”ブラよろによろしく”『ホワイト・バレット』


『ホワイト・バレット』 2017年4月5日(水)DVDリリース/同日レンタル開始

 ジョニー・トー監督作!

 頭部に銃弾を受けた男が、脳外科に緊急搬送される。男は武装強盗の一味、撃ったのは刑事……。刑事の上司であるチャン警部は男から情報を引き出したいが、トンはそれを遮り手術を進めようとする。手術直前に意識を取り戻した男は……。

 なぜか香港ではイマイチ当たらなかったらしい映画。宣伝では密室劇のように言われていたが、そんなことはまったくなく、いつものジョニー・トー映画でした。確かにロケーションはほぼ病院内に限定されていて狭めだが、普通にラム・シューがマクド買いに出かけてるからな……。

 銀行強盗ウォレス・チョンが頭を撃たれた状態で病院に担ぎ込まれ、共犯者をあげたいルイス・クー刑事と、脳外科手術をしている医師ヴィッキー・チャオがせめぎ合う。最初は意識がなかったが、目覚めたあとのウォレス・チョンは手術を拒否。

 ヴィッキー・チャオは命の危険があるから手術を薦める……のだけど、何だかこの医者も自分のプライドとアイデンティティのために外科手術してるような、ちょっと危ない雰囲気。病院内には他の患者もいて、ちょいちょいと小話的にドラマが挿入されるのだが、『ブラックジャックによろしく』3〜4話分ぐらいのボリュームが詰め込まれてる感じね。ヴィッキー・チャオ主演の『ブラよろ』というか……。熟年夫婦のエピソードとか、無駄に泣かせるじゃないか。
 対するルイス・クー、容疑者を本当は拷問でもして絞り上げたいんだけど、病院内だから出来ない……実は頭を撃ったのは直属の部下で、拳銃で脅す許可を与えたのは自分であるという困った事実。強盗仲間を捕まえれば不問になると見込んで、躍起になっている。この人のこういう黒い裏がある感じもおなじみね。
 ウォレス・チョンは『いつか、また』に出てたようだが、どの人だ……? メインの三人じゃないよね。全く思い出せない……。単なるお兄ちゃんに見えるんだが、自分より年上であった。事件という本題に入りたいルイス・クーに衒学的なことを言って煙に巻き、その裏に真の狙いを隠す……。

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 いつものジョニー・トー映画なのだが、それゆえに後の展開が読みづらく、どう転ぶかわからない。でも事が起こってみればやっぱりトー映画的必然と言うしかない。ラストは、タイトル『病戦』の方がいいんじゃないの、というバレットタイムが……だからこの邦題なのか!

 ロケーションが限定されているせいか、かなりシンプルに凝縮されているし、ヴィッキー・チャオの医者姿もフレッシュ。新鮮味もありつつジョニー・トー節も堪能できる、意外にトーさんビギナー向けの映画なんじゃないかな、という気がしますね。まあ変なことは変なんだけどな!

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 馬映画。

”僕は死にましぇん!”『ロスト・レジェンド』


『ロスト・レジェンド』予告編

 スーチー主演作! 

 伝説の盗掘師と言われながら、廃業してアメリカに渡った三人。だが、米国企業の古墓発掘プロジェクトに乗せられ、再び中国へと舞い戻ることに。奇しくも、その遺跡はかつて、フー・バーイーとワン・カイシェンの二人が、愛した女を失った地だった……。

 中華映画祭りも三本目。この日は一日に四本も観てしまったのだよ……。その中でも割愛寸前だったのがこれ。
 チェン・クン、ホアン・ボー、スーチーの三人が墓掘り。こうして男二人、女一人だと三角関係が定番かと思いきや、実は男二人はかつて目の前で死んだアンジェラ・ベイビーを今も想い続けている……という設定なのであった。

 今、もっとも脂の乗っている四人が揃い、なかなかの豪華キャストだが、それぞれハマり役を見せる。チェン・クンのイケメンすぎていちいち女を惑わせすぎなのにそれに無自覚なキャラとか……スーチーのおなじみツンデレぶりとか……ホアン・ボーさんの非モテ純愛キャラとか……アンジェラの健康的なのになぜか幸薄い感じとか……定番ですね!

