”推理し、蹴り倒す!"『ドラゴン・フォー』『ドラゴン・フォー2』


 秋の中華映画祭!


 宗の末期。都を騒がせる贋金事件を追う、首都警察「六扇門」は、腕利きの女捕手たちを加え解決に乗り出していた。だが、皇帝直属の特務機関「神候府」が派遣され、捜査に加わってくる。難事件を巡る捜査合戦の中、思わぬ黒幕がその姿を見せようとしていた……。


 最近、アベレージの低下が囁かれる中華映画祭ですが、今回はアンディ・ラウ主演作『ファイヤー・ストーム』に加えて、この武侠物の連作。コミック化もされた中国の武侠小説が原作。原題は『四大名捕』で、四人のスペシャルな実力を持つ秘密捜査官の話。英語題は『Four』だから、ドラゴンは一切関係なかったよ……。


 首都の警察に当たる六扇門と、皇帝直属の捜査機関である神候府が、張り合いながら事件を捜査するお話で、主人公「冷血」は六扇門のスパイとして神候府に入り込む男。しかし、神候府のボスである諸葛大我ことアンソニー・ウォンの度量の深さや、異能の力を持つはみ出し者の集まりの居心地の良さ、さらに車椅子の美女「無情」のツンデレっぷりに段々とハマっていくことに……。冷血は自らも狼男であるため、超能力者の集団である神候府の方が、正直なじむ。でも六扇門のボスには恩義があり、そこで名補となる夢があるので……と、グラグラ。
 この冷血役がドン・チョウという俳優で、嵐の櫻井翔を思いっきり険しくしたような顔。正直、映画がろくに入ってこないので、中国系映画の若手俳優事情に非常に疎くなってしまっている。ニコラス・ツェーショーン・ユー以降、どんな若手が出てきて誰が人気あるのかさっぱりわからない。
 ヒロイン無情役は、『ドラゴン・キングダム』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110226/1298650225)や『曹操暗殺』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140430/1398776770)のリウ・イーフェイ。無口で、脚が動かず常に車椅子……なんだがテレパシーを持ち、なおかつ腕と車椅子だけで大立ち回りを繰り広げるので、ちーとも不自由な感じはしない。いや、脚が動かなかったり目が見えなかったりする設定、カンフー映画ではでもどうってことないよ、という扱いにされることが多いよな。こちらは山崎紘奈を若干面長にしたような顔。
 そして、六扇門の女捕でありながら、密かに悪と通じる姫遥花をジャン・イーイェンが演じ、冷血と無情との間で三角関係に……。メイクのせいか、若い頃の深津絵里に見える。


 設定上か演技力がイマイチなのか、冷血と無情がひたすら無口無表情なので、ジャン・イーイェンさんが女の熱情と嫉妬を露わに、お話を引っ張っていく役回り。もうこのシリーズはこの人でもっているようなものではないか……。あれやこれやと裏で蠢動し、お話上は上の人の言うことを聞いてるだけで、恋愛についてもモジモジモジモジしておる冷血と無情を、横から突っつき、雨降って地固まる状態へ導く……。いや、本人的には撃沈だけど、映画的な貢献度はめちゃめちゃ高い。美味しいキャラだ……。こういう悪女なんだけど何かかわいいキャラにも、どうにかして幸せになってほしいね!


 まあそれはそれとして、「冷血」と「無情」のカップルっていうひたすら暗い二人の組み合わせというのも、ちょっと面白い設定だな。お互いずーっと喋らない、というのがギャグになっている。……と思ってたら、原作では無情も男じゃんかよ! なんで改変されてるんだ。はっ、BLなのか……?


 パート1では、一応、恋愛も成就し悪も倒れ事件の謎も解け、新メンバーを加えた神候府が再出発する……ということで、オチがつく。ワイヤーアクションにCG、若手とお馴染み俳優の混在、アンソニー・ウォンやコリン・チョウなどの古株の活躍などもバランス良く配置され、まあまあ面白かった。
 が、すでに三部作となるのが決まってたようなのだな。人物紹介なくいきなり始まるパート2では、巨悪の胎動が描かれるのはまあいいとして、無情の過去が明かされた……と思ったら終わり! えっ、巨悪とは戦わんのか! それはパート3に持ち越しか……。
 いや、中華映画祭りで、二本立て続けに観たからまあまあ満足感があったが、このパート2だけ一年ぶりぐらいに観たら、かなり怒っているような気がするな……。そして本国ではすでに公開済みのようだが、次の次の中華祭りで日本公開されるだろうか、気になる……。

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