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 WOWOWで放送したものの完全版。


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 馬映画。

”僕は死にましぇん!”『ロスト・レジェンド』


『ロスト・レジェンド』予告編

 スーチー主演作! 

 伝説の盗掘師と言われながら、廃業してアメリカに渡った三人。だが、米国企業の古墓発掘プロジェクトに乗せられ、再び中国へと舞い戻ることに。奇しくも、その遺跡はかつて、フー・バーイーとワン・カイシェンの二人が、愛した女を失った地だった……。

 中華映画祭りも三本目。この日は一日に四本も観てしまったのだよ……。その中でも割愛寸前だったのがこれ。
 チェン・クン、ホアン・ボー、スーチーの三人が墓掘り。こうして男二人、女一人だと三角関係が定番かと思いきや、実は男二人はかつて目の前で死んだアンジェラ・ベイビーを今も想い続けている……という設定なのであった。

 今、もっとも脂の乗っている四人が揃い、なかなかの豪華キャストだが、それぞれハマり役を見せる。チェン・クンのイケメンすぎていちいち女を惑わせすぎなのにそれに無自覚なキャラとか……スーチーのおなじみツンデレぶりとか……ホアン・ボーさんの非モテ純愛キャラとか……アンジェラの健康的なのになぜか幸薄い感じとか……定番ですね!

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 漫画っぽい組み合わせだが、原作はウェブ小説なのな。なぜかいきなりアメリカに行ってて、しかも大して話に関係ないまま中国に帰ってくるあたり、無駄に金かかってる感じですが、VFXもアメリカの会社が豪快に担当。今回の中華映画祭りの中では、もっともビッグバジェットではなかろうか。
 まあそれゆえに冗長と言うか、金かかったCGの見せ場にこだわりすぎててテンポがイマイチだな……。

 『神なるオオカミ』と同じく、文化大革命直後に遺跡を訪れた男二人がアンジェラベイビーと出会い、日本軍の地下基地を発見して禁忌に触れてしまうあたりの話が前振りとしてあり、まさにそれゆえに墓掘りになった二人が、運命に導かれるようにその遺跡に舞い戻ってくる。お話はまあまあ丁寧に作ってあると思うのだが、いかんせん冗長で、中盤は相当にだれてしまった。
 またメインキャラ三人が三人とも煮え切らない性格で、過去に囚われた男二人を引っ張るかと思われたスーチーさんも、酔った勢いでチェン・クンと一回だけセックスしたことを引きずってモジモジモジモジ……。くどいねん! チラシはタンクトップですが、トゥームレイダー感は別にありません。

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 全く面白くないかというとそんなことはないが、キレッキレのチャウ・シンチーと『SPL2』を見た後では、いかにも分が悪い。『妖魔伝』とか『魔界戦記』とまとめて公開なら、まあまあ楽しめたんじゃないですかね。あ、全部チェン・クン主演作だ……。

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”ムエタイ見切ったり”『ドラゴン×マッハ!』


「ドラゴン×マッハ!」予告編

 『SPL』続編!

 香港で闇の臓器売買を繰り返す組織に潜入した捜査官チーキット。だが、正体を見抜かれ、タイに移送され組織の息のかかった刑務所に収監されてしまう。臓器売買の拠点でもある刑務所の所長が彼に執拗な拷問を加える中、正義感の強い看守チャイはそれを苦々しい思いで見ていたのだが……。

 カンフー系キャストであるウー・ジンがドラゴン、おなじみ『マッハ』シリーズが代表作のトニー・ジャーがマッハということで、ついた邦題は『ドラゴン×マッハ』という安っぽいものになりました。『SPL2』と銘打たれていますが、主要キャストはごっそり入れ替わり、同一キャストであるサイモン・ヤムも別の役なので、一体何がそもそも続編なのか、と誰もが思うところなので、まあ仕方ないか……。
 これまた中華映画祭り扱いで、『バトルヒート』や『マッハ無限大』はシネコンでかかったのにな……悲しい!

