないか。元警官で空港保安官に転職した人が、軍人とタイマンで勝ってしまうあたりも、他のキャラを引きずっているなあ。


 しかし今作もまた、謎の設定と不可解な状況の張り巡らせ方こそ面白いのだが、解決が近付くにつれてどんどん腰砕けになり、細かい部分はスルーされていく、いかにも雑なサスペンスでありました。結局のところ、途中でいくつかの要因によって「犯人ではない」と結論づけられた人物が、それに対する反証なしに「やっぱり犯人でした」と言われてもなあ……。「身元に問題はない」「他の人は見てない」とか言ってた証言はなんだったんだ……。解決の糸口がつかめるところも偶然すぎるしな。まあそれでも、キャラ描写さえぶれまくっていた『アンノウン』よりはマシだと思うが……。


 そのあたりがいい加減なので、結局はリーアムが民間人だろうがお構いなしにいたぶりつつ、自らの正義のために爆走するいつもの映画として見るしかなくなるのである。『96時間3』も来年公開だが、待ちきれない人はこれでも観て我慢するのがいいと思うよ。


 『ドン・ジョン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140402/1396432878)ではJGLのメンターになったジュリアン・ムーアだが、今作でもリーアムを導く役回りになっている。若者だけでなく、あんなでっかい中年が拗ねてるのまで諭してやらんといかんのだから大変である。
 クライマックスはさすがに迫力があったが、それも『スネーク・フライト』の方が面白かったなあ。「衝撃のラスト!」とか言ってる映画は、やっぱり信用ならんというサンプルがまたひとつ、という映画でありました。

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