”ムエタイ見切ったり”『ドラゴン×マッハ!』


「ドラゴン×マッハ!」予告編

 『SPL』続編!

 香港で闇の臓器売買を繰り返す組織に潜入した捜査官チーキット。だが、正体を見抜かれ、タイに移送され組織の息のかかった刑務所に収監されてしまう。臓器売買の拠点でもある刑務所の所長が彼に執拗な拷問を加える中、正義感の強い看守チャイはそれを苦々しい思いで見ていたのだが……。

 カンフー系キャストであるウー・ジンがドラゴン、おなじみ『マッハ』シリーズが代表作のトニー・ジャーがマッハということで、ついた邦題は『ドラゴン×マッハ』という安っぽいものになりました。『SPL2』と銘打たれていますが、主要キャストはごっそり入れ替わり、同一キャストであるサイモン・ヤムも別の役なので、一体何がそもそも続編なのか、と誰もが思うところなので、まあ仕方ないか……。
 これまた中華映画祭り扱いで、『バトルヒート』や『マッハ無限大』はシネコンでかかったのにな……悲しい!

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 さて、キャストが入れ替わって、じゃあまったくの別物なのか?というと、実はそうではなかったりするのが面白いところ。黒社会との取引や潜入捜査、難病が絡んだ第一作のムードをそのまま引き継ぎ、主役がいきなりヤク中になっているハードコア展開。麻薬中毒の香港の潜入捜査官と、難病の娘を抱えたタイの刑務官。立場も違い、交わるはずのなかった二人の男の運命が交錯する……。

 普段は正統派スタイルのウー・ジンがスピードと身体能力重視の高速ケンカファイトスタイルにチェンジし、序盤ではご存知ムエタイトニー・ジャーと激突! これが非常に荒っぽい戦いでいいのだが、そこに絡んでくるのは台詞が一言もない殺し屋!(聾唖という設定らしい) これが前作のウー・ジンのオマージュ的なキャラクターで、『狂舞派』のベビージョン・チョイ君を太極拳を出させる間も無くナイフで惨殺! 関係ないが、チョイ君は大変色白で、ノワール向き俳優がズラリと並ぶ中で明らかに浮いてて、犯されそうと思っちゃったね。

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 上司はサイモン・ヤムで、この人はウー・ジンを助けるために自分も他の部下の命も一切省みないという、なかなかの人格破綻者ぶりを見せてくれる。
 さらにロー・ワイコンさんがトニー・ジャーの同僚としてタイ人側のキャストに。この人はムエタイやってたから、タイで修行してタイ語覚えてた時代があったのだろうな。

 これだけでもかなりお腹いっぱいなメンツなのだが、実の弟に心臓の摘出を迫る黒幕をルイス・クーが、『毒戦』などと同じく生にしがみつき続けるキャラを坂本龍一みたいな髪型で熱演。そしてその腹心である刑務所所長にマックス・チャン……! 脱獄しようとする囚人を自ら素手で倒すというアクティブ極まりない自己セキュリティ所長である。

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 ウー・ジンが封印した分、このマックス・チャンが正統派クンフーアクションを担い、流麗なテクニックを存分に見せ、クライマックスではウー・ジントニー・ジャー双方を迎え撃つことに。二人が同時に戦い始める瞬間がちょっとだけ「ドラゴン×マッハ」であったな……。しかしここからのマックス・チャンが圧倒的に強い! 思えば、数々の映画で猛威を振るったトニー・ジャームエタイ、当然カンフーっぽい相手との対戦もあったが、正直ここまでの使い手を相手にするのは初では……? やはりというかまさかというか、必殺のダブル飛び膝、テンカオ、肘打ちをことごとく見切るマックス・チャン!

 カンフーがムエタイに勝った!

と思ってしまった瞬間でしたね。いや〜、しかしあんな合わせ方、カウンターの取り方があるのだな……と思ったが、実際に試合で狙うのは見切りが神がかり過ぎなんで、やめておいた方がよさそうですね。
 この2対1でもものともしないマックス・チャンが、間も無く公開『イップ・マン 継承』ではドニーさんとサシの勝負をしますんで、そちらもお楽しみに……。

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 前作を整理して若干のパロディ風味も加えつつ、よりブラッシュアップしたアクションも加えて完成された現代カンフーアクションの傑作で、こんなバカな邦題つけられて本当に気の毒になってしまう。主題歌「殺破狼」も最高ですよ!

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