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 さて、キャストが入れ替わって、じゃあまったくの別物なのか?というと、実はそうではなかったりするのが面白いところ。黒社会との取引や潜入捜査、難病が絡んだ第一作のムードをそのまま引き継ぎ、主役がいきなりヤク中になっているハードコア展開。麻薬中毒の香港の潜入捜査官と、難病の娘を抱えたタイの刑務官。立場も違い、交わるはずのなかった二人の男の運命が交錯する……。

 普段は正統派スタイルのウー・ジンがスピードと身体能力重視の高速ケンカファイトスタイルにチェンジし、序盤ではご存知ムエタイトニー・ジャーと激突! これが非常に荒っぽい戦いでいいのだが、そこに絡んでくるのは台詞が一言もない殺し屋!(聾唖という設定らしい) これが前作のウー・ジンのオマージュ的なキャラクターで、『狂舞派』のベビージョン・チョイ君を太極拳を出させる間も無くナイフで惨殺! 関係ないが、チョイ君は大変色白で、ノワール向き俳優がズラリと並ぶ中で明らかに浮いてて、犯されそうと思っちゃったね。

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 上司はサイモン・ヤムで、この人はウー・ジンを助けるために自分も他の部下の命も一切省みないという、なかなかの人格破綻者ぶりを見せてくれる。
 さらにロー・ワイコンさんがトニー・ジャーの同僚としてタイ人側のキャストに。この人はムエタイやってたから、タイで修行してタイ語覚えてた時代があったのだろうな。

 これだけでもかなりお腹いっぱいなメンツなのだが、実の弟に心臓の摘出を迫る黒幕をルイス・クーが、『毒戦』などと同じく生にしがみつき続けるキャラを坂本龍一みたいな髪型で熱演。そしてその腹心である刑務所所長にマックス・チャン……! 脱獄しようとする囚人を自ら素手で倒すというアクティブ極まりない自己セキュリティ所長である。

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 ウー・ジンが封印した分、このマックス・チャンが正統派クンフーアクションを担い、流麗なテクニックを存分に見せ、クライマックスではウー・ジントニー・ジャー双方を迎え撃つことに。二人が同時に戦い始める瞬間がちょっとだけ「ドラゴン×マッハ」であったな……。しかしここからのマックス・チャンが圧倒的に強い! 思えば、数々の映画で猛威を振るったトニー・ジャームエタイ、当然カンフーっぽい相手との対戦もあったが、正直ここまでの使い手を相手にするのは初では……? やはりというかまさかというか、必殺のダブル飛び膝、テンカオ、肘打ちをことごとく見切るマックス・チャン!

 カンフーがムエタイに勝った!

と思ってしまった瞬間でしたね。いや〜、しかしあんな合わせ方、カウンターの取り方があるのだな……と思ったが、実際に試合で狙うのは見切りが神がかり過ぎなんで、やめておいた方がよさそうですね。
 この2対1でもものともしないマックス・チャンが、間も無く公開『イップ・マン 継承』ではドニーさんとサシの勝負をしますんで、そちらもお楽しみに……。

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 前作を整理して若干のパロディ風味も加えつつ、よりブラッシュアップしたアクションも加えて完成された現代カンフーアクションの傑作で、こんなバカな邦題つけられて本当に気の毒になってしまう。主題歌「殺破狼」も最高ですよ!

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”魚類的な彼女”『人魚姫』


「人魚姫」予告編

 チャウ・シンチー監督作!

 成り上がりの若き実業家リウは、自然保護区を買収。埋め立てのために海洋生物を追い払うべく、強力なソナーを設置する。海の底に住む人魚族も、ソナーによって大きな被害を受け住処を追われる。リウの行動を阻止するため、人魚族は人間に変装させたシャンシャンを暗殺者として送り込むのだが……。

 中国本土で大ヒットしましたが、日本ではまさかの中華映画祭り扱い! 東京、大阪だけ! それでもまあ公開しただけマシか……。ゴールデンアジアとは何だったのか……?と今になってよく思う。

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 そんなわけで2017年の映画初めはこいつになりました。新年一本目がチャウ・シンチーとか、なんていう贅沢だよ。上映時間はわずか94分。タイトだ!