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 漫画っぽい組み合わせだが、原作はウェブ小説なのな。なぜかいきなりアメリカに行ってて、しかも大して話に関係ないまま中国に帰ってくるあたり、無駄に金かかってる感じですが、VFXもアメリカの会社が豪快に担当。今回の中華映画祭りの中では、もっともビッグバジェットではなかろうか。
 まあそれゆえに冗長と言うか、金かかったCGの見せ場にこだわりすぎててテンポがイマイチだな……。

 『神なるオオカミ』と同じく、文化大革命直後に遺跡を訪れた男二人がアンジェラベイビーと出会い、日本軍の地下基地を発見して禁忌に触れてしまうあたりの話が前振りとしてあり、まさにそれゆえに墓掘りになった二人が、運命に導かれるようにその遺跡に舞い戻ってくる。お話はまあまあ丁寧に作ってあると思うのだが、いかんせん冗長で、中盤は相当にだれてしまった。
 またメインキャラ三人が三人とも煮え切らない性格で、過去に囚われた男二人を引っ張るかと思われたスーチーさんも、酔った勢いでチェン・クンと一回だけセックスしたことを引きずってモジモジモジモジ……。くどいねん! チラシはタンクトップですが、トゥームレイダー感は別にありません。

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 全く面白くないかというとそんなことはないが、キレッキレのチャウ・シンチーと『SPL2』を見た後では、いかにも分が悪い。『妖魔伝』とか『魔界戦記』とまとめて公開なら、まあまあ楽しめたんじゃないですかね。あ、全部チェン・クン主演作だ……。

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”ムエタイ見切ったり”『ドラゴン×マッハ!』


「ドラゴン×マッハ!」予告編

 『SPL』続編!

 香港で闇の臓器売買を繰り返す組織に潜入した捜査官チーキット。だが、正体を見抜かれ、タイに移送され組織の息のかかった刑務所に収監されてしまう。臓器売買の拠点でもある刑務所の所長が彼に執拗な拷問を加える中、正義感の強い看守チャイはそれを苦々しい思いで見ていたのだが……。

 カンフー系キャストであるウー・ジンがドラゴン、おなじみ『マッハ』シリーズが代表作のトニー・ジャーがマッハということで、ついた邦題は『ドラゴン×マッハ』という安っぽいものになりました。『SPL2』と銘打たれていますが、主要キャストはごっそり入れ替わり、同一キャストであるサイモン・ヤムも別の役なので、一体何がそもそも続編なのか、と誰もが思うところなので、まあ仕方ないか……。
 これまた中華映画祭り扱いで、『バトルヒート』や『マッハ無限大』はシネコンでかかったのにな……悲しい!

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 さて、キャストが入れ替わって、じゃあまったくの別物なのか?というと、実はそうではなかったりするのが面白いところ。黒社会との取引や潜入捜査、難病が絡んだ第一作のムードをそのまま引き継ぎ、主役がいきなりヤク中になっているハードコア展開。麻薬中毒の香港の潜入捜査官と、難病の娘を抱えたタイの刑務官。立場も違い、交わるはずのなかった二人の男の運命が交錯する……。

 普段は正統派スタイルのウー・ジンがスピードと身体能力重視の高速ケンカファイトスタイルにチェンジし、序盤ではご存知ムエタイトニー・ジャーと激突! これが非常に荒っぽい戦いでいいのだが、そこに絡んでくるのは台詞が一言もない殺し屋!(聾唖という設定らしい) これが前作のウー・ジンのオマージュ的なキャラクターで、『狂舞派』のベビージョン・チョイ君を太極拳を出させる間も無くナイフで惨殺! 関係ないが、チョイ君は大変色白で、ノワール向き俳優がズラリと並ぶ中で明らかに浮いてて、犯されそうと思っちゃったね。

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 上司はサイモン・ヤムで、この人はウー・ジンを助けるために自分も他の部下の命も一切省みないという、なかなかの人格破綻者ぶりを見せてくれる。
 さらにロー・ワイコンさんがトニー・ジャーの同僚としてタイ人側のキャストに。この人はムエタイやってたから、タイで修行してタイ語覚えてた時代があったのだろうな。

 これだけでもかなりお腹いっぱいなメンツなのだが、実の弟に心臓の摘出を迫る黒幕をルイス・クーが、『毒戦』などと同じく生にしがみつき続けるキャラを坂本龍一みたいな髪型で熱演。そしてその腹心である刑務所所長にマックス・チャン……! 脱獄しようとする囚人を自ら素手で倒すというアクティブ極まりない自己セキュリティ所長である。

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 ウー・ジンが封印した分、このマックス・チャンが正統派クンフーアクションを担い、流麗なテクニックを存分に見せ、クライマックスではウー・ジントニー・ジャー双方を迎え撃つことに。二人が同時に戦い始める瞬間がちょっとだけ「ドラゴン×マッハ」であったな……。しかしここからのマックス・チャンが圧倒的に強い! 思えば、数々の映画で猛威を振るったトニー・ジャームエタイ、当然カンフーっぽい相手との対戦もあったが、正直ここまでの使い手を相手にするのは初では……? やはりというかまさかというか、必殺のダブル飛び膝、テンカオ、肘打ちをことごとく見切るマックス・チャン!

 カンフーがムエタイに勝った!

