『秒速５センチメートル』

秒速5センチメートル 特別限定生産版 DVD-BOX

　スカパーで鑑賞。

　転校によって離ればなれになった少年と少女。１３歳の冬、１８歳の夏、そして大人になって……。三本の短編で描かれる物語。

　とりあえず背景の美しさと、ワンカットワンカットで情報を見せ切るコンテの力に愕然。音楽の合わせ方も上手いし、これは浸って見られる作品だ。こいつら、親なにしてんの？と思わず突っ込んでしまう設定の甘さも、主人公たちが存在する一瞬と、その集合である数時間を切り取るような、時間経過を巧みに描いた演出でカバー。単に美しいだけでなく、計算された映像の力が素晴らしい。

　その割にモノローグが多く、ちょっと説明的なのが気になったなあ。半分に削っても、お話も主人公の気持ちも全て伝わると思うけど……。晩飯食いながら、モノローグの真似して、

「今日食べたチヂミは、本当は遠い遠い国のもので」

「でも彼女に伝えられなかったゆで豚の味は」

とか言ってゲラゲラ笑ってしまった。まことにここは惜しい。
　宇宙の彼方で女子高生が一人、ガンダムで戦う『ほしのこえ』は、やりたいことはわかるけど、という程度でいまいち感心しなかったが、これは割と良かった。
　しかし甘っちょろい話で、あまりストーリーテリングするタイプの監督じゃねえな、この人は。ミュージッククリップでも作ったらいいんじゃないの、とか考えてたら、三本目はほぼ山崎まさよしの主題歌のみでクリップ化！　ま、まさよしぃぃぃぃぃぃっ！　なるほど、もともとゲームのオープニングアニメとか作ってる人なんだよね。ジャブから入り、コンビネーションを駆使してフィニッシュブローにつなげる。いやあ、ちゃんと自分の資質がわかってて、作れるものを作るってのは才能の一つだよな。

新海誠美術作品集 空の記憶~The sky of the longing for memories~