”もっともっと、欲しいんじゃ”『ゲティ家の身代金』
リドリー・スコット監督作!
世界一の大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫ポールが誘拐される。身代金は空前の1700万ドル……だが、ゲティはそれを拒否し、守銭奴ぶりを天下に示す。ポール自身の偽装誘拐も疑われる中、離婚でゲティ家を離れていたポールの母ゲイルは苦闘するのだが……。
ケビン・スペイシーが首になり取り直しになったことが大変話題になったこと、再撮影したがミシェル・ウィリアムズのギャラがマーク・ウォールバーグに比べて安すぎたことなど、裏の話が大変盛り上がった映画。
「カイジ」の会長みたいな銭ゲバであるポール・ゲティをケビン・スペイシー降板後、クリストファー・プラマーが代演。特殊メイクしなくていいリアル老人だからな……。
弟の故トニー・スコットが、同事件から着想を得たクィネルの『燃える男』を『マイ・ボディガード』として映画化しているが、あっちは少女誘拐に変わってて全然関係なくなっておるね。
今作で(と言うか実際に)誘拐されたのは長髪の兄ちゃんで、ローマが舞台ということで古城の牢獄に監禁される。誘拐の実行犯がなかなかずさんな連中が揃っていて、監禁が長引くとダラダラしてきてうっかり覆面を脱いでは顔を見られて焦り、処刑されたりして段々人数を減らすことに。
その間、ミシェル・ウィリアムズお母さんが身代金を出すことを祖父ゲティさんに掛け合うのだが、断固拒否! 足りんわ、まるで……もっともっと、欲しいんじゃ! 実は会社が傾いていたりするのか、と思ったが、特に理由はなく、単に払いたくないという感じで、この理不尽さ、これもまた実話力だな。筋の通る話は特に提示されず、まるで幼児のようなイヤイヤ……身代金は資産の何百分の一、何千分の一なんじゃないの? この話の流れでミシェル・ウィリアムズ自身は追加撮影のギャラもらえなかったというのは、皮肉を通り越してそのまんまやん、という感じですね。
『悪の法則』ほどソリッドではないんだが、話が通じてそうで通じてないような誘拐犯の野蛮さ、もちろん守銭奴じいさんにも理解しがたいおぞましさがあり、平凡な人生を送っていたはずが急に「異世界」の理に触れてしまったような嫌さがある。そして、結局、金も美術品もあの世には一つも持っていけないのだが、ラストの絵を抱えるシーンは、それでも持っていけるものが一つだけあるならば、ということを考えさせられたね。
chateaudif.hatenadiary.com
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リドスコフィルモグラフィーでは上位とは言えないだろうが、そういえば同じ実録誘拐物でも『ハイネケン』はなんであんなにつまらなかったのだろう……と考えると、やっぱり良く出来ておるな。
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