と思ってしまった瞬間でしたね。いや〜、しかしあんな合わせ方、カウンターの取り方があるのだな……と思ったが、実際に試合で狙うのは見切りが神がかり過ぎなんで、やめておいた方がよさそうですね。
 この2対1でもものともしないマックス・チャンが、間も無く公開『イップ・マン 継承』ではドニーさんとサシの勝負をしますんで、そちらもお楽しみに……。

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 前作を整理して若干のパロディ風味も加えつつ、よりブラッシュアップしたアクションも加えて完成された現代カンフーアクションの傑作で、こんなバカな邦題つけられて本当に気の毒になってしまう。主題歌「殺破狼」も最高ですよ!

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”魚類的な彼女”『人魚姫』


「人魚姫」予告編

 チャウ・シンチー監督作!

 成り上がりの若き実業家リウは、自然保護区を買収。埋め立てのために海洋生物を追い払うべく、強力なソナーを設置する。海の底に住む人魚族も、ソナーによって大きな被害を受け住処を追われる。リウの行動を阻止するため、人魚族は人間に変装させたシャンシャンを暗殺者として送り込むのだが……。

 中国本土で大ヒットしましたが、日本ではまさかの中華映画祭り扱い! 東京、大阪だけ! それでもまあ公開しただけマシか……。ゴールデンアジアとは何だったのか……?と今になってよく思う。

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 そんなわけで2017年の映画初めはこいつになりました。新年一本目がチャウ・シンチーとか、なんていう贅沢だよ。上映時間はわずか94分。タイトだ!

 筋立てはおなじみの古典『人魚姫』がベースなのだが、いつも通りチャウ・シンチー映画のガジェットが満載。ヒロインは登場時は必ず変なメイクをしているあたりも踏襲されている。またヒロインはど新人を連れてきた……ということだが、セシリア・チャンしかり、ヴィッキー・チャオしかりで、魅力の引き出しっぷりが凄まじい。女性の美しさって、メイクしておすましすれば発揮されるってもんじゃないんだよな。ちょっとした仕草や日常的な表情の中にこそ美があり、生きたキャラクターの躍動感、こんな人がここにいると確かに感じさせる存在感が画面に焼きつき、我々に届くのだ。

 主演のドン・チャオはここ数年『ドラゴン・フォー』シリーズで観てきたけど、そちらでは「冷血」と呼ばれるクールな男を演じておりました。

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 今回は成り上がりの若き大富豪役。一代で上り詰めた手腕の持ち主だが、内心は孤独……。『食神』のチャウ・シンチーの役とも通じるキャラクターで、子供番組の司会を経て大ブレイクしスターとなった頃のシンチー自身の投影でもある。もともと心が狭い上に増長し、初心を忘れてしまっていたあの頃……。

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 ヒロインとの出会いを経て、その失った心を取り戻すあたりも『食神』と同じで、そのきっかけとなるのがチャーシュー丼ならぬ鶏の丸焼きというソウル・フードであるのもそっくり。いや、もう『食神』観てる人も少ないんだろうな……。若ければシンチー自身が演じていたであろうことも含め、ベッタベタの定番芸である。
 しかし、「ムッツリした櫻井翔」ぐらいのイメージだったドン・チャオだが、あんな素敵な笑顔ができたのだな……。

 演出は、かつてを凌いでキレッキレで、天丼的にギャグを際限なく盛っていくにも関わらず少しもストーリーを淀ませずスムーズに流れていく。ネタは足し算なのだが、演出は引き算でどんどん余計なものが削ぎ落とされており、大胆な省略と計算され尽くした画面作りで繋いでいく。ゲッターロボブルース・リーと、ネタの盛り方こそタランティーノ的だが、演出の切れはイーストウッドあたりにも迫りつつあるのではないか……? 『ジャージー・ボーイズ』ぐらいのところにはすでに来ているんじゃないか。
 『少林サッカー』の頃からさほど変わっていないように見えるCG表現も、大胆かつ戯画的な絵作りの中ではマイナスにならず、むしろ味付けになっているかのような……。

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 『食神』と違うところは、かつてはせいぜいお料理番組の大ヒットで人気者に!というスケールの話に過ぎなかったところが、巨大な経済成長を遂げた中国において、一企業、一富豪が環境をも捻じ曲げ破壊する力を持っている(もちろん、表現は漫画的だが)ということに踏み込んでいるあたり。土地を買い上げ、海を埋め立てて際限なく膨張していくあたりは、経済的に豊かになるにつれて肥え太っていく富裕層の姿であり、その際に環境の汚染やそこに住む生物が顧みられることはない。
 もちろんその姿は、海洋進出を続け、深刻な環境問題を国内に抱える中国そのものでもあるし、海や国境を超えた先の世界の環境にも通じる普遍的な問題でもある。
 香港発のチャウ・シンチーも、映画市場としてもとてつもなく巨大になった中国本土を意識した作品作りを当然していて(残念だが、公開時期や規模を見ても、もはや日本のことは念頭になかろう)、そこで彼が投げかけたのが「綺麗な空気や水がなければ、いくら儲けても意味がない」という素朴なメッセージであることは記憶しておきたい。

 しかし、重ね重ね言うが、この傑作がこの公開規模とはな……。東京、大阪は満席スタートになってまあ良かったが、なんとか地方にも届けてほしいものである。

『人魚姫』公開記念/チャウ・シンチー コレクション [DVD]

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食神 [DVD]

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”我が剣は何者にも折れぬ”『こころに剣士を』


映画『こころに剣士を』予告編

 フェンシング映画!

 ドイツ、そしてソ連に相次いで占領された小国エストニア。ドイツ兵という過去を持つためソ連の秘密警察に追われる元フェンシング選手のエンデルは、田舎町ハープサルに身を隠す。圧政で親を連れ去られた子供達が多く暮らすその地で小学校教師に身をやつしたエンデルは、課外授業で彼らにフェンシングを教えるようになるのだが……。

 スターリン政権下のエストニア、という、他の映画ではなかなか観られないものが観られる。いつ密告されて収容所送りにされるかわからない中で、元ドイツ軍兵士だったという過去を持つ主人公は、田舎を転々として逃げ回っている状態。新たな勤め先の学校で体育教師になるのだが、課外授業でスキーをやろうとしたら板を取り上げられてしまう。
 一応、都会の大学を出ているせいで田舎者の校長にコンプレックスを抱かれており、事あるごとに邪魔をされてしまう。さあ、いったいどうしたものか、ということで、むくむくと頭をもたげてくる本性……実は彼は、元フェンシング選手だったのだ!

 体育館でこっそり練習しているところを女生徒に見られてしまうのだが、その練習ももう習い性になっていて、やらないと落ち着かない。正体がバレる危険があるけれど、でも剣持ちたいんだ! その気持ちが、初めてフェンシングを目の当たりにしてワクワク全開の女生徒マルタちゃんとシンクロする。試しにフェンシングで課外授業の募集を始めて見たら、学校中の子供が押し寄せる。

 「不器用ですから……」という感じで、あまり愛想の良くない、子供も好きじゃない主人公なんだが、ここはもう腹をくくってやるしかない、ということで、木の枝を拾って剣にするところからフェンシング教室が始まった。
 全編にその競技が好きでしようがない気持ちが溢れていて、練習のイロハから始まり、いかなる妨害があろうがこれをやりたい、他のことでは代わりは決して効かないんだ、ということが繰り返し示される。それこそが人間であり、自由であり、文化であり、スターリン時代の圧政下でも、それを押しとどめることは絶対にできないのだ。
 住民同士が互いに監視しあい、密告が奨励され、些細なことで次々に収容所送りにされて二度と帰ってこない。日本でも戦前の隣組によって同じような光景があったわけだが、本当にクソだな……。そんな恐怖に満ちた時代において、「剣士」であることの意味は? 「教師」は「大人」は子供たちに何を示すべきか?

 時代と舞台以外は全くと行っていいほど目新しいものはない、スポ根もの、部活ものの定番のようなお話で、先生の恋愛話まであったりして、ベタだなあ……!と思うんだけれど、それが全くマイナスになっていない。『ベストキッド』みたいに、クライマックスは試合シーンで弟子が勝って締めじゃないとだろ、と思ってたら、ちゃんとやってたのも好印象。三人で一チームなのだが、決勝戦では一人怪我してしまい、補欠の出番。登場するのはもちろん……あいつだあああああ!

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 他のチームのコーチは女性の体育教師が多いが、やたらときっぷが良かったり、試合のシーンでめちゃめちゃ声出してたりするあたりが地味に既視感があったりと、ちょっとした描写がリアルさを積み重ねてるのもよし。

 恋愛話、同僚の女教師の方が最初は気がある感じで、フェンシング野郎は「不器用ですから……」みたいなよくわかってない顔をしているのだが、段々と逆転して積極的になってくる。密告によって追い詰められ、正体を明かし、いよいよ別れの時を迎え……。連行されたおじいちゃんに「これからは大人だ」と言われてた少年が、せっかくの別れのキスシーンで「電車出ちゃうよ! 急いで!」とまったく空気を読めない童貞感を出していたあたりが皮肉ですね。

 時代が時代だけに重い話ではあるが、圧政もスターリンの死によって終わりを迎え、この物語も実話に即した結びで終わる。じんわりと心にしみるラストが心地よく、2016年の結びにふさわしい映画でありました。いや、もちろん『バイオハザード:ザ・ファイナル』でも良かったけどね!

今日の買い物

ストレンヂア』BD

 DVDから買い換え。