『ヘルボーイ/ゴールデンアーミー』

 地獄童子、帰還!


 パート2物の常として、前作のような悲哀はやや薄くなっているものの、傑作『パンズ・ラビリンス』を経た事でビジュアル面のこだわりは数段グレードアップ! 
 やっぱり映像感覚が素晴らしく、わかりやすいダイナミズムと並行して、「見た事のない造形」が提供されるクリーチャー・デザインが素晴らしい。
 一見、不合理なようでいて機能的、異形でありながら整合性が取れている美術の完成度に、10分に一度、はっとさせられる。
 手の平大から、数m、十数mまで様々なサイズで登場する怪物たち。それらスケールの違いごとの迫力を余すところなく描いた、パニックムービーとしての手法、モンスター映画としての手法、大怪獣映画としての手法全てを包括した技術の懐の深さにも唸らされる。


 他作品では美しい存在として描かれがちなエルフを、闇に属する異形として描き、それでいて心の純粋な美しい存在として昇華させた設定も美しく、ヘルボーイという異形の主人公に対する、作中の人間たちの差別意識と合わせて、我々観客の暗黒面を鋭くえぐり出す。
 差別され、石もて追われる異形の者たちの悲哀は、もてない不細工な男たちのコンプレックスと重ねて描かれ、その心の美しさを女たちが理解するラストと合わせて、悲しさの中にも希望を見出して終わる。くそっ、泣かせるなよ、ちきしょうっ!


 ラストシーンで、人間を守る事を放棄して去って行く異形の者たちの選択の行方が、果たして次作で描かれるのか? 楽しみで仕方ない。