 筋立てはおなじみの古典『人魚姫』がベースなのだが、いつも通りチャウ・シンチー映画のガジェットが満載。ヒロインは登場時は必ず変なメイクをしているあたりも踏襲されている。またヒロインはど新人を連れてきた……ということだが、セシリア・チャンしかり、ヴィッキー・チャオしかりで、魅力の引き出しっぷりが凄まじい。女性の美しさって、メイクしておすましすれば発揮されるってもんじゃないんだよな。ちょっとした仕草や日常的な表情の中にこそ美があり、生きたキャラクターの躍動感、こんな人がここにいると確かに感じさせる存在感が画面に焼きつき、我々に届くのだ。

 主演のドン・チャオはここ数年『ドラゴン・フォー』シリーズで観てきたけど、そちらでは「冷血」と呼ばれるクールな男を演じておりました。

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 今回は成り上がりの若き大富豪役。一代で上り詰めた手腕の持ち主だが、内心は孤独……。『食神』のチャウ・シンチーの役とも通じるキャラクターで、子供番組の司会を経て大ブレイクしスターとなった頃のシンチー自身の投影でもある。もともと心が狭い上に増長し、初心を忘れてしまっていたあの頃……。

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 ヒロインとの出会いを経て、その失った心を取り戻すあたりも『食神』と同じで、そのきっかけとなるのがチャーシュー丼ならぬ鶏の丸焼きというソウル・フードであるのもそっくり。いや、もう『食神』観てる人も少ないんだろうな……。若ければシンチー自身が演じていたであろうことも含め、ベッタベタの定番芸である。
 しかし、「ムッツリした櫻井翔」ぐらいのイメージだったドン・チャオだが、あんな素敵な笑顔ができたのだな……。

 演出は、かつてを凌いでキレッキレで、天丼的にギャグを際限なく盛っていくにも関わらず少しもストーリーを淀ませずスムーズに流れていく。ネタは足し算なのだが、演出は引き算でどんどん余計なものが削ぎ落とされており、大胆な省略と計算され尽くした画面作りで繋いでいく。ゲッターロボブルース・リーと、ネタの盛り方こそタランティーノ的だが、演出の切れはイーストウッドあたりにも迫りつつあるのではないか……? 『ジャージー・ボーイズ』ぐらいのところにはすでに来ているんじゃないか。
 『少林サッカー』の頃からさほど変わっていないように見えるCG表現も、大胆かつ戯画的な絵作りの中ではマイナスにならず、むしろ味付けになっているかのような……。

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 『食神』と違うところは、かつてはせいぜいお料理番組の大ヒットで人気者に!というスケールの話に過ぎなかったところが、巨大な経済成長を遂げた中国において、一企業、一富豪が環境をも捻じ曲げ破壊する力を持っている(もちろん、表現は漫画的だが)ということに踏み込んでいるあたり。土地を買い上げ、海を埋め立てて際限なく膨張していくあたりは、経済的に豊かになるにつれて肥え太っていく富裕層の姿であり、その際に環境の汚染やそこに住む生物が顧みられることはない。
 もちろんその姿は、海洋進出を続け、深刻な環境問題を国内に抱える中国そのものでもあるし、海や国境を超えた先の世界の環境にも通じる普遍的な問題でもある。
 香港発のチャウ・シンチーも、映画市場としてもとてつもなく巨大になった中国本土を意識した作品作りを当然していて(残念だが、公開時期や規模を見ても、もはや日本のことは念頭になかろう)、そこで彼が投げかけたのが「綺麗な空気や水がなければ、いくら儲けても意味がない」という素朴なメッセージであることは記憶しておきたい。

 しかし、重ね重ね言うが、この傑作がこの公開規模とはな……。東京、大阪は満席スタートになってまあ良かったが、なんとか地方にも届けてほしいものである。

『人魚姫』公開記念/チャウ・シンチー コレクション [DVD]

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”我が剣は何者にも折れぬ”『こころに剣士を』


映画『こころに剣士を』予告編

 フェンシング映画!

 ドイツ、そしてソ連に相次いで占領された小国エストニア。ドイツ兵という過去を持つためソ連の秘密警察に追われる元フェンシング選手のエンデルは、田舎町ハープサルに身を隠す。圧政で親を連れ去られた子供達が多く暮らすその地で小学校教師に身をやつしたエンデルは、課外授業で彼らにフェンシングを教えるようになるのだが……。

 スターリン政権下のエストニア、という、他の映画ではなかなか観られないものが観られる。いつ密告されて収容所送りにされるかわからない中で、元ドイツ軍兵士だったという過去を持つ主人公は、田舎を転々として逃げ回っている状態。新たな勤め先の学校で体育教師になるのだが、課外授業でスキーをやろうとしたら板を取り上げられてしまう。
 一応、都会の大学を出ているせいで田舎者の校長にコンプレックスを抱かれており、事あるごとに邪魔をされてしまう。さあ、いったいどうしたものか、ということで、むくむくと頭をもたげてくる本性……実は彼は、元フェンシング選手だったのだ!

 体育館でこっそり練習しているところを女生徒に見られてしまうのだが、その練習ももう習い性になっていて、やらないと落ち着かない。正体がバレる危険があるけれど、でも剣持ちたいんだ! その気持ちが、初めてフェンシングを目の当たりにしてワクワク全開の女生徒マルタちゃんとシンクロする。試しにフェンシングで課外授業の募集を始めて見たら、学校中の子供が押し寄せる。

 「不器用ですから……」という感じで、あまり愛想の良くない、子供も好きじゃない主人公なんだが、ここはもう腹をくくってやるしかない、ということで、木の枝を拾って剣にするところからフェンシング教室が始まった。
 全編にその競技が好きでしようがない気持ちが溢れていて、練習のイロハから始まり、いかなる妨害があろうがこれをやりたい、他のことでは代わりは決して効かないんだ、ということが繰り返し示される。それこそが人間であり、自由であり、文化であり、スターリン時代の圧政下でも、それを押しとどめることは絶対にできないのだ。
 住民同士が互いに監視しあい、密告が奨励され、些細なことで次々に収容所送りにされて二度と帰ってこない。日本でも戦前の隣組によって同じような光景があったわけだが、本当にクソだな……。そんな恐怖に満ちた時代において、「剣士」であることの意味は? 「教師」は「大人」は子供たちに何を示すべきか?

 時代と舞台以外は全くと行っていいほど目新しいものはない、スポ根もの、部活ものの定番のようなお話で、先生の恋愛話まであったりして、ベタだなあ……!と思うんだけれど、それが全くマイナスになっていない。『ベストキッド』みたいに、クライマックスは試合シーンで弟子が勝って締めじゃないとだろ、と思ってたら、ちゃんとやってたのも好印象。三人で一チームなのだが、決勝戦では一人怪我してしまい、補欠の出番。登場するのはもちろん……あいつだあああああ!

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 他のチームのコーチは女性の体育教師が多いが、やたらときっぷが良かったり、試合のシーンでめちゃめちゃ声出してたりするあたりが地味に既視感があったりと、ちょっとした描写がリアルさを積み重ねてるのもよし。

 恋愛話、同僚の女教師の方が最初は気がある感じで、フェンシング野郎は「不器用ですから……」みたいなよくわかってない顔をしているのだが、段々と逆転して積極的になってくる。密告によって追い詰められ、正体を明かし、いよいよ別れの時を迎え……。連行されたおじいちゃんに「これからは大人だ」と言われてた少年が、せっかくの別れのキスシーンで「電車出ちゃうよ! 急いで!」とまったく空気を読めない童貞感を出していたあたりが皮肉ですね。

 時代が時代だけに重い話ではあるが、圧政もスターリンの死によって終わりを迎え、この物語も実話に即した結びで終わる。じんわりと心にしみるラストが心地よく、2016年の結びにふさわしい映画でありました。いや、もちろん『バイオハザード:ザ・ファイナル』でも良かったけどね!

今日の買い物

ストレンヂア』BD

 DVDから買い換え。

”私の名は。”『バイオハザード:ザ・ファイナル』(ネタバレ)


映画『バイオハザード: ザ・ファイナル』日本版予告編2

 シリーズ、ついに完結!

 ウェスカーの罠だったホワイトハウス決戦を生き延びたアリス。彼女の前にレッドクイーンが現れ、48時間以内に人類最後の居留地が殲滅されると伝えられる。阻止するためには、アリスがハイブにやってくること……。再びラクーンシティに向かったアリスの前には、いくつもの再会が待ち受けていた……。

 2002年の第一作から14年、とうとうこのシリーズも終わります。邦題で勝手に「ファイナル」とつけられているのでは、と疑いましたが、ちゃんと原題も「FINAL CHAPTER」となってました。
 で、今回、たぶん初めて明言されたけれど、作中でも第一作のアリスの目覚めから10年が経過していることが判明。

「目覚めてから、もう10年もこんなことばかり続けている……」

 と、戦いに飽いたように語るアリス。恋人も家族もなく、運命に翻弄され戦いに明け暮れる日々……。その戦いにもついに終わりがくる日がやってきた。明かされるアリスの正体、そして過去……!

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 冒頭で、アンブレラの創設者の一人マーカス博士と、老化が急速に進行する奇病をわずらった娘のアリシアこそが、Tウイルスのすべての発端であると語られる。マーカス博士はアンブレラ社と対立して消され、アリシアのその後は不明……ということだが、ハイブの地下深くに冷凍睡眠されたアンブレラ社首脳陣と一部富裕層と共に、老いながらもまだ生存していた。
 その幼少時の姿をコピーして作られた人工知能がレッドクイーンである、ということも語られるのだが、このレッドクイーン役は監督とミラの娘エヴァ・アンダーソンが演じているのね。

 思えば三作目から、アリスのクローンが大量に登場して画面上におけるミラ様占有率はどんどん上がっていき、これは双子、タイムトラベル、クローンなどで二役に命賭けてるジャン・クロード・ヴァン・ダムをもすでに超えてるな……と思っていたのだが、今作ではまさにそれを決定づける一打を放つ。
 アンブレラ創設者の娘アリシアの、病気という因子を排除したクローンこそがアリスだったのだっ! すなわちアリシア・マーカス=レッドクイーン=アリスということで、主要登場人物、キーパーソンのほとんどが同一人物であることが明らかに。クライマックスで対面している三人が、実は全員ミラ様であるという驚異の占有率。どこを切ってもミラ、ミラ、ミラ……なんというエゴ、なんという夫婦愛、なんという私物化っぷり。その強烈な主張には圧倒される思いである。
 四作目ではアリスがオリジナルだ、みたいなことをウェスカーが言っていたので、多分これ、早くても前作ぐらいの時点で出来た後付け設定なんだろうな……と思う。シリーズのラストでどんでん返しを演出するための……。先日、ひさびさに第一作を見直したが、この頃はマジに非人間的美貌のミラ様だけど、大きな矛盾こそないがこのラストにつながる伏線は見えなかったぜ。

 ただ、このところ定番になった冒頭の「My name is Alice」が、もう一回発せられた時に以前とはまったく違う意味合いを伴って聞こえる、というラストは非常に美しい。本編は終わったが、全てが収束したわけではなく戦いはまだ続くだろう、と示唆される。だが、「昨日」を手に入れたことで「今日」生きる実感を手に入れ、自己を回復したアリスのもはや「明日」を恐れなくなった姿からは微塵も絶望は感じられず、生きていくことへの希望が満ち溢れていて、それがある限り彼女は決して負けないだろうと思わせる。

 嫁LOVE映画なのは間違いないが、監督の分身的キャラクターは一切登場せず、恋愛要素は欠片もなし。ただひたすらにミラ様を格好良く撮ることに注力しているし、今作はストーリー的にも、アリスという女性のアイデンティティの回復と確立が描かれる。妻が好きな俺が好き、なんじゃなくて、ポール・WS・アンダーソンは本当に一人の女性としてのミラのことが好きなんだなあ……という気がして胸が熱くなるんである。子供ももちろん好きで、おばあさんになっても好きだよ……という……。
 思えば恋愛関係から始まって、四作目の頃に結婚、一人目の子供と共演し、二人目の子供が生まれた時点で完結という、二人の歩みを語るに欠かせないシリーズになった。人生の充実した時期に好きな人と物作りに取り組めたということは大変素晴らしいし、出来は確かにたかがしれているかもしれないが、女優のアナルレイプシーンを合意なしで撮ったベルトルッチなんかより、遥かに人間として上等じゃないですかね。

 映画の中身は、得意の空撮や、今回採用したロケ撮影はなかなかいい雰囲気で、相変わらずのゲームっぽいステージクリア展開もらしくて良いのだが、アクション編集が細切れで全然ダメで、クライマックスも「え? ガイ・リッチーのホームズ?」「え? ロボコップ?」とパクってるのかオマージュなのか苦しい展開が続き、こりゃあつらい!
 才能の枯渇っぷりが甚だしく、息も絶え絶えで、もはや何の引き出しも残っていない。それでもミラ様LOVEだけを胸に、這うようにラストに進んでいく監督の姿に号泣ですよ! 頑張れ! あとちょっとでゴールだ! 最後は監督に肩を貸して夫婦ゴールインを決めるミラ様、笑顔で迎える娘ちゃん……!

「おめでとう」
「おめでとう」
「めでたいなあ」
「おめでとうさん」

 妻に、ありがとう
 バイオに、さようなら
 そして、全てのPWSAファンに
 おめでとう

 何にせよ『X-MEN アポカリプス』などと同じく、とりあえず「終わった」ということが感慨深いラストでありました。今後もなぜかテレビでしつこく放送され続けてほしいな!