”五色の下に集え”『パワーレンジャー』


ハリウッド版スーパー戦隊が変身!『パワーレンジャー』予告編

 東映の戦隊もののアメリカ版リメイクを、再映画化。

 同じ場所、同じ時間にあるコインを拾った5人の高校生。それによって超人的なパワーを手に入れた彼らは、謎の機械生命体によって、自分たちがこの星を守る戦士となったことを知る。それぞれの悩みを抱えつつ、パワーを完全に引き出す「変身」を身につけようとする5人だが……。

 冒頭、主人公が牛を逃してほたえまくるところから始まる。車を盗んで逃げ出すが事故って一回転……あれ? なんかこのカメラワークおかしくない? 車が回転してるのにカメラが無重力空間で静止しているようで、まったく臨場感がないぞ……?
 元アメフト部のこの主人公、お父さんに車で送られて補習授業に……この設定は『ブレックファスト・クラブ』の丸ごとオマージュですね。同じ補習に元チア部、発達障害、転校生、不登校が集まっていて、偶然にも金鉱で出くわし、そこに隠されたパワーを得ることに……。男三人女二人という男女比も同じで、組み合わせ的には一番オタクっぽいやつがあぶれるところまでは同じ。アメフト部が赤、チア部が桃、発達障害が青、転校生が黄、不登校が黒にそれぞれカラーがつくことに。

 しかしアカレンジャーモモレンジャーとカップルになりそうなあたり、『ブレックファスト・クラブ』オマージュなら、それはカーストが近い者同士だから違うんじゃないの。二人のキスシーンは撮影したけどカットしたそうで、何とか踏み止まったか……。かの映画を踏襲するなら、アカレンジャーは当然キレンジャーとデキてしまうべきだが、このキレンジャーレズビアンであるらしいことも匂わされる。このあたり、現代的な改変ですね。でもやっぱりアカレンジャーとだと台無しなので、モモレンジャーはクロレンジャーか、いっそのことアオレンジャーとデキてしまった方が面白い。

 それぞれの家庭環境や学校での軋轢などがちょいちょい語られる一方で、超人的なパワーを発揮し訓練を始める五人。並行して、眠りについていた「悪」がその姿を現わす……。悪役はエリザベス・バンクスが演じる元レンジャーで、見た目はガモーラ。やっぱり人相悪いな!

 なかなか変身ができないのは、そういう構成だからというとそれまでなのだが、五人の心を一つにという展開がどうもぼんやりとしていて、それぞれの抱えた問題はさておき、とりあえず仲間同士心配し合おうというものに見える。そうして仲間意識を持つこと自体が重要なのだ、ということであろうか? いや、それ自体は別に普通の話なのだが、わざわざ『ブレックファスト・クラブ』を引っ張ってきて言うことがそれなのか?という気もする。「俺たち、敵を倒したらまた会うことあるのかな」みたいな台詞もあるが、字幕のせいかシチュエーションのせいか、パロディとしても決まっていない。

 あまりハードルを上げすぎず、青春もののガジェットをぼんやりと並べてるだけぐらいに受け取ればいいのかもしれないが、戦隊モノのお約束はさておくとしても、あまりに決め絵がないので、アクションもメリハリがなくてつらい。冒頭のカメラワークのへぼさがここに来て足に来ると言うか……。
 変身シーンも含め、敵の登場、巨大ロボへの合体なども流れ作業のように進行してしまう。先が見えてるベタなストーリー展開なのだから当然なのだが、過剰さのない『トランスフォーマー』のようで、まったく上がらないのだよな……。で、間に挟まるギャグが切れているかと言うと……?

 外連味か大作感か、ということで、どちらにも振り切れずに行っちゃった感がもったいなかったですね。続編はもう少し発展しそうな気がするが、興行収入的には難しいか……。