”英雄はどっちだ”『SPL 狼たちの処刑台』
シリーズ最新作!
娘のウィンチーが誘拐され行方不明になったタイに、単身訪れた刑事のリー。地元パタヤ警察のチュイに同行し、娘の行方を探すことに。だが、捜査が進むにつれて思わぬ闇が浮かび上がり、リーはチュイ共々、大きな危機に晒される……。
最初にリリースされた予告編で「ノワール・アクションの英雄」としてラム・カートンが紹介されたのだが、画面上に映ってアクションしてるのはウー・ユエさんで、その後web上ではしれっと名前もウー・ユエに差し替えられていた。間違えたな……劇場で流れてる予告はそのままだったけど。
警察官のルイス・クー、妻とは死別。娘の誕生日に存在も知らなかった彼氏が突然現れる。「カフェでバイトしてます」と言う男に内心イラッとしつつも「二人で出かける時は知らせるように」と渋々交際を認める。だが、「結婚したいと思ってます」「この子を産みたいの」と続いて、忍耐の糸はあっさり切れた……。
娘ちゃんがもうちょい大人っぽく見えるのだが15歳設定なのな。で、またこの彼氏に関する情報が何もなくて、とりあえず「まだ若く経済力はない」のだけが確定している状態。人間性に関してはどうにも判断しようがないが、「未成年者にファックした」のは間違いないから、通報して警官に逮捕させてしまうルイクー! 急展開に急展開で返す父に爆笑したが、父娘のコミニュケーションが取れていない時期だったのが災いした感あり。母親がいればもう少し違った展開もあり得たかもしれないが……。
しかしここで多分顔見知りの警官呼んで逮捕させてるあたり、このパパの逃避的な感情を表現してて上手い。ルイス・クー自ら「パパが逮捕してやる!」と手錠かけてたら相当面白かったろうがギャグになってしまうからな。
その後は赤ん坊を中絶させて、傷心の娘は友達を頼ってタイに旅行に行き、誘拐の憂き目に……。結局、親はもはやこの年頃の娘をコントロールできないので、全てが裏目裏目に出ることに。
この発端になる事件が、一人親の悔恨を刺激しまくる構造がやるせなくて、実にいいですねえ。で、むっつりと黙り込んで一人後悔に苛まれてるルイクーには、さらなる報いが……まだ来世も迎えてないのにガンガンに因果応報が訪れて痛い痛い。パパのしたこと一つ一つは、法的にも倫理的にも間違ってはいないはずなのに、それら全てが悪い結果になって跳ね返ってくる。
『ドラゴン×マッハ』のタイ組ことトニー・ジャーとロー・ワイコンだが、どんな大活躍をするのかと思ったトニー・ジャーが実は今回はゲスト出演なので途中で退場(ただ、ちょっと風格のようなものを見せる演技をしていてそこはよかった)、ロー・ワイコンは同じようなキャラかと思いきや腐れ外道なので、前作のイメージを逆手にとっている。
タイが舞台で、地元の空気がよく出てはいるが、ちょっと地元香港では「警官の汚職」という題材は描きづらくなっているのだろうか、と勘ぐりたくなるところ。
サモハン指導のアクションも相変わらず痛そうで素晴らしいのだが、ウー・ユエさんもキレッキレで、本職じゃないけどハードコアに攻めてるルイス・クーとは、また一味違いますね。ルイクーはアクションよりも、狂気じみた表情や佇まいが良くて、こういうお父さんは確かに息苦しいと思ってしまうだろう……そこがまた悲しい!
第1作の不幸展開に回帰し、SPLシリーズとしては2作目よりこっちが本流かな、という悲しさと虚しさと心弱さに満ちたお話になっていて面白かった。非常に手堅い完成度だが、個人的にはこの娘周りの葛藤の話が気になって、アクションに集中しづらかった面もあり、そっちは抑えめで役者の演技で見せる作りにしても良かったような気がする。もっともそうされると物足りない気持ちになったかもしれないな。やっぱり盛ってこその香港映画ですから……